ブラックペッパーナイト/短編

投稿者: usericonルナリーさん

投稿日:2020/11/02 16:22:35 | 文字数:3,512文字 | 閲覧数:48,008 | カテゴリ:小説

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先月のテーマ「月」への投稿作品です。

ハロウィン当日。

特に何も予定がないので、執筆に勤しみました。

以前投稿した、「グミマント」からの着想。

誰が登場しているかは、タグをご覧ください。

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TEXT
 

 夜を胸いっぱいに吸い込む。季節は冬が近く、空気は冴え渡っている。
 明日には地下へ向かわなければならない。この星ほどの夜景を後にして。
 ギラギラした夜景と天空の月光が、星を食うように光っている。
 高層ビルの上から見る夜景って言うのは、「沈み込みたくなるような衝動」を起こさせるものだ。
「何かお願いしてみたら?」と、彼女は言う。「最期の願いくらい、叶うかも知れない」
「冗談はやめろよ」と、俺は答えた。「ほんの1日程度の封印だろ? 奴等はそれで『世界が綺麗になった』って言って喜んでるだけさ」
 彼女は、赤いルージュを塗った口元を引きつらせるように笑った。
「私ね、悪魔って『元の世界』にしかいないと思ってたの」と言って。「だけど、『唯一神』が居る限り、封印される『夜の者』は、何処にでも存在するのね」
「自分達がコピーを繰り返してるだけの存在だってことを、愛してやまない種族なんだろ」と、俺は答える。「ニンゲンってやつは、少しでも違うものに恐怖を抱くんだ」
「ふーん」とだけ相づちを打って、彼女は黙った。
 その身を包んでいるのは、真っ黒な衣服と真っ黒なマント。黒は、俺達の信じている「異教の神」を、崇拝することを示す神聖な色だ。
 街の中を、人間の仮装行列が行進して行く。口笛を鳴らしたり、音楽を奏でたりしながら。非常にハイテンションだ。酒も回っているのかもしれない。
「お祭り騒ぎが好きなのは、どっちなんだか」と、彼女は言う。そんな彼女も、黄緑色の目の周りは、祭用の赤いアイシャドーを塗りたくっている。
「お前も混ざって来れば良いんじゃないか?」俺はからかった。「今日の街の様子なら、自然に溶け込めるだろ?」
「馬鹿言わないで。祭事って物にはルールがあるの」と言って、彼女はビルのフェンスを越え、縁に立った。「祭事を取り仕切る者は、浮かれてられないわ」
 彼女はマントを翻して羽を広げた。ルージュやアイシャドーと同じ、真っ赤な皮膜の羽だ。
「襲撃は30分後よ。遅刻厳禁だからね」
 そう言って、彼女はビルの縁を蹴り、夜空を舞って行く。
 俺は「この仕事が終わったら」を考えていた。地下に潜ってゆっくりくつろいだ後、罪状の軽い者から順に地上に戻る。
 罪状と言ったが、罪の重い軽いを測るのは、「司祭」の役目だ。今年の司祭は、さっきの全身黒づくめの女。「メガロン」と名乗っていた。
 メロンみたいな名前だと言ったら、脇腹を拳で殴られた。女のパンチにしては、結構な腕力だ。
 襲撃は30分後。なぁに。大したことじゃない。伝承道理、「明日封印されてしまう分の」悪さをまき散らすだけだ。
 俺は、片手にダイナマイトを持っていた。俺もビルの屋上のフェンスの上に乗り、改めて深呼吸をした。
 そして、フェンスを蹴って、隣のビルに飛び移った。俺は羽を受け継がなかったので、特に羽ばたく必要はない。浮遊の魔力が生きている間は、自由に空を移動できる。
 ダイナマイトを29分後にセットして、そのビルの屋上に設置した。

 幾つ目かのビルの上で、バイオリンとフルートの音が聞こえてきた。アコーディオンを弾いていたピエロが、陽気に手を振ってくる。
「景気が良いな」と、俺は声をかけた。「呪文唱えてるみたいにハイで陰気な旋律だ」と、褒めると、バイオリン奏者がにやっと笑った。「レッドチリペッパーは効いてるかい?」と言って。
「去年と同じ手を使うと思わないでくれ」と、俺は忠告した。「今回はなんてことはない。唯の威勢の良いブラックペッパーボムだ」
 フルートが一瞬、「ピー!」と言う甲高い音を鳴らす。フルートを吹いていた、絵本に出てくる妖精のようなパーティードレスを着た赤毛の女が、吹き出したのだ。
「やだもー。結局ペッパーボムなんじゃん」と言って、真っ黒なドレス姿の女は演奏を中止してケタケタ笑う。「芸が無いってそう言うこと言うのよ?」
「おい。喋るな。吹け」と、紫色の長髪のバイオリニストがフルート奏者を叱る。「笛吹きは、息継ぎ以外で呼吸をしてはならない」
「はいはい。無茶苦茶ですわね」と言って、フルート奏者も再び演奏を続ける。
 彼等は唯ジャムってるだけじゃない。音色に魔力を込めて、酒に酔ってる地上の連中の思考を、さらにぐちゃぐちゃにしている最中なのだ。
 ここでも準備は万端らしい。
 俺は、次の場所までビルとビルの間を跳んだ。

 また、別の中継地点を見つけた。其処では、丸ごと一匹の牛の解体ショーが行われていた。
「ああ、ペッパー野郎が来たのか」と、ガスマスクをして肉を捌いていた黒づくめの男が言う。真っ青な髪が月に照らされて濃紺に見える。
「今年も腐肉か? 解体屋」と、俺もからかった。
「普段の商売の間に考える事って言ったら、このくらいだからな」と言って、鮮度を無くしたどころか、1ヶ月は放置して熟成させた牛の腐肉を、細かく切っている。
「残り時間はどのくらいだ?」と、肉屋が聞いてくる。
「20分と57秒って所だ。ぶちまける時間も計算しとけよ」と、電波式の腕時計を見ながら俺は言う。
「旋風の術を使えば、一瞬さ」と、肉屋は言う。
 ははーん。竜巻で一度、空一杯に肉を散らばせる気だな。
 俺はそれを承知してから、「上手くやれよ」と言って、そのビルを去った。

 其処から数か所の「中継地点」を見回り、夫々の仕掛け方を見て回った。
 街を飛翔しながらロリポップを撒く作戦を練っている双子達や、闇に浮かび上がる白い操り人形を、天空高くで躍らせながら街を一周飛んで歩こうとしている者達もいた。
 こう言う連中は、出来たら「手早く地上に戻りたい」と思っているらしい。
 肉屋が「旋風」の術を扱い始めた。
 そろそろ時間だ。「5秒前。4、3、2、1」と、俺が時計を見ながらカウントすると、俺がダイナマイトを仕掛けたビルの上で、大爆発が起きた。
 ブラックペッパー入りの粉塵が、ひらひらと地面に散りばめられて行く。ついでに、抉れたコンクリートの破片も。
 ロリポップの「雹」を降らせようとしていた子供達も、街明かりから離れた上空を飛び回りながら、袋から飴玉の弾丸を人の頭上へ「トリート」している。
 肉屋の作戦も上手く行った。だが、操り人形を躍らせていた連中が、さらに上空から降ってきた腐った肉を浴びて、「うへー」と言っていた。
 演奏者達の魔力が、俺達にも影響してくる。
 誰となく笑い出し、「悪魔の哄笑」が、月夜の庭に舞い降りる。
 明日のトップニュースを飾るのが誰かを観れないのが残念だ。

 私は酔いから覚め、辺りを見回した。ハロウィンパーティーの後に、どうやって帰って来たか、記憶がない。
 なんだか、男の子になって、色んな所で「魔物」達がハロウィンの悪戯を仕掛けている夢を見ていた気がする。妙にリアルな夢だった。
 テレビをつけると、何処かの高層ビルの屋上に、爆発物が仕掛けられたと言うニュースを報じていた。
 それは唯の時限爆弾ではなく、火薬に混じって黒コショーが入っていたとか…。
「ハロウィンに乗じた悪質なテロ」であると報じられていた。なんでも、そのビルの屋上は、爆発の威力で、クレーターみたいな大きな穴が開いてしまったんだって。
 ビルとビルの間をスキップするように「跳んでいる」青緑色の髪をした男の子が目撃されたなんて言われてるけど、酔っ払いの言うことを真に受ける人もいない。
 私は、朝のシャワーを浴びるために浴室に向かった。
 ツインテールにしているアッシュブルーの髪を、ポニーテールにする。
 シャワーを浴びた後、バスローブを着て髪を乾かして居たら、鏡の中に青緑色の髪をした男の子が映っていた。
「え?」と言って、後ろを振り返ったけど、誰も居ない。
 背後には、朝日の射す明るい窓がある。たぶん、窓ガラスに反射した自分の影を見間違えたんだ。
 もし、私がブラックペッパー爆弾を仕掛けた男の子だとしたら、今頃は多分地下でぐっすり休んでいる頃だ。
「怖いお化けは居ない日だ」と呟いて、私は身支度を進めた。

 無事に今年一番の祭仕事を終えると、俺は1ヶ月の地下暮らしを命じられた。
 ダイナマイトの威力が強すぎたことに対する処分らしい。俺達の「トリック」は、後始末を考えながらやらなきゃならないって事さ。
 地下に行く前に、ちょっと顔を出したが、俺が憑りついた女の子には、俺の正体は分からなかったようだ。
 また来年も地上に行く時には、是非体をお借りしたい。
 丁度良く、酔っ払っていてくれよ。お嬢ちゃん。

作り続ける事を目的としているコラボになります故、月一でアイデアの元としてテーマを掲げております。
テーマから投稿された作品が色々な方々の目に留まり、そこから最終目標のコラボへと通づることが出来れば尚良しです!

楽曲でもよし、動画でもよし、小説、作詞でもよし、イラストでもよし。何でもよし!
とにかく作り続ける事!
身体に無理のないように!

完全思いつきなんで、上手くいくかわからないですが楽しく、そして素敵なオリジナル作品がどんどん増えていければいいなあと思います。

ルールは追々追加していくと思われます。

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