暴走と自制の狭間で。




<5.とりあえず妥協>





すっかり動かなくなったバカイトをワクワクしながらじっと見る。まるでしかばねのようだ。あ、いや実際屍か。

ふふふふ、見たかロリコンの力。正義の鉄槌は貴様に下された、さあ止めを刺してやる!・・・と行きたいところなんですが。おかしなことに俺の心の中には違う気持ちが溢れ出して来ている。

でもそれが果たして本当のものなのかどうなのか、それはしっかり見極めないといけない。



―――何と言っても、俺の将来を決定する大切な事に繋がるのだから。



「レン」
「何、ねーさん」



じっと青い後頭部を見つめていたら姉さんが不審そうに声をかけて来た。

「何してんの?」
「つむじ探し」
「・・・」
「あっうそうそ、冗談でーす」

ひょいっと振り返って軽く対応してみせれば、姉さんの眉がぎゅっと寄る。
心配してる・・・はないわよね・・・と呟いたのが聞こえた。うん、それはない。このまま三途の川渡ってくれるならそれもまたおkおkwwそしたら次期体操のお兄さんの座は頂いた。
え?資格?採用試験?なにそれおいしいの?まあ何であれ愛の前には敵いっこないですよねー。


でも、ここで息を吹き返したら、真っ先に確かめたいことがある。


それは―――・・・


げほ、とくぐもった咳の音が聞こえて急いで視線を戻せば、バカイトが俯せになったまま肩を揺らして咳をしていた。
おお、復活!なんというタフさ。

「うえぇ~・・・めーちゃん、死んじゃうから・・・らめぇ」
「らめぇ言うんじゃないわよ」

弱々しく咳込むバカイトに姉さんは容赦ない。でもバカイトは気にせずに再び命知らずな台詞を吐く。

「いいじゃん、めーちゃんの胸って気持ちいいしさあ」







・・・・ん?







えー、あー、それってつまり?








「・・・え、お兄ちゃんまさか、触ったこと・・・あるの?」
「うん事故っぽく見せかけてね、・・・って、あ」

「カイト――――――――――!!!」

「ぴゃああああああめーちゃんごめんなさいつい出来心でぇ!」
「おかしいおかしいとは思ってたけど、やっぱりあれは故意だったのね!?」
「やわらかかった・・・」
「この女の敵!生まれ変わって真っ当になりなさい!セクハラよセクハラ、セクシャル・ハラスメントっ!」
「やめて通報はやめてぇ、ミクにストーカーで訴えられたから前科持ちなんだよ!」
「あんたも前科持ちかぁっ!!」

そこまでじっと会話を聞いていて、俺は今まで自分の中に存在していた曖昧な気持ちがしっかりと形取られるのに気付いた。

これはもう、間違いない。


花瓶を引っつかんだ姉さんの手を押し止め、バカイトの前にジャンピング土下座する。本当はバック転なんだけど応用編で側転にアレンジした、俺の新☆ジャンピング土下座を見よ!

そして額を床にくっつけ、全力で叫ぶ。












「お兄さんと、呼ばせてくださいッ!!」













「・・・えーと?」

返って来たのは、呆れる程気の抜けた声だった。






「タフさ、思い入れ、そして度胸!何度姉さんに足蹴にされようとゴキの如く生き延びるその生命力を尊敬します!やっぱり芦ノ湖より年の功、『コン』の度合いでは貴方の方が上とお見受けしました!」
「レン、慣用句から考え方から、全てにおいて凄い勢いで間違ってるわよ」
「間違いなんてないから!合ってるから!えー、なので是非俺にもそのスキルを伝授してください!ねーさんに倒されてもすぐに立ち上がれるだけの実力が欲しいんです!」
「レンくんにはもうある気もするけどなぁ・・・」
「お願いします、バカイト兄さん!」
「「バカイトは固定なの・・・?」」

ねーさんとミクちゃんがなんか言ってるけど、ごめん無視!クオにばれませんように。つかバカイトもシスコンって名目でミクちゃんが大好きだけどクオも大概ミクちゃん中心主義だよな。その社会的評価の分かれ目って何処?やっぱりミクちゃんが嫌がってるかどうか?・・・なんだろーな。
あー世間って残酷。

でも俺はダイジョーブ。だって、現実が駄目なら脳内があるじゃん!主義ですから。

しばらく現実と脳内の誤差について考えていたけれど、バカイトが口を開いたので考察を詰めるところまで行かなかった。

「つまりめーちゃんにセクハラ紛いの事言えるようになりたい、ってこと?」
「いやそれはどうでもいいです」
「お兄ちゃんセクハラ紛いって自覚あったの?」
「カイト、もう私と連絡取らないでくれない?メールは全部スパムとして着拒にしとくから」
「ごめんなさいごめんなさいめーちゃんごめんなさい!でもミクがいればきっと生きていける!」
「家出て寮に住もうかなぁ」
「おにーちゃん許しませんよっ、寮なんて危険すぎる!ミクが僕を捨てて他の男に走ったりなんかしたら、僕、もう・・・!」

まあ実際はもう彼氏いるけどね。
バカイトに教えたら面白い気もするけれど、今は楽しむ時間じゃない。俺は俺のために、いや世界のまだ見ぬ子供達のために学ばなきゃいけないんだ!正に生涯学習。
あ、そうだ!

「ついでに子供達にどうしたら好かれやすいかも教えてください!」
「教えなくていいわよ、余計な知識は付けさせなくていいから」

すっぱり。
く、くう、なんで姉さんの言葉はこんなに切れ味がいいんだろう・・・謎だ・・・
見事に切られた衝撃に身悶えしていると、姉さんはそれを無視してミクちゃん達に向き直った。

「じゃあ結構引き止めちゃったし、ミクちゃんとバカイトは帰った方がいいかもね」

時計を見れば、どうやら一時間くらい経っていたらしい。まあ途中姉さんのせいで記憶が飛んでいるから短いように感じるのかもしれないけどねゆ

「え・・・あ、もうこんな時間!?そうですね、そろそろお暇させて頂きます。ほらお兄ちゃん、行くよ!」

はーい、と非常に大人しい返事でミクちゃんの後を付いていくバカイト兄さん。なるほど、可愛いものと怖いものには従え、基本とはいえしっかり身についている。さすが。

「こらレン、見送り行くわよ」
「はい、っと」

体のバネで起き上がって玄関に向かう。
見送りついでに隣の家の様子を見ておこう。さっきはバカイトへの怒りが先行してリンちゃんの様子が見られなかったから今度はちゃんとチェックしないと。

サンダルを突っかけて玄関までの距離を送る。正直この距離ならわざわざ歩かなくても良いんだけどさ、まあそれはご愛嬌って事で!

さてどうかな。

別れの挨拶なんてそっちのけにして、ひょいと門から外を見る。
―――電柱の影から白いリボンとワンピースが覗いていた。



ずきゅうぅぅぅぅん!



何、何あれ、何あの最強に可愛い存在!
今本気で胸を打ち抜かれた気分。本望ですリンたんハアハア
・・・はっ、いけない!俺を健気に待っていてくれたリンたんに愛の言葉をかけなければ!

「リンちゃん?どうしたの?」

まずは怯えないようにそっと声をかける。
ぴょこん、とリボンの先が揺れて、影からこの上なく可愛い顔がこちらを見上げて来た。

ていうか上目遣いとか上目遣いとかキター!いやいやいやちょとまてもちつけ俺。YESロリコン、NO暴走。世界ロリコン宣言(今採択した)全文に書かれている立派な思想だ。
そう、ロリコンとペドフェリアは違う・・・と思います。はい、俺定義としては違うったら違うんですー。


自制心を総動員してリンちゃんに微笑みかける。
リンちゃんはいつもと勝手が違うのかはにかんだかんじでにこりと笑う。かーわいいなぁ、もし人が多くて怖いなら他の人(ミクちゃん以外)駆逐するから是非言って!



リンちゃんははじめ怖ず怖ずと、その後元気に笑顔を見せた。後ろで姉さんやミクちゃんが可愛い可愛い言ってるのが聞こえる。ほら見れ、どうだ俺は嘘言ってない!

たっ、とリンちゃんの足が地面を蹴った。

あははおいでマイエンジェ~ル☆











「かいとおにいさんだぁー!」












―――――――――バカイト、消す。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

犯罪じゃないよ? 5

どう見ても犯罪ですね!ほんとうにry


・・・・自重?ええと、何語でしたっけ。造語?ですよねー!

閲覧数:1,475

投稿日:2009/12/03 13:51:08

文字数:3,383文字

カテゴリ:小説

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