――カタカタカタカタ……

細かい振動が私の手に伝わってくる。

両手で押さえたギンガムチェック柄の布をミシンの針が規則正しく縫い合わせていく。

横に立って興味深そうに私の手元を覗きこむ娘はもう高校生。

子供だ子供だと思っていたけど、いつのまにか私の身長を追い越し、体つきもすっかり女性らしくなっている。

去年までのお気に入りだったこの服も、胸がきつくなってもう着れない、とちょっと寂しそうに言っていた。

大好きだったおばちゃんが健在だった頃におねだりして買ってもらった、この子にとってすごく大切な思い出の服なのに。


服としての役目は終わっても、布としての寿命は まだ尽きていないから、お母さんがこの服を別のものに作り直してあげるね。



完成したトートバッグを娘の目の前に広げて見せると、娘はそれをそっと手に取り、愛しそうに撫でて、ぎゅっと胸に抱きしめた。


Fin.

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

リメイク

オリジナルショートストーリー第1話

閲覧数:107

投稿日:2014/07/12 21:52:26

文字数:404文字

カテゴリ:小説

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