美容雑貨のお店「アディエマス」で。
ルカさんと、たこルカちゃんを前に、レイムさんがとうとうと喋っている。

お話の内容はお得意の、オカルト&コンピュータの理論だ。

「いろんな情報が、縦横無尽に行き交って、蓄積されてる世界。それが、ネットの世界でしょ」
レイムさんは、棚から「はっちゅーね人形」を抱きおろした。
そして、胸の前で抱えながら話す。

「ネットの世界から、モバイルを使って、私たちは通信をしたり、交流したりするでしょ?」
「うん。クラウド・コンピューティングとか、そうよね」
ルカさんが、話を聞いてあいづちを打った。

レイムさんは続ける。
「人の心でも、同じよ」

「ココロ?」
たこるかちゃんが、興味深そうに聞き返した。

「そう。私たちの住む世界。そのとなりには、フシギでブキミな世界…そんな“異界”という世界があると思うの」
彼女は、抱いている「はっちゅーね」の頭をなでながら言った。

「その世界と、私たちの世界をつなぐ、モバイルとなるのが、この人形だと思うのよ」

そばで聞いていた、ぱみゅちゃんは、口をとがらせてつぶやいた。

「出たわ、このコのオカルト癖…」


●テト・ドールの評判、いいわよ~!

さて、処かわって。

ゆくりさんの経営する、キャラクターグッズ&雑貨店「ゆっくり」。

お店の裏の倉庫で、バイトのレン君が、積み重なった重たいダンボールの一つを、床に下ろした。
ふぅ、と息をつきながら、中から商品を取り出している。

彼は、そこからテト・ドールをいくつか抱えて、お店の売り場に行った。

「精が出るわね~。ちょっと、休んだら~?」
ゆくりさんがカウンターで声をかける。

「あ、すいません」
レン君は売り場の棚に、それを置くと、汗をぬぐって笑った。

「こんにちは」
ちょうどその時、お店にりりィさんがやってきた。
「あ、こんにちは!」
「あら~、いらっしゃい」

りりィさんは微笑みながら、売り場で立ち止まり、「テト・ドール」を見て、聞いた。
「どうかしら、調子。テトちゃんの評判とか」

「そうね~。結構、いい売れ行きよ~」

のんびりした調子で、ゆくりさんは笑って言った。


●フシギで、ブキミな役は…?

「ゆっくり」のお店の売り場には、「テト・ドール」と並べて、いくつか「はっちゅーね」人形も置いてある。

レン君は、りりィさんの横に行き、人形を見て言った。
「この、はっちゅーねも、けっこう話題にしてる人が、多くなりましたね」

「そうね。フシギな人形、ってことで、注目されてるみたいね」
りりィさんはうなずく。
「とくに、オタ…じゃなく、マニア系の男の子にね~」
ゆくりさんは、愉快そうに言う。

りりィさんはつぶやいた。
「私たちで作ってるこの、テト・ドールも、はっちゅーねみたいに、もう一つ、話題になるといいわね」

「そうね~。何か、フシギでブキミなイベントを、しようかしら?また」
ゆくりさんは、カウンターに肘をついて、意味深げに言った。

「そうですねー。フシギで、ブキミな…」
にこやかに言ったレン君。

だが、彼は、話している2人の女性の、妙に鋭い視線を感じて、真顔になった。

「フシギで、ブキミな役は…。や、やっぱり僕なんですか?」Σ(・口・)

(続く)

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

玩具屋カイくんの販売日誌(181) はっちゅーねに負けるな!テトドール (レイムさんのオカルト理論・3)

レン君も、優しくて企画力のある先輩女性に囲まれて、さぞ成長していく事でしょう。

閲覧数:569

投稿日:2013/01/14 19:45:46

文字数:1,369文字

カテゴリ:小説

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  • enarin

    enarin

    ご意見・ご感想

    こんにちは! コメント遅くなりまして、すみませんでした。

    さて、今回はレイムさんのオカルト理論と、レン君の現場ですね。

    いや~、なんかオカルト系ゲームにのめり込んでいた時があったため、レイムさんの理論、すんなり受け入れられました。違和感全くなしで、うんうん、そうそうって感じです。

    でもオカルトでなくても、クラウド関係や今のPCにまつわる技術を見ても、オカルトと現実の差があんまりなくなってきている気もします。勿論、リアル化不可能の物はありますが、少なくても20年前の人が見たら、興味津々になってしまう”今の技術”は、多数あると思うんです。AR技術やミクさんやテトさんも、勿論その1つ。

    さてはて、はっちゅーね人形の不思議、これからが楽しみです!

    それとレン君、この現場で鍛えられて成長しますね!

    ではでは~♪

    2013/01/18 12:10:20

    • tamaonion

      tamaonion

      enarinさん、コメントをありがとうございます!

      >いや?、なんかオカルト系ゲームにのめり込んでいた時があったため、レイムさんの理論、すんなり受け入れられました。違和感全くなしで、うんうん、そうそうって感じです。

      どうも有難うございます。でも、「オカルト系ゲーム」って、楽しそうですね。
      噂では、かなり怖いゲームもあるそうですよね。ストーリー性のある優れたゲームもあって、いまのゲーム好きの方は羨ましいものです。
      そのうち一念発起して、ゲームの世界の飛び込もうかなぁ(笑)


      >でもオカルトでなくても、クラウド関係や今のPCにまつわる技術を見ても、オカルトと現実の差があんまりなくなってきている気もします。

      そうですね。「バーチャル」という概念そのものが、昔の人には不思議なものでしょうね。
      でも、ある学者さんが言ってましたが、リアルの反義語は「イマジナリー」だそうです。
      バーチャルは、世の中で通用する分(バーチャルマネーとか)、リアルの反義語じゃないそうです。
      オカルトは...バーチャルとイマジナリー、どっちなんでしょうね。


      >それとレン君、この現場で鍛えられて成長しますね!
      ええ。「巨人の星」のように、彼に辛苦を与えたいな、と思ってます(笑)

      またぜひ、感想を聞かせてください!

      2013/01/20 21:27:36

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