【オリジナルマスター】 ―Grasp― 第七話 【アキラ編】

投稿日:2009/10/26 18:19:13 | 文字数:4,467文字 | 閲覧数:147 | カテゴリ:小説

ライセンス:

マスターの設定で異様に盛り上がり、自作マスターの人気に作者が嫉妬し出す頃、
なんとコラボで書きませんかとお誘いが。コラボ相手の大物っぷりにぷるぷるしてます。

******

アキラ、カクテルバーにて美憂先輩に茶化されるの巻。

相変わらず舞台になってるカクテルバーですが、+KKさんのraison d'etre ep.7,5の
設定をそのままそっくりお借りしてます。こういうバーに一度行ってみたいもんです。

美憂先輩みたいなカッコ可愛いお姉さんは書いていてたいへんたのしいです。
あのアキラを弄れるキャラなんているのかと思ってましたが、酔っ払いの美憂さんが
かなりいい仕事をしてくれました。こはさんちのキャラのノリがすきです。
……が、個人的に、今回一度もボカロさんたちが出てこないのがすごく反省点……!
いや、うちのこたちアプリだから仕方ないんですけどネ……(笑

悠編では、先輩が初音さんとお話しているようです、こちらも是非!

******

白瀬悠さんの生みの親で、悠編を担当している桜宮小春さんのページはこちら!
http://piapro.jp/haru_nemu_202

つんばるがいろいろお世話になりっぱなしの+KKさんのページはこちら!
http://piapro.jp/slow_story

……美憂先輩と別れてからのアキラが、何を言ってるのかわかんないひとは
http://phantomlake.blog58.fc2.com/blog-entry-1315.html

前のページへ
1
/1
次のページへ
TEXT
 

オリジナルのマスターに力を入れすぎた結果、なんとコラボで書けることになった。
オリジナルマスターがメイン、というか、マスター(♂)×マスター(♀)です、新ジャンル!
そして、ところによりカイメイ風味です、苦手な方は注意!

コラボ相手は、かの純情物語師(つんばる命名)、桜宮小春さんです!
(つ´ω`)<ゆっくりしていってね!>(・ω・春)



******



 少し遅れて、スーツのままの美憂先輩が店に顔を出した。きちんとスーツを着ている女性というのは、概してきりりと見えるものだ。もちろんどう頑張ってもスーツが似合わないひとというのもいるけれど、普段スーツを着ない人でも、たまに着るとどきっとするくらいその魅力が際立つことがある。そして、美憂先輩は間違いなくスーツをきちんと着こなしているほうだと断言できるくらいには、素敵な女のひとだった。

「ごめんアキラちゃん、待たせた?」
「いえ、さっき来たところですよ。そんなに待ってません」
「……って言いながら、それ何杯目?」
「3杯目です」

 結構飲んでるじゃないのよ! と、ぷりぷりしながら私の隣に座る美憂先輩の前に、マスターが笑いながらピーチ・レディを差し出す。……注文も聞かずに、そのひとがいちばんのみたいカクテルをつくって出すことができるというのは、このマスターの特技だと思う。いや、妙技の域に入っていると言っても過言ではないだろう。
 尤も、まだまだ新参の私には、そんなサービスはしてくれないようだけれども。



―Grasp―
アキラ編 第七話



 とりあえず一息ついたところで、そっとグラスをもちあげると、美憂先輩も出してもらったばかりのグラスを片手にもちあげる。グラス同士をかるくぶつけると、小気味よい音がした。
 じつにおいしそうにグラスに口をつけた美憂先輩は、今日この場ではいつもみたいに「ぷはー!」なんて言わない。店が店だからそういう雰囲気でもないのだろう。尤も、私もひとのことをとやかくいえないくらいには、かしこまっているし。
 満足そうにグラスをコースターに戻した美憂先輩は、いつになくたのしそうだ。

「なにかいいことでもあったんですか?」
「? べつにないけど? なんで?」
「いえ、なんだかたのしそうなので」
「黒部さん、先週はひとりだったから東雲さんと一緒で嬉しいんじゃないかな」
「もう、マスターったら、ばらさないでくださいよぅ!」

 すこしだけすねて見せた美憂先輩に、マスターは邪気のない笑みを浮かべた。そして、ごゆっくり、と一言添えて、お通しを2人ぶん置き、他のお客の応対に向かっていく。土曜日だから常連が多いのだ。皆、明日が休みだから、こぞってのみにくる。逆に、平日や日曜の深夜は客がすくなくて、それはそれで居心地がいいのだが。

「……あれ? 先週って、悠サンとのんでたんじゃないんですか」
「あー、うん。でも、調子悪そうだったから、酒だけ置いて、ここでのみなおししたの」
「そうまでしてのみたいですか……」
「社会人は日々顧客のワガママと上司のセクハラと自身のストレスと戦ってるのよー」
「美憂先輩、いまの職場は女性ばっかりだって言ってませんでした?」
「それでも嫌なものは嫌なの、想像してみなさいよ、管轄外の事務処理までさせられるの」
「それはパワハラというんじゃないかと」
「もお、アキラちゃんてば理屈っぽいんだからー! そのぶんじゃ悠も苦労してるわね」

 そうだろうか。まあ、苦労していたとしても、それを甘んじて享受しているのは悠サンの方だし。
 それにしても、休日のこの時間にスーツで来るということは、美憂先輩が今の今まで仕事をしていたということは本当だろう。そう労うと、美憂先輩は本日のとんでもないお客様に対する愚痴や、どうしても仕事を押し付けてくる上司の話、それから、先日シャワーのノズルがおかしくなってしまって、洗髪に時間がかかるというような話をきかせてくれた。……うん、たしかに美憂先輩は、日々ワガママとパワハラとストレスと戦っているようだ。
 話をしながらお互い何杯目かのグラスの底にすこしだけ残った酒をのどに流し込んで、グラスを返すついでにアルバイトのお兄さんに注文を告げる。酒というのはあまりがぶがぶのむものではないとわかっているけれど、美憂先輩の振ってくる話題が予想できるだけに、なにか落ち着かない――ときたま、ずくり、と、内臓が軋む感覚がするけれど、例の腹痛はもう鳴りをひそめているので、これはまた別のなにかだろう(しょせん私の気の病なんてこんなものだ。気がまぎれればすぐによくなる)。

「コラボの進行度合い、どう?」

 そらきた。
 新しいカクテルを片手に、目がとろんとなりかけている美憂先輩が、窺うように訊いてくる。

「とりあえず、調声段階まできました」
「おお、早いねえ」
「でも、まだ歌詞もらってないですし、音源ももうすこし調整が必要かもですね」

 やはり、歌詞がないとなかなか雰囲気はつかみにくいものだった。いっそ、メールで歌詞だけでも送ってもらって、調声をはじめていようか。あとで合わせるときに、調整はいくらでもできるし、その方が効率のいい方法かもしれない。
 などと考えていると、美憂先輩が笑顔のまま、声のトーンを落とした。

「悠はだいじょうぶだった?」
「……? ああ、今日はとくになんとも。私がおとうとくんを弄ったらノってきたくらいですし」

 そっか、よかった。そう言った美憂先輩の瞳にはあきらかな安堵がうかがえる。そのほころんだ顔を見て、やっと、美憂先輩のさっきの笑顔がすこしだけこわばっていたことに気付いた。
 美憂先輩は、そこまで悠サンが心配なのか。まあ、もともと仲のよいイトコ同士であるし、身内ならあたりまえの感覚なのだろうか。しかし、それにしてはいささか過剰すぎやしないか。

「先週、そんなに悪かったんですか、悠サン」
「ううん、大したことないのよ? メイコちゃんに聞いたら、次の日にはけろっとしてたみたいだし」
「それにしては、美憂先輩は悠サンのことを心配し過ぎているような気がします」
「あら、アキラちゃんやきもち?」

 にやにやしながら言われて、思わず頬に血があつまる。

「なっ、誰が!」
「なに、図星?」
「ちがいます、なに言ってんですか!」

 誰が、誰にやきもちを妬くって? 私が美憂先輩に対して妬くことなんかないだろう! そうだ、妬くというなら美憂先輩にこんなに心配してもらえる悠サンに妬くことはあっても……ああ、さっきそう言って切り返してやればよかったのに。うっかりした。なんの誘導尋問だ。これではまるで――。
 ……まるで、何?

「心配しなくても、悠は私のタイプじゃないわよー?」
「だれもそんな心配してませんしなんでそういうことになってるんだかまったく理解できません、意味わかんないんで説明がいただきたいです」
「あはは、アキラちゃん、顔まっかー」
「からかわないでください! さっきマスターにもからかわれたばかりなんです、そういえばいつだかいつもの居酒屋で悠サンの同級生とはち合わせたときもそんな妄言を――」
「お客さま、すこし声が高いですよ」

 よく知ったアルバイトのお兄さんにやんわりと指摘され、口を噤むしかなくなる。小声ですみませんと謝る私の横で、美憂先輩は相変わらず声を殺して笑っている……なんだろう、この暖簾に腕押しな感じは。酒が入っているから、いつもより頭も気もまわっていない。てのひらのうえで踊らされているような気になって(それが誰の手であろうと、屈辱的なことには変わりない)、八つ当たり気味にぎっと美憂先輩を睨み据えるが、先輩はまったく堪えていない(というか、こっちを見ていない)。

「……酔ってますか」
「あははー、そうかもねえ~」
「……これ以上へんなこと言うようなら、いっそ潰れてください……」

 酒に酔った感じのとはまたちょっと種類の違った頭痛が襲ってきたが、当の美憂先輩は、至極たのしそうに新しい酒を注文していた。


 そんな状態だったのだから、まあ、それは時間の問題だったわけで。

「きもちわるい……」
「疲れているなら相応に自重すべきですよ、先輩。自業自得です」
「アキラちゃんがむずかしいことゆう……」

 四字熟語すら「むずかしい」のか。早く運んでやらねばいけないな。
 もうすこしですよ、吐かないでくださいね、あとちょっとなんですから、そう言って誤魔化し誤魔化し歩いていると、ようやっと美憂先輩の家が見えてきた。……やれやれ、酔っ払いをかついでいると、いつもの道のりもずいぶん遠くに感じるものだ。
 家の扉の前に立って、美憂先輩の鞄から(勝手にではあるが)鍵を取り出す。がちゃりと重い音をたてて、鍵の開く音がした。

「はい、着きましたよー」
「うぅ、ありがと……」
「中まで一緒に行きますか?」
「だいじょぶ、トイレすぐそこだし……」
「そうですね。じゃあ、荷物玄関に置きますよ」
「ごめんねえ……」
「いいんですよ、それじゃ、吐いたらちゃんとうがいして、布団で寝てくださいね、明日お休みなんでしょう?」
「うぅ、かたじけない……」
「じゃ、おやすみなさい」
「うん、ありがとアキラちゃん……」

 青ざめた顔で手を振る美憂先輩にこちらも手を振り返して、私も帰路に着くことにする。


 なんで美憂先輩はああして私と悠サンをくっつけたがるんだろう。わけがわからない。

「おとこのひとなんて、めんどくさいだけなのに、美憂先輩はわかってない」

 ……その持論は、ずいぶん前から温めている持論だったが、ここ最近、それを口にするたび、すこしだけ罪悪感がともなうようになった。原因はわかっている。最近といいながら、きちんといつのことだか覚えているくらい前の、ある一点を思い出す。
 うっかり悠サンに向かって、その持論を吐いてしまったことがある。それだけならとくに罪悪感も抱かなかったのだろうが、だめ押しのように「忘れてください」と言ってしまったことが未だに引っ掛かっている。まるで、忘れてくれるなと言っているようなものじゃないか。めんどうくさいやつばかりじゃないのは、私も知るところだし、だいたいの常識だろう。だから、私が男の立場ならならきっと激昂しているところだというのに、言われた側の当人は――悠サンは、本当に忘れているのか、はたまた気にしていないだけなのか、以前と対応は変わりない。懐が深いのか単なる阿呆か、判断に悩むところでもある。
 そうしてあまりにも鮮明に思い出される記憶に、ひと匙ほどの憂欝を覚えた。思い出す前に気付くべきだった。あれも思い出したくないもののひとつだ。

「……あれは、酔っていただけだよ」

 誰にしたわけでもない言い訳が、夜の空に溶けていった。

つんばるといいます。世の中のすみっこでしがないモノカキやってます。
MEIKOがすきです。KAITOがすきです。カイメイがすきです。

写真素材はサイズ・色調その他、改変自由のフリー素材です。お好きにどうぞ。
なにかが誰かの琴線に触れたらさいわいです。

⇒ブログ:http://phantomlake.blog58.fc2.com/
⇒メール:croak-crash【あっとまーく】hotmail.co.jp

もっと見る

作品へのコメント0

ピアプロにログインして作品にコメントをしましょう!

新規登録|ログイン
▲TOP