13歳の誕生日

投稿日:2018/09/08 18:34:20 | 文字数:2,147文字 | 閲覧数:30 | カテゴリ:小説

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遊びで作ってみたSFチックな小説もどき。

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TEXT
 

「おやすみなさい。」
母・夏美のその言葉を最後に聞いて、朝日は眠りに就いた。
次に目を覚ますのは、100年後。

・・・

5055年。
ここは宇宙ステーションのとある国家の新開発研究地域内。国立 第88中学校 1年A(未)組では、歴史(宇宙開拓史)の授業で、ドキュメンタリービデオを見ていた。
このクラスの学級委員を務める朝日は、薄暗い空間の独特な緊張感で少し肩が張っていた。

(ビデオのナレーション)
「人類は、住めなくなってしまった星を去るため、国家毎に巨大な宇宙ステーションを建設し、大々的に宇宙空間へと移住することとなりました。
移住してから約1000年間は、突然の環境変化により生命の進化が間に合わず、多くの人々が犠牲になってしまいました。
3969年。
新人類DNA創世の父、通称 C 博士らによる研究は、人類の進化の速度を加速させるDNAの開発に成功し、この課題解決に貢献しました。
新DNAによる環境適応能力は、超躍的に向上しました。
…しかし、この開発を機に宇宙開拓史史上、最も恐ろしい大事件が発生するに至るのです。
他人の心境知覚によるコミュニケーションの断絶化。
超加速運動を原因とする衝突事故。
さらには、超越した心理学の応用による犯罪。
全国家における事件の数は絶えることなく続き、人類の歴史に大きな傷跡を残すこととなりました。
生き延びるために開発された新DNAは、突如として、大きな力を持つ武器となってしまったのです。
C 博士らは、全国家から負うにも負い切れない責任を課されましたが、新DNAについての欠点を自らが申し出ることによって免責されました。
それは、『細胞の活動が100年を過ぎるとそれ以上の進化ができなくなる』ということでした。
そして、今日の『一世紀睡眠法』が施行されるに至るのです。
次回の宇宙開拓史ドキュメンタリーでは、『一世紀睡眠法』について詳しく解説していきます。」

朝日を含め、1年A(未)組の生徒たちは、浮かない顔をしている。

「一世紀睡眠法
宇宙諸国家に生存する全ての人のうち、満13歳になる者は、満13歳となった日から起算して100年が経った日まで睡眠しなければならない。」

小学校の高学年になれば、誰でも知っているルール。
それは、とても悲しい。

・・・

「…ただいま」
「おかえり。」
帰宅してきた朝日を迎える母・夏美。ちょうど夕飯の支度中だ。
「今日、学校で『睡眠法』の話が出てきた…。」
「へぇ。そういえば、あんたも、もう少しで眠るだよね!」
「へぇ、って何その対応ッ!?もう会えなくなるんだよ!?」
「何怒ってんの?仕方ないでしょ。だから、残りの一緒に居られる時間を大切にするだけよ。」
楽天的な考えの夏美に呆れて、自分の部屋へ向かう朝日。
朝日は、避けられない別れに対しての悲しみや怒りを覚えてばかりであった。
朝日の言う通り、朝日が次の誕生日を迎えて13歳となれば、夏美と父にも、もう会えないだろう。
人は進化したと言っても、その寿命は総180年くらい。内、100年は法律によって睡眠をとらなければならないため、実質は80年となる。
夏美は今年32歳。どうあがいても、朝日が目覚める100年後には生き続けられない。
夏美もその別れについては十分知っている。
今日も台所のまな板に数滴の雫が落ちる。

・・・

「誕生日、おめでとう。朝日!」
「おめでとう!」
夏美と父との最後の食事。
「ごめんね。いつものおかずで。でも、この方が気楽で良いでしょ?」
「まっ、なんだ。元気でな!」
「お父さんってば、お別れの言葉は明日にしましょ!」
朝日のための1日早い誕生日パーティ。
部屋の飾り付けは夏美が全部やった。朝日の父は、プレゼントにと万年筆を用意していた。
「朝日の好きな鶏肉づくしだよ!やっぱり唐揚げが一番好きでしょ?」
明るい母と、少し明るい父がいても、朝日の箸は、あまり進まなかった。

・・・

新開発研究地域内 国立 第88睡眠所
「それじゃ、行ってきます。」
朝日はカプセルに横たわりながら、少し声を張ってそう呟いた。
「うん、元気でね。起きてから、毎日唐揚げばかり食べちゃダメだからね。」
「立派になれよ!」
夏美と父も、朝日に言葉を返す。
「お母さん、お父さん。今までありがとう。私、起きたら真っ先に2人のお墓に行くから!」
「ひどい!わからないよ?その時もまだ生きてるかも!シワシワで!」
狭い個室に響く笑い声。
「それじゃあね、朝日!」
「うん!」
笑い声はまだ重なる。それと同じく機械の起動の音が鳴る。
「お母さん、お父さん!ありがとう!」
「それはもう聞いたよ!ではではー」
手を振り合う夏美と朝日。
そして、小さく振る父。
閉まり始めるカプセルのカバー。
「おやすみなさい。」
カバーは閉まる。夏美は続ける。
「きっと運動不足になるでしょ。起きたら、思いっきり走りなさい。」
朝日にはわからない。けど、嬉しい言葉だと思って微笑んでいる。
「それまで…」
瞼を閉じる朝日。
「それま…で…。少し…だけ…」
目を閉じながらも、朝日はずっと笑顔だ。
「少しだけ待っていて。」

fin.

浜一世 / Issei Hama.

作曲と編曲を嗜みながら過ごす音フェチの蛇.

基本的に全て『打ち込み』の作風.

作曲(編曲)させて頂きましたリスト↓
https://www.nicovideo.jp/my/mylist/#/63243878

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