何事もなかったのかのように戻ってきたカイトに肩を借りつつ、メイコがよたよたと戻ってきた。素早く行動を示したのはルカだった。痛そうに腕を押さえるメイコを肩を貸し、壁伝いに座らせると、そっとメグにアイコンタクトを送った。それに応じるようにメグが頷き、メイコの前に進み出て傷口に触れる。その瞬間、メイコが痛みに負けて声を漏らした。
「いッ…たぃ…」
「…大丈夫、データに損傷はないみたい。ちょっといじれば修復は難しくないよ」
「そう…ありがとう」
 ゴーグルを自分の目にセットして、インカムのボタンをなれた手つきで叩くと、メグのゴーグルに無数の液晶画面が表示され、メグはそれらを確認しながら手を動かす。一寸の狂いも、一秒の迷いもない、その素早い動きはおそらくデルがみても、賞賛に値するといったに違いない。
「あとは、自己修繕能力の問題だね。傷口からウイルスとかバグが入ることもあるし、とりあえず、ガードはつけておくから、いじらないでね。ま、妙なことしなければメイコ姉のレベルなら三回戦が始まるまでには大丈夫になっているかな」
「わかったわ。…ああ、なんだか楽になった。…それより、次、あんたたちじゃ?」
「あっ」
 慌てたように声を上げ、思わずメグが頭まで持ち上げようとしていたゴーグルを床に落としてしまった…。


『――第二試合目ヲ開始イタシマス――』
 やはりこの機械的な声――いや、これは『音』だ――がドームに響き渡り、空気がぴりぴりとしびれるようになり、フィールドに出たミクとメグが息を呑んだ。相手は、ぐっと見上げなければならないほど背の高い、『少女』だった。
 もう一人は相反して背の低い赤毛の、『女性』であった。
「メグちゃん、これを勝ち上がったら、準決勝だよ。マスターのため、私たちのために勝たなきゃ!」
「もっちろん!私に任せてよね」
「信頼してる」
「大船に乗ったつもりでいなよ」
 二人は会話を交わしつつ、相手をじっと見ている。今回は相手の動きを読めるルカがいない分、大きな戦力ダウンになることは間違いないだろうが、その分をメグが補うことは不可能ではない。何故なら、メグにそれだけの力があるからである。
 炎を使うメイコ、触れたものを凍らせるカイト、心の中を読めるルカ、バグ・ウイルス・ワクチンを作り出せるメグ、スピードと運動能力に長けたミク、電気を操るレン、そのレンの電気能力を増強させるリン…と、様々な能力を持った七人であるが、広い世の中で同じ能力がないわけではない。探せばいくらでも同じ能力をもつ者はいる。そのレベルは様々ではあるが。
 ふと、相手が一歩前に出て、
「アタシは、重音テト。よろしく」
「俺は欲音ルコだ」
「私、初音ミクです。よろしくお願いします!」
「メグです。お手柔らかに」
 それぞれ握手をして、臨戦態勢に入った。ゴーグルをずらす。
「行きますッ」
 メグが言ったとき、インカムに取り付けておいた、渡された機器が耳鳴りのような不快に音が流れ出した。その後に続く幼い声。
『――えーっと…もう聞こえてんの?』
『そうだよっ!もう、これも聞こえてんだから!』
『嘘っ!』
『本当!もうっ!…えー…コホン。聞こえるよねぇ?ここまでで全員に配られたはずの機械…アレには強力なウイルスがこめられています』
 客席がざわめいた。
 恐らく、部屋の中でデルとハクも大いに驚いているに違いない。自分たちが『ウイルスはない』といったのに、相手方からこうもネタばらしをしてくるとは思っていなかったのだから。
 その幼い声は続けた。
『時間がたつと、中に入っているウイルスの卵が電子回路に入り込んでしまうんだ。そのタイムリミットは、とっくに過ぎてる』
『僕らが作ったばかりのウイルスだから、ワクチンは作れないよ。ウイルスに侵されたら最後、全てのデータは蝕まれてしまう』
『でも、君たちは運がいい!生き残るチャンスをあげよう。そのチャンスは…』
 そこで、モニターがぱっと明るくなって観客席でその声を聞いていたリンとレンが大きく映し出された。
『その二人がこれから指定する場所に出向いてきて、僕らの要求を呑むこと。勿論、他の奴らが一人でも来たら、アウトだよ。…ねぇ、【ACT2】、どうする?』
 【ACT2】…鏡音リンレンの、新型のことである。
 とりあえず、二人のことを言っていることに違いはないだろう。顔を見合わせ、二人は軽く頷いた。
 そのとき、観客席から声が聞こえた。
「はったりに決まってんだろ――」
『嘘じゃないよ。嘘だと思うなら、誰かやっちゃおうか?僕らの手にかかれば、一瞬でデータを崩すことも可能だけど、可哀想だし、一部のデータを削るだけ。…皆に見せ閉められる場所にしよう』
『それなら、フィールドにいる奴らがいい』
『なるほど。なら…その赤いオバサン』
「お、おば…っ!?」
『おばさんさ、災難だよね。あんなのがいるから、あんたみたいなのがかわいそうだ』
 パチンっ
 指を鳴らしたような音が聞こえ、それから三秒後には、テトがフィールドに倒れこんで反応しなくなった。
「テト…っ」
 跪き、ルコがテトを抱き上げながら何度も名を呼ぶ。
 しかし、テトが応えることはなかった。
『どうする、ACT2?』
「やる!」
「いってやるよ!」
 二人は真剣な面持ちで、そう応えたのだった…。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

今日も双子日和 16

こんばんは、リオンです。
久しぶりにリンレンの出番だ(笑
最近、眠くて眠くて仕方がないですが。
私の地方は冬休みが長いので、木曜日まで冬休みなのですが…。
全然宿題終わってない(滝汗
皆さんてつだってぇ!!
…いえ、取り乱しました。
また明日!

閲覧数:349

投稿日:2010/01/11 23:29:10

文字数:2,209文字

カテゴリ:小説

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  • 癒那

    癒那

    ご意見・ご感想

    私も冬休み木曜日までですよ~;
    でも宿題は冬休み始まってから一日で終わらせてしまいました。

    なので親に怒られ、
    ボーカロイド禁止令と
    冬期講習行き命令がだされてしまいました(/Д)

    宿題頑張ってくださいね~

    2010/01/13 13:24:05

    • リオン

      リオン

      おや。始めまして、癒那さん。
      一日ですかっ!?一体どんな宿題なのですか!?凄いですねっ!

      そんなことになったら親に褒められこそすれ、怒られるようなことはないです!!
      ボーカロイド禁止令…禁断症状が出てしまいます(泣
      冬期講習…大変ですね。まあ、私も三学期から塾なので他人事ではないのですが…。

      宿題…がんばりますっ!!

      2010/01/13 20:21:58

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