目の前の書類の束を見ながら思わず溜息が漏れた。ゲーム進行状況の報告書、及び停電と対応策の検討案等々…仕事が山積みな上にどうにも苛立ちが収まらなかった。

『鳴兎が…!鳴兎があの時泣きそうな顔なんかするから…っ!』

あの時って何だよ…泣きそうな顔とか…浬音のあんな顔俺だって見た事無い。

―――トントントン。

「どうぞ。」
「茅ヶ崎です、報告書とチャペルの照明設計持って来ました。」

ついつい顔目掛けて投げ付けそうになった灰皿をそのままテーブルに置いた。

「見たくない顔だな。」
「俺もです。」

浬音が誰を選ぶかなんて本人の問題であって俺が口を出す事じゃない、だけど、目の前であんな事をされると良い気分もしなかった。

「どう言うつもりだ?」
「御心配には及びません。俺の中でケリは付けましたから。」
「ケリ?」
「彼女にはもう指一本触れません。御存知でしょう?俺は他人の物は欲しがらない
 主義なんです。」
「…鳴兎?」
「何でしょうか?」

気のせいだろうか?何か引っ掛かった。何がどうとはっきり判る物では無くて、どこか『らしくない』と思った。だけどそれ以上深入りする気にもなれなかった。

「俺は報告で本社に戻る、今日のゲーム進行と管理を頼んだぞ。」
「はい。」

書類を捌きながら時折メモを取りつつ幾つかの質問と確認を終えると、鳴兎は部屋を後にした。数分後、入れ違いになる様に走り込む音がした。

「密!」
「啓輔、どうした?息切らして…トラブルでも?」
「憐梨が仕事中に倒れたらしいんだ。騎士から連絡あって、大した事は無いけど
 検査入院するらしくて…。」
「…了解。行って良いよ。」
「恩に着る!」
「となると責任者が鳴兎一人になるな…。」
「ゲーム案は?」

書類の1つを手に取ると啓輔に手渡した。パラパラと目を通すとからりと言った。

「多分大丈夫だろ、鳴兎も仕事の方はちゃんとするだろうし。」
「………………………………。」
「顔怖いぞ?」
「別に…。」

本社に戻る用があって不謹慎ながら助かったと思った。今は少し頭を冷やしたかったから。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

DollsGame-74.白薊-

人が減りますね

閲覧数:146

投稿日:2010/08/18 14:18:01

文字数:885文字

カテゴリ:小説

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    ご意見・ご感想

    レンリさん…(◎Д◎;)ドキドキ…
    BSPJr.もう一人はまだかなぁ(*´∇`)

    2010/08/18 12:07:34

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