ボス走らず急いで歩いてきて僕らを助けてPの「野良犬疾走日和」を、
なんとコラボで書けることになった。「野良犬疾走日和」をモチーフにしていますが、
ボス走らず急いで歩いてきて僕らを助けてP本人とはまったく関係ございません。
パラレル設定・カイメイ風味です、苦手な方は注意!

コラボ相手はかの心情描写の魔術師(つんばる命名)、+KKさんです!

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【独自解釈】 野良犬疾走日和 【紅猫編:序】



 めーちゃん、めーちゃん。
 なあにかいとくん。
 ぼくね、めーちゃんのことだいすき!
 ふふふ、あたしもかいとくんがだいすき!
 ねえ、めーちゃん。おおきくなったら、けっこんしようね。
 うん、やくそくよ。ずうっといっしょよ。
 うん、やくそく。


 この流れの激しい世の中で、幼い頃の約束を覚えている人間が、どれくらいいるだろう。否、幼い頃の約束を果たしたいと思う人間が、どの程度いるのだろう。おそらく、そんな人間は、いるとしてもこの街にいる人間の、何割にも――割、なんて単位じゃなくて、分、もしくは厘にも――満たないのだろう。
 それを思うと、自分はまともじゃない、稀有な種類の人間にはいるのだな、と、再確認して朝を迎えた。
 窓を開けると、街はまだ朝靄につつまれている。門に見える人影は、郵便屋だろうか。自転車らしきものから離れた影は、門のところでなにやらごそごそしたあと、大通りの向こうへ行ってしまった。家の者は、きっとまだ女中たちしか起きていない時間。いつもなら世話係の娘に持ってきてもらうのだが、今日はきまぐれに、その手紙を取りに行こうと思った。
 まだ冷える屋敷の中、階段を下りて、門へと向かう。

 郵便受けを開け、その中身を検める。新聞、父への書簡、母への書き付け、おそらく女中か奉公人の身内からであろう小さな包みなどに交じって、ひとつだけ、私宛ての手紙があった。
 手に取ると、かさかさとしていて上質とはいいがたい、しかし少しだけ土と埃のにおいが懐かしい、いつもと同じ手触りの封筒に、これまた達筆とはいえないけれど、真摯な字で、私の名前が書かれている。
 裏には、手紙を書いた主の名前が――書かれていない。しかし、それでいいのだと安堵する。文の外側には、絶対に名前を書かないでくれと、不作法は承知で頼んだのだ。きっと彼は不思議に思っただろうけれど、いま、この手紙の送り主が男だと家の者に知れたら、私も彼もただでは済まない。でも、たとえ書かれていなくとも、私が焦がれてやまない彼の名前は、しっかりと胸に刻んである。
 しわにならないようにそっと抱きしめた。抱きしめた胸に、自分のものではない体温が感じられたような気がした。

 私にとって、手紙は生命線のようなものだ。
 何年も続いた手紙のやりとりが、今の私を生かしている。この手紙がなければ――この手紙の主がいなければ、私は疾(と)うに屍になっているはずなのだ。


 じゃあ、ゆびきりしよう! めーちゃん、こゆび、だして! ……ゆーび、
 あ、だめよ、かいとくん、まって。せーのでいっしょにいわないとだめなのよ。
 そうなの?
 だって、やくそくはひとりでするものじゃないから、って、かあさまがおっしゃっていたわ。
 そうなんだ。
 せーのでいい?
 うん。
 せーの、

 ゆーびきーりげーんまん、うーそつーいたーらはーりせーんぼーんのーます!


「――お譲様!?」
 下働きの男が、門のところにいる私を見つけて驚きの声を上げる。その表情には、焦りと困惑が見てとれて、その意味するところを瞬時に察する私も私だと、我ながら呆れるところである。
「……そんなにあわてなくても、今日は逃げるために出てきたんじゃないわよ」
「さ、左様ですか。失礼しました。――お早うございます、めいこお譲様」
「おはよう」
 恭しく礼をした男に、適当な挨拶を返す。彼は毎日郵便を取りに来る役割の者だ。彼がこちらに向かうのとは逆に、私は門に背を向けた。
「しかし、なんでまた庭に?」
「窓を開けたら郵便屋が見えたので、きまぐれに来てみたまでよ。それもいけないことかしら?」
「いえ」
 下働きの彼は、曖昧に笑って郵便物を取り出し、そして、あ、と声を上げた。普段なら無視してしまうだろうその声に、思わず振り返ると、下働きの男は、優しげな顔で小包を見ていた。
「あなた宛て?」
「はい、田舎のおふく……母が。気遣いはいらないといつも言っているのに、何度約束してもかならずふた月に一度は何か理由をつけて……」
「それは、それは。約束を破るなんて、無責任なお母さまね」
「ええ、ほんとうに。何度言ってもきかないのですから……」
 本心からの皮肉ではない冗談交じりの私の言葉に、そう応えながらも、その彼の表情は故郷への懐かしさと、母への愛情にあふれていた。
 思わず手の中の手紙を見た。さっきの私も、あんな風に安らかな表情をしていたのかしら。
「あ、お譲様。今日は神威様がいらっしゃる日だと、旦那様がおっしゃっていました。一応お耳に」
「……そう、ありがとう」
 私はあらためて門に背を向けた。いま一番背を向けたいのは、この現実かもしれないわね、などと己の境遇を皮肉りながら。

 そして改めて手紙の主に思いを馳せる。
 ――幼い頃の約束なんて、彼は忘れてしまっているでしょうね。でも、それならそれで、叶わなかったら針千本飲めばいいのだわ。約束を破るのはいつだって私の方なのだから。

「      」

 口の中で呟いた彼の名前を、彼のために再び呼ぶ日を夢見ながら、私は、朝やけに染まりゆく屋敷を目指して走り出す。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

【独自解釈】 野良犬疾走日和 【紅猫編:序】

ボス走らず急いで歩いてきて僕らを助けてPの「野良犬疾走日和」を、書こうとおもったら、
なんとコラボで書けることになった。コラボ相手の大物っぷりにぷるぷるしてます。

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というわけで、+KKさん(http://piapro.jp/slow_story)との個人コラボです!
半分本気半分真面目に「やります?」と訊いたら「やりましょう!」と返ってきて、
モチーフ案だけ提示したらあれよあれよと設定が決まりお互い小ネタが出現しだし、
あ、あれ? もう投稿できる……だと?(←いまここ

憧れの長編書きさんとのコラボで嬉しいやら畏れ多いやら、数年分くらいの歓喜と
動揺を体験してます……夢じゃないよねー?(むにー

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そんなわけで、野良犬疾走日和です。カイメイのめいこパートを担当するつんばるです。
物語の主役、かいとパートはたすけさんこと+KKさんが担当してらっしゃいます!

+KKさんのページはこちら⇒http://piapro.jp/slow_story

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西の風さんがKAITOとMEIKOを作中の台詞どおりにおしゃべりさせてくれました!
http://piapro.jp/content/pa1ijdptpbvt9b5s

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ではでは、たすけさんとつんばるのコラボによるかいとくんとめいこさんに、
どうぞお付き合いください。

閲覧数:785

投稿日:2009/07/19 00:10:21

文字数:2,337文字

カテゴリ:小説

  • コメント2

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  • つんばる

    つんばる

    その他

    コメントありがとうございますー!

    いえいえ、読んでいただいてただけで嬉しいですよー! ありがとうございます! 
    野良犬は、年長組と激しめ&テンポ早めの曲が好きなひとならツボる曲だとおもいます、そんでもって
    スルメ曲です。ループで聴いても飽きがきませんよ、歌詞とか解釈し始めると果てがないです!

    ご使用ありがとうございまs……ええええいつからボカロマスターになtt……七夕って!
    まんま西の風さんの作品じゃないですか! あれ実体験だったのかwww(ぇ
    まさかおしゃべりのネタに使ってもらえるなんて思ってもみず、鳥肌とニヤニヤがとまりません!
    ほんとうにありがとうございますー!!

    2009/07/23 01:45:08

  • 西の風

    西の風

    使わせてもらいました

    実は既に読んでいたとか今更言ってみる西の風です。…不義理なのはこっちですねそうですね。
    実は「野良犬疾走日和」を聴いたことがなかったりとかもします。
    読んだ直後に即聴きに行って気がつくとマイリスしていました。良い曲を教えて下さり有難う御座いますーっ。

    …で、ですね。
    勢い余って…、こちらの小説の台詞の一部をそのまままるっとお借りしてしまいました。アプリの裏で何やってんだって話ですが…。
    不都合、不愉快でしたらざっくり言って下さいませ。速攻で消して来ます。はい。
    一応、こちらになります⇒http://piapro.jp/content/pa1ijdptpbvt9b5s

    それではお邪魔致しました。続きを楽しみにしておりますっ。

    2009/07/23 00:27:39

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