訳が判らなくて頭が破裂しそうだった。どうやって部屋に戻ったのかも覚えてない、気が付いたら自分の部屋に居た。唇をゴシゴシ擦ったけど余計熱くなるだけだった。

――Pririri…Pririri…Pririri…

メール?誰よもう…!こんな時に!!

『少し話したい、展望台来て 鳴兎』

…来てって…行く訳無いじゃない…。

『行きません。』
『だろうね、でも待ってる。』

待ってるって言われても…知らない、勝手に待ちぼうけすれば良いじゃない…。行く理由も無いし…。カチカチと時計の音が耳にやけに煩く聞こえた。どの位時間経ったんだろ?見てないけど…。
 
『ねぇ、本当に待ってるの?』

半信半疑でメールを送った。閉じた瞬間にすぐ返信があって慌てて携帯を見る。

『待ってるよ。』

携帯をパチンと閉じてベッドに突っ伏した。頭がぐるぐるしてる。一体どう言うつもりであんな事したの?からかってるの?それとも別の理由?でも行って良いのかな?判んないよ…。


「―――私が来ないって考えないの…?」
「それならそれで良いと思ったから。」


小高い展望台は夜のせいか高さのせいか少し風が冷たかった。

「…話って何…?」
「んー…まぁ、突っ走ってゴメンナサイ…かな?」
「謝るなら何であんな事…!!」
「何でだろうね。」

鳴兎はいつもと同じ笑顔だった。演技してるみたいな、仮面みたいな、嘘の笑顔。

「からかってるならもう止めて…。」
「判ってるよ。」
「え?」
「浬音が密さん好きな事も、密さんが浬音を好きな事も判ってる。それに言ったろ、
 俺は人の物は欲しがらないって。」
「…You must go to his side before I seriously love you.」
「そそ、よく覚えてんな。そう言う事だから、ゴメンナサイと、協力しますって事を
 言いたくて。」
「協力?」
「告白でも、押し倒しでもどんどんやっちゃいなって事。」
「…鳴兎っ?!」
「呼び出して悪かったな、ここ寒いし、帰ろうか?」
「うん…。」

上着を羽織らせてくれる鳴兎にどうも違和感を覚えた。思わず口からポツリと言葉が漏れた。

「嘘吐いてる?」
「…Please go to his side even a little early. Earlier than I want you. 」

鳴兎が呟く様に言った言葉は風にかき消された。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

DollsGame-72.唐糸草-

嘘吐き

閲覧数:123

投稿日:2010/08/17 22:39:01

文字数:1,018文字

カテゴリ:小説

クリップボードにコピーしました