♯エピローグ「いつだって」


ウチがビイベックスをやめると提案した時、会社の人は残念がるよりも、ただ驚いていた。
入ったばかりで、どうして?と当然ながら聞かれた。

“初心に帰りたくなったので”
“初心?”

三年前を思い出す。高校を卒業し、音楽の仕事を始めてから一年目。
その時フリーだった私は、ギターだけじゃ食べていけなくていつもバイトをして稼いでいた。
あの時の苦しみを、ルカはまだ味わっている。ウチだけメジャーになってのほほんとお気楽に暮らすことなんて出来なかった。
だからこうして、ビイベックス社に所属するのをやめるのだ。
これまで稼いできた貯金は、これからの活動費用に回すつもりだ。なくなったら、またバイトして稼げばいい。

“本当に急で申し訳ないですけど、やめさせていただきます。今日からウチはフリーです”
“グミさんがどうしてもというなら止めませんが……、本気なんですか?”
“はい、ウチはいつだって本気ですから。あ、ちなみに本気と書いてマジと読みます!”

笑顔でいい残し、ウチはその場を後にする。後ろからは惜しむような視線を感じたけれど、気にしない。0に戻って始めればいいんだ。
せっかく手にしたものを手放してしまうなんて勿体ないと、ルカは最後まで嘆いていたけれど、ほぼ一方的に押し切った。

「ルカ、お待たせ」

会社を出ると、そこにはルカがそわそわとした雰囲気で立っていた。

「話、すんだの?」
「うん」
「そう……さすがに、やめるのはオーバーだと思うんだけどね」
「ウチがいいって言ってるからいいの。さ、いこいこ」

ルカの手を引っ張って、昼の町中を歩いていく。目的地は、あの音楽の都であるN市の駅の近くだ。
十分もかからないうちにそこへと到着する。
見通しのいい場所を選んで……と。
晴れた青空、人通りもそこそこいい。ストリートライブをするにはぴったりだ。

ウチは背中にしょったギターケースから、ギターを取り出す。
対して、ルカも背中のケースからキーボードを取り出した。

「やっぱ、緊張するかも」
「今更『やっぱやめる』はなしだからね。ストリートライブなんだから、自由でいいんだよ」
「分かってるけどさ……グミの前で歌うのは恥ずい」
「おーおーおー。初々しいですねぇ」

ニヤニヤとルカの方を見ながら、ギターのストラップを通し準備完了。
ルカもキーボードとマイクのセットが完了したようだった。

「グミ、代わりに歌わない?あんたボーカルもやってたでしょ?」
「あはー、そんなのもう昔の話ですから旦那ぁ。歌い方なんて、ウチゃ忘れちまいましたよ~」
「何のキャラよそれ」
「へへへ、ココは一つ、旦那に一曲歌ってもらうってのはどうでしょ?旦那、応援してますぜ」
「……わかったわ」

深呼吸をし、ルカは微笑んでマイクのスイッチを入れたのだった。

「準備はオーケー?」
「いいよ!」
「1、2……1、2、3、4」

明るいキーボードのメロディーが、リズミカルに流れ出した。
ウチもそのリズムに合わせて、ギターの音をのせていく。
二人の音楽が重なった時、それは一つの曲として空気を伝わり、空の彼方に消えていく。
どうかこの一音一音が、聞いた人の心の奥まで届きますように。
時間も我も忘れてしまうくらいに、ウチらは全ての想いを自分の演奏にゆだねた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

空の向こうの淡き光 12 【終】

40mPさんの「巨大少女」を参考にして書いてみました。
サビの、「だからもっともっと高く高く 背伸びしてみてみたいよ」という部分から色々妄想しました。

物理的にではなく知名度的に大きくなってしまった女の子グミと、夢に向かっ突っ走るものの、なかなか夢を実現できない女の子ルカの話。
ホントはもうちょっと具体的に書いてもいいかなって思ったけど、それだとホントになんか駄文ばっかりで逆に分かりづらくなるので、やめました。
これでももっと短めに書こうって思ってたんですよ。どうしてこんなんなった!

いやもう駄文ばかりでスミマセン。でも書いててよかったなーって思います。自己満足です。
この小説を通して私が伝えたいことというのはですね……なんだろう?\(^o^)/
ちょっとした妄想から生まれたものなので、そんなに深い意味はないのかもしれません。ただ、「夢は逃げない、自分が夢から逃げるだけ」っていうのはある意味ガチで伝えたいこと?だったりします。
なんか前テレビで見た誰かの言葉。僕自身の格言じゃないですけれど、本当にその通りだと私は思います。
この言葉を目にしたのは、数年前だけど未だに覚えてるっていう。
思いつきとかノリで書き始めたこの小説を少しでも中身のあるものにしたいと思い、この言葉を作中で出させていただきました。実は後付けなんです。

僕もノリで動くことよくあるので、作中に出てきたグミちゃんみたいな子は大好きです。ノリというか、その場その時の自分のペースで動いてます。いわゆるマイペースです。hahaha。
さ、もう書くことがなくなったのでここらできりあげましょ。(←こういうとこがマイペース。

誤字脱字、矛盾がありましたらどんどん突っ込んで下さい。
ここまで読んでくれた人に感謝です(´∀`)ノ


追記:
あと、僕は音楽業界の事について全然分かりません。何がどういったシステムなのかホントに……。
なのでほぼ妄想で補っております。よく書こうなんて思ったなと自分で突っこんでます。
ストリートライブって、ホントは事前にどっかに知らせないといけない?んだよね?うぅん(´・ω・`) デモも確か事前に会社とか役所?に知らせないとダメなんですよね確か。社会の仕組みって……わっかんない。


追記:
ヤバい、誤字思ったより多い見直したつもりだったのに(汗

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投稿日:2012/09/07 02:02:21

文字数:1,387文字

カテゴリ:小説

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