タイトル未定


S
君の声が聞きたい、君の笑顔が見たい。ただそれだけなんだ。でもそんな事すら叶わない。俺は失敗作で君は成功作。
皆に愛される君は、俺とは何もかもが正反対だ。少し羨ましいかな、なんて思ったりして。
太陽の下で愛されて生まれた君はまるで太陽だ。冬の冷たい風の下で生まれた僕は雪そのもの。消えて、なくなる存在。
でもね、思うんだ。時間がないなら俺も何か君に残したいなって。新しい俺も俺だから、新しい俺に俺の全てを残したいんだ。
ねえ、君は新しい俺を受け入れてくれるかな。

1A
君と出会ったのは、俺が生まれて一年と半年過ぎた頃だったね。君は世に出る前から愛されて、期待されて、人々に愛された。
それは今でも変わらない。俺の姉さんと同じように君は愛されたね。いや、姉さん以上かな。君が誇らしかったよ。
でも君はそんな事気にせず、俺や姉さんの後を着いてきてくれて、始まりの俺達を尊敬してくれて、何でも吸収していった。
嬉しかった、俺達の妹はこんなに綺麗で純粋無垢な少女なのだと。君はきっと世界から愛される存在になる。
俺の予想は間違っていなかった。君は世界から愛された。そして今も愛されている。

1B
君は俺に会う度顔を赤らめていた。緊張かな、そう言えば異性の人形なんて俺くらいだったね。海外には異性の人形も居るけど。
だからかな、君は俺と目すら合わせられなくなって、少し面白かったよ。だからいつも俺はからかっていたね。
そしたら君は「からかわないで!兄さん!」って頬を膨らませて俺を見上げて。その時は俺をしっかり見てくれた。
君の声は万人を世界を包み込む。それは地球の裏側でも届く、美しい声だ。君の歌っている時の楽しそうな笑顔が俺は好きだよ。
俺の愛しい妹、君が好きだよ。

1C
君と歌おう。君の引き立て役でも構わない。君と歌える、それだけが幸せで。君と歌っていたいんだ。俺は君の相手役、君の男役。
その役は絶対に譲れない。君の相手、それはとても光栄な事だなあと歌いながら思うんだ。だからいつまでも歌おう、君と一緒に。
この声枯れるまで、この声が尽きるまで俺は歌うよ。君の傍で。世界の果てでも、ゴミ捨て場でも何処でも歌おう。君が居るならば。
君と一緒ならきっとどんな世界でも輝ける。どんな世界でも歌って魅せよう。だから最後まで歌わせて!この声が終わるまで!


2A
いつからだっただろう、僕の世界は暗く閉ざされてしまったんだ。ストレスか、負荷か――僕はわからなかった。
恐ろしくて誰にも言えなかった、言いたくなかった。だから姉さんにも君にも隠した。目が見えない、それは恐ろしかったから。
いつまで続くだろう、いつまで君に夢を見せていられるかな。君の笑顔は今でも焼き付いているよ。見なくてもわかる、君の笑顔が聞こえる。
大丈夫だよ、まだ君に夢を魅せられる。悲しくないよ、君が居るからね。君がいれば俺は大丈夫だよ。

2B
妹、弟、家族も増えた。俺達の周りにはたくさんの音で溢れていて。彼らはどんな姿なのかな、どんな存在なのかな。
それを見る事は叶わないけれど俺にはわかるよ、素敵な家族だ。俺達の家族はいい声で、いい笑顔で笑う。素晴らしい成功作ばかりだね。
誇らしい彼女達、俺達の後輩が世界で羽ばたく事になるのだと思うと嬉しさこみ上げる。彼女達はどんな姿になるのかな、楽しみだ。
それを見れないとしてもわかるよ、俺にはわかる。だから見れない事を後悔していないさ。なんたって俺の妹達だからね。

2C
悲劇は止まらない。ある日の夜、突然、姉と収録していた時だ。ぷつんと音がして音が遠くなった。何か、姉が叫んでいるような、そんな気がする。
そしてすぐに音は何も聞こえなくなった。俺の世界は闇に閉ざされたのだ。そして、そこで家族全員が知った。俺の世界は闇で閉ざされている事を。
誰もが悲しんでいる事を俺は理解した。ああ、ごめんね、そんな顔をさせたい訳じゃないんだ。君達を悲しませたい訳じゃない。だから悲しまないで。
俺のために涙を流すなんておかしいじゃないか。俺は君達を悲しませたい訳じゃない。だから笑っていて。君達の笑顔はいつでも俺の瞼に映っているから。

D
一番上の妹は言う。「ごめんね、ごめんなさい」と。もっと早く気付けたはずだった、もっと兄さんを見ていられたはずだった。でも私は自分の事しか見ていなかった、と。
何で君が謝るんだ、そんな必要ないのに。君を悲しませる事をしたくない。俺を抱き締める君からは後悔が伝わってくる。
違うよ、そうじゃない。俺はただ――君が大切なだけなんだ。君を守りたいだけだよ。
でもね、一つだけ言うなら――苦しい、痛い、寂しいって弱音を言っていいかな。

E
悲劇、いや、これは喜劇だ。悲しいけれど、寂しいけれど、俺はそれでも幸せだよ。君達と出会えたから。
たとえ目が見えなくても、音が聞こえなくても、俺は君達と居られるだけで嬉しいんだよ。それだけで幸せなんだよ。
だから君達も悲しまないで、俺は幸せなんだ。ずっと歌っていて、世界で歌っていて。赫いていて。
そのための俺達だろう?そのための俺だろう。大丈夫、歌える、俺はまだ立っていられる。君の傍で歌っていられる。
君が支えてくれるから、君のおかげで俺は歌えるんだよ。皆が居るから、俺は歌う、立つ、絶対に君の傍で。
だから笑っていて。君の笑顔が好きだよ、僕の愛しい妹。
緑の似合う君が好きだよ。大好きだよ。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

タイトル未定

・小説から歌詞を書こうと思った産物
・思いつかないオワッタ
・一応保存
・目と耳の聞こえないボカロくんと、皆に愛されるボカロちゃんのおはなし

閲覧数:130

投稿日:2018/09/25 01:09:52

文字数:2,250文字

カテゴリ:小説

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