「コスプレねえ。売場でコスプレ、って、ふむ…」
とりとめもなく考えながら、りりィさんは歩いていた。

新製品の「テト・ドール デビちゃん」の売り出し作戦がはじまった。

コヨミくんが提案したのが「コスプレ」。
人気店の、人気スタッフが、ドールの世界と同じ服装をしてみよう、というものだ。

「うちの店では、ちょっと無理かなあ。やる人もいないし」
りりィさんは考えた。
「わたしも、もう、そういうのはしないし」

“もう”、という所がミソだ。
りりィさんは実は、以前に1度、コスプレのイベントに出たことは、ある。


●偶然通りかかったの…

つれづれに、歩いていると、町の一角に、ちょっと賑わっているところがあった。
建物と建物の間の広場で、「アンティーク&骨董」の市場が開かれている。

「あら」
彼女は足を止めて、広場のほうに歩いて行った。

りりィさんは、そういう分野が好きなのだ。

「あ、りりィさん」
声のする方を見ると、広場の隅に移動カフェの「ドナドナ号」が止まっている。

車の中のキッチンで笑っているのは、たこるかちゃんだ。
ドナドナ号の前のベンチには、男の人とレン君がいた。

「あら、こんにちは。たこるかさん、レン君」
「こんにちは!」
ベンチを立って、レンくんは笑って挨拶する。

「りりィさん、骨董が趣味なんですか?」
たこるかちゃんの問いに、彼女は笑った。
「ううん、偶然通りかかったの。あれ、美味しそうなもの食べてるわね」
「ええ、ドナドナ号の名物の“ソラさんのカレー・ナン・ドック”です」

「それ、わたしも1つ、くださいな」
りりィさんは言った。


●お化粧と、アンティークの衣装…

すると、レン君の横でぼんやりと、みんなの会話を聞いていた男の人が言った。
「ふーぅぅ、この“ガリバー・コーヒー”もイケますよ」

声の調子が、なんとものんびりとした、癒し調だったので、みんなは思わず笑った。

「あ、りりィさん、こちら、カイさんです。キディディ・ランドの店長の」
レンくんに言われて、彼女はあれっと思った。
「あ、よくお店でお見かけししてます。どうも、こんにちは…」
「どうも、こんにちは。お店にもいらしてくれてましたね」

言われてみれば、たしかに何度か見た、キディディ・ランドの店長に違いない。
でも、どこか違う。

「そうか。お化粧、してるのね!」
りりィさんは、心の中でうなずいた。

頭の良い彼女は、すばやく考えをめぐらせる。
「キディディの店長さん…。お化粧…。そして、アンティークの衣装の市場。もしかして…」

そう、もしかして、さっき自分も考えていた、コヨミ君の“コスプレ作戦”と、関係があるのかしら?
「カイさんやレンくんは、…女装のコスプレを、くわだてているのかしら!?」Σ( ̄ロ ̄lll)

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  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
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玩具屋カイくんの販売日誌(158)  デビちゃん、売り出し作戦開始 ~その3。

アンティークの衣装って、和風、洋風を問わず、なにやら怪しげなもの、ありますよネ(笑)。誰が着ていたんだろう、みたいな。

閲覧数:91

投稿日:2012/06/17 19:20:59

文字数:1,175文字

カテゴリ:小説

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  • enarin

    enarin

    ご意見・ご感想

    今晩は! 早速拝読致しました。

    たこるかさんの”カレー・ナン・ドック”が美味しそうでした。あとコーヒーも。

    それと、コスプレ作戦、なにやらジワジワと…。また”ドナドナ号”という名前もツボでした。ドナドナドーナドーナ…

    ではでは~♪

    2012/06/17 19:58:58

    • tamaonion

      tamaonion

      ありがとうございます!

      雑貨店でも、食べものをうまく取り入れてるところは、人気があるみたいですね?。

      お話にも、そんなのが生かせたらいなあ、と思っています。

      それでは、また...。

      2012/06/17 22:48:28

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