UV-WARS
第一部「重音テト」
第一章「耳のあるロボットの歌」

 その24「タイムマシン」

 滑り下りた先は狭い通路だった。ほんの少し先には扉があった。
 モモが下りて来るのを待って、テトは扉の前に立った。
 扉は自動的に開いた。
 その向こうは機械で埋まっていた。メイコの姿はなかった。
 機械は半球状の部屋の中央に鎮座し、壁との隙間は一人分しかなかった。
 降りてきたモモにテトは肩を貸した。
 二人が中に入ると、扉が閉まり、メイコの声がした。
「こっちよ!」
 機械を半周した向こう側でメイコが待っていた。
 機械の一部、ハッチなのか、が開いていてテーブルなのか丸椅子なのか区別のつかないものが置いてあるのが見えた。
 メイコはハッチの脇のモニターの前に立ち、画面を触って操作していた。
「衝突までは、どのくらい?」
「3分24秒です」
「念のため、マニュアルを渡しておくわ
 メイコはモモに小さなメモリーカードを投げた。
 モモは受け取ると舌の上にのせてから飲み込んだ。
 マニュアルのチェックを終えたモモが声をあげた。
「タイムマシン! ほんとですか?」
 メイコはニコニコとして頷いた。
「あん?」
 テトは露骨に疑いの眼差しでメイコを見据えた。
「テトさん、本物のタイムマシンですよ!」
 モモは嬉しそうにはしゃいでいた。
「モモ、『タイムマシン』て、なんだ?」
「知らないんですか? 時間を自由に移動する機械ですよ。過去へ行ったり、未来に行ったり…」
「どんな原理だよ…」
「粒子加速で陽電子を電子と対消滅させてマイクロブラックホールを作成…」
「今のは質問じゃないから、モモ」
 テトは思いきりメイコを睨み付けた。
「この期に及んで与太話につきあうほど暇じゃないんだ、こっちは」
「これを見て」
 メイコはモニターの一点を指差した。
「おい、人の話しを聞け…」
 メイコは微笑みながらテトの頭を掴んでモニターにつき出した。
 テトが驚いたのはモニターの中の動画ではなく、思いの外メイコに力があることだった。
「な!?」
「テトさん、画面!」
 モモが声をかけなければ、テトはメイコにつかみかかっていた。
 画面の中央にテトが映っていた。
「なに、これ?」
 画面の中でテトはビームサーベルを降り下ろしていた。
〔タイプHと戦った時の映像…?〕
 続いて右を向くと、カメラはテトを追ってレンズを右に向けた。
 一瞬、小隊長とモモが映ったが、カメラはテトだけを追いかけて通過した。
 カメラが止まった時、テトはタイプHの胸にビームサーベルを突き刺していた。
 テトは映像の謎に気付いた。
〔全員が映っていた。じゃあ、カメラは誰が回してたんだ?〕
 画面が切り替わった。
 画面の中央にテトがいた。他に六人の人影があった。
〔デフォ子、モモ、マコ、ルナ、ルコ、リツ。降下直後の映像だ。待てよ。このカメラ、ボクのすぐ後ろにあることになるぞ〕
 画面が切り替わって、テキストだけのコンソール画面になった。
「今のはこのタイムマシンの機能のひとつで過去の映像を映し出すことができるの」
 メイコは優しげな笑顔でテトを見つめた。
「これで信じてもらえる?」
 テトはまだ半信半疑だったが、はっきりと頷いた。
「じゃあ、中へ」
 テトが躊躇っていると、モモが知らせてきた。
「衝突まであと32秒。1キロメートル北に直径14メートルの物体が落下します」
 遠くでものの落ちる音がしたと思ったのも束の間、音は大音響に変わり、風もないのに強風に曝されたように身体が傾いた。
 実際に建物は30度近く傾いていた。
 テトの背中にしがみついていたモモの体は宙に浮いた。
 メイコはテトの腕を掴むと、半ば放り込むように、タイムマシンに押し込んだ。
 続けてモモを掴んで放り込もうとした時、動かないと思われたタイムマシンが滑るように動いた。
 タイムマシンは壁にぶつかると、壁に沿って部屋を半周した。
 

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UV-WARS・テト編#024「タイムマシン」

構想だけは壮大な小説(もどき)の投稿を開始しました。
 シリーズ名を『UV-WARS』と言います。
 これは、「重音テト」の物語。

 他に、「初音ミク」「紫苑ヨワ」「歌幡メイジ」の物語があります。

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投稿日:2018/05/01 07:40:05

文字数:1,650文字

カテゴリ:小説

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