ギィ……ギィ……ギィ……ギィ……ギィ……ギィ……。
屋敷の主に連れられて歩く廊下の音が静かに響き渡る。廊下に飾られた古い振り子時計からは『コッ…コッ…コッ…コッ…』と針が不気味に動く音がし、このロケーションに異様な雰囲気を醸しだしていた。
自分たちの前を歩く女主《おんなあるじ》の背中がドレスから露出していて、それを改めて観察してみると肩甲骨の部分がヒトより発達しているのがわかる。まるでコウモリの翼のような形をしているからだ。
「ヒソヒソ……あれって、ヴァンパイアの翼じゃない?」
「しーっ、聞こえちゃうよリン」
周りに聞こえないよう会話する双子の姉弟、姉のほうが初めて目にする異形の姿に興味を示していた。女主の見た目は自分たちと同じヒトであるが、所々にヒトではないと思わせてくれるのだ。
「小さいほうのお嬢さん…私とおなじ翼が欲しいのかしら?」
「ヒィッ……!?」
リンはドキリッ!……とした。心拍数が徐々にあがり、心臓の鼓動が速くなっていく。なぜなら、女主がヒソヒソ話をすべて聞いていたからだ。
「いっいやぁ〜っ、あの〜っ、その翼がカワイィなぁ〜って思って〜っ」
リンは女主へ咄嗟に答えた……その翼が可愛いと答えた。
「うっフフフフフフッ…小さなお嬢さん。この翼はね…ヒトがヴァンパイアに噛まれて血を吸われると背中から生えてくるのよ……ウフッ」
「へっ? そっ……そうなんですか?」
リンの心のなかでは──ヤバいよヤバいよッ!? あたし人間卒業する日がきちゃったかもッ! 今日で人間やめないといけないかもッ!──と言っていた。
「そうなのよ……でも安心して、私たちヴァンパイアは血の掟と言う厳しい仕来りがあるから、無闇にヒトの血は吸わないわ…ウフフッ。あっ! でも……」
自分たちの前を歩く女主は、急に足を止め首を後ろに向けていく。
そして……こう言った………………。
「可愛い坊やの血、どんな味がするか?……すごく興味あるわね♡」
屋敷の女主は不気味に首を後ろに回した状態で、レンの首元を注視する。
そのとき! シュルりッ……と妖美に舌を使い、紅いルージュを塗った自身の艶やかな唇を官能的に舐めていた。
『ヒィーイッ!?!?』
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いますぐこの場から立ち去りたい。クエストなんかやめて、こんな気味悪い屋敷から逃げたいと思ってしまう。高鳴る心拍数とともに無数の汗が額から流れていく。
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「レイヴァンさん。私の大切なお友だちを傷つけるのは、たとえ依頼主のかたでも許さないですよ」
その表情は平然を装っているが、青緑色《せいりょくしょく》に輝く瞳の奥は戦う覚悟と恐怖心を撥ね除ける勇気の決意が秘められていた。
「あら? すべて私の冗談ですよ…ジョウダン♡。さあ、このお部屋にお入りなさい」
「はい、失礼します」
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次話
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