昔々、森に囲まれた平和な国。
そこに住んでいるのは、きれいな緑の髪の住人達。
ただ1人を除いては――
『生きていてごめんなさい』
いつのまにか私の口癖。村の人たちは皆綺麗な緑の髪。
なのに、どうして?私だけ人と違う白い髪。まるで老人のように白い髪。色の着いていない、仲間はずれの白い髪。どうして、よりによって緑髪に囲まれて生まれてしまったの?
ある日、まだ日が昇りきらない頃に私は家を出た。私は、こんなところに居てはいけない。ここには、緑の髪の者しか住んではいけない。
私はまだ暗い森を駆け抜ける。
けど、足が止まった。
森の奥に密かにそびえ立つ千年樹――まるで、私みたい。
「…あ」
そこで、私は思い出す。
まだ、愛に包まれていた頃。よく、父さんとここに遊びに来たっけ。――母さんは、他の男の人と村を出て行ったけど。父さんも、私と同じ白い髪だった。そして、ここで遊んだ後、いつも言っていた。
『お前の髪は仲間外れじゃない。個性だ。だから、絶対にその髪を気にいってくれる人がいる。この村の中にだ。だから、逃げないで胸を張って生きなさい。
絶対に、絶対にこの森の外には行ってはいけない。わかったか?』
そこで、私は村とは反対の方向に目を凝らす。すると、そこにはこの国の色ではない、黄色の鎧を着た兵士が、2人。見張りのようだった。その兵士達は、私には気づいていない様だった。
そこで、兵士のすぐ近くの茂みが揺れた。その後の兵士の行動に、私は目を疑った。
ガツッ。
兵士は、すぐに茂みの中に持っていた槍を突き刺した。途端、獣の悲鳴が聞こえた。
『絶対に、絶対にこの森の外には行ってはいけない』
父さんの行った言葉の意味を今、理解した。
この森の外は他の国との国境がある。そこで、国境の向こう側の国の兵士達が、国に入ろうとする者を許さず、殺している―――
私は、もちろん逃げ出すのを止めた。だがすぐに村に戻るのはちょっともったいなくて、もう少し千年樹の傍に居たかった。
「昔は、よくこの樹に話しかけてたなぁ………」
私は、そっと樹に触れる。苔が樹を覆っていた。
何か話そうかと、考える。だが私は――
「孤独に生き続けること――それはとても寂しい。父さんの言ったように、だれでもいい、私の友達になって欲しい」
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