「ただいまー」
バイト終わりの午後10時
12/27
年末の忙しい空気と熱気に呑まれ、きっと今日という日も意味もなくきえていく
私、鏡音リン。
16歳。高1。
一人暮らし。
親から毎月送られてくるそれは一ヶ月を貫くにはあまりにも頼りなくて
年末だというのに、私の体はフル稼働で働き続けなければならない
…この家はかつて、この日には笑顔が満ち溢れていたのに
それが一年前のことだと思うと余計にさみしくて
「そういえばレン、どうしてるかな…」
その笑顔の中には、必ずレンがいた。
小学生のときに同じ誕生日だねなんていって、よく談笑したものだ
…そんな彼とも、中学を卒業してから連絡をとっていないのだけれど
遠くなるということ
それはどんなに仲のいいふたつでも、簡単に距離を引き裂いてしまう
電車の時間も全く違うし、なんだかんだいって最後に会ったのはいつだろうか
…レンは今、誰と誕生日を過ごしているのだろう。
家族かな。
友達かな。
……彼女とか、かな。
別にあいつに彼女がいようと私は知ったこっちゃないが。
バイトで貰った残り物の惣菜をたべる
店長が、今日は誕生日だろうとサービスをしてくれたチキンとデザートだ
…当たり前だけれど、冷たい。
いや、あっためれば済む話だけれど。
あっためたところでどうせ、私の心だって満たされはしないのだ。
一年前にみんなで食べたあの美味しいチキンの味が蘇る
せめて誰か、隣にいればこんなにさみしいことはないだろうに。
思い出は、美しい分残酷なのかもしれない
[ピンポーン]
…?
こんな夜に、誰?
おそるおそる扉を開ける
親からも今日帰るなんて連絡は貰ってないし、友達も家に来るなんて言ってない
電気の請求か何かだろうか?
「はい、鏡音で……」
…?
自分が寝ぼけているのではないかと半開きだった目をぱちりと開けても目の前の景色は変わらない
そこにいるのはさっきまでずっと私の頭の中を埋めていた彼だ。
ついに幻覚症状、来たか。
『リン?』
「な、なんで……」
『なんでって、お前の誕生日じゃん』
『毎年、こうやって一緒に祝ってたよな』
君がくしゃくしゃの笑顔でそう答えるから
それまでからっぽだった心が満たされるようにあったかくなっていく
「あ、今日バイトで貰ったチキン、たべる?」
『おーいただく!リンの家久々だなー…ってなんだこのチキン、つめたっ』
「ごめんごめん、今からあっためる」
…夢じゃないよね。
なんだか、君をみていると自然に元気が出てくる
まるで、魔法にかけられたみたいに。
きみがいる。
それだけで、もう、充分なのかもしれない。
『おーいリン、ほかのも食べていいー?』
「はいはい。どーぞ」
あったかい。
思わず零れた笑顔に、ふいに胸が熱くなった
【鏡音誕】君じゃなきゃダメみたい
遅れてすいませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ(超土下座
リンレンお誕生日おめでとう!
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