花びらが一枚落ちる
今 私何かをなくしたみたい
本を開く ページは目次
水を与えられない哀れな雑草みたい
陽(ひ)も肥(ひ)も何もかも断たれ
あるのは呼吸だけ
CO2を吸い込み
溜め息を吐き出した
春の温もりが包んでくれていた
夏至 冬至 180度回転
積もる雪が 秋の紅葉(こうよう)を消し去る
私を色付かせてくれるのは誰?
淡い水色絵の具を垂らし
白のチョークをかすらせた
真ん中を走って行くのは飛行機
彼は尻尾に消しゴムを括り付け
キャンパスに一線の消し跡を残した
平均台を歩くように
畳の縁をなぞるように
日も日も追い掛けた
速度の違う 不協和音
ドとシは CとH
フラットした歩調は
シャープには追い付けない
濃い橙はアクアを上塗り
チョークと消しゴムは
ほんのり染まる
広い宇宙を駆け回る彼は何処(いずこ)?
自ら網をかぶったの
柄(え)は短く切って
兜虫を見つめるあなたに持たせた
蝉は甲高い悲鳴を上げながら
籠にさえ入れてもらえず
7日間で死にました
水族館で泳ぐ魚群はとても綺麗で
一緒にクロール ガラスを触れた
出口のない水槽に人が入れば
エンゼルフィッシュに逃げ場はないの
捕まえようと尾鰭を擽ると
彼は途端に泡になり
人は私を物珍しそうに見ていました
尾鰭が付いたのは私の方で
海の外に 世界が広がる
ある日溺れた王子を救えば
声を失い マーメイドは泡沫
本を閉じる
花びらはとうとう全てが土に還りました
裸の雌しべを守るものは何もなく
彼女は灯(ひ)の火(ひ)に身投げをしました
ページが燃えて最終章
愛 という字から
心 がデリートされていた
コメント0
関連動画0
ご意見・ご感想