-静かな街(地面:タイル)-
ディー「こっちこっちー!」
アリス「どういうこと?」
ディー「アリス、帰りたい?」
アリス「帰る?」
ディー「そう! 帰る! 白兎は見つからないんでしょ? そんだけ探してもいないんだったら、帰っちゃえばいいじゃん!」
アリス「でも私は……どうして何も言わないの? ダム」
ダム「今なら、まだ間に合う」
アリス「間に合うって、何に」
ダム「裁判が始まったら、もう帰れなくなる」
アリス「いったい何の話を」
ディー「裁判の結果はぜーんぶ有罪! 帰れるうちに、帰った方がいい」
ダム「俺たちは忠告したはずだ。過度な好奇心はいずれ身を滅ぼす。大げさかもしれないが、本当に」
アリス「私は、白兎を……どうして、探していたんだっけ? あれ? あ、そんなことよりもダム」
ダム「そんなことって!」
アリス「はい、これ。帽子屋が渡せって」
ディー「手紙?」
アリス「多分、そうだと思うな」
【(あれば)封を開ける音】
ダム「違う、これは白兎からだ」
ディー「え、白兎? だって白兎は女王の」
ダム「白兎は女王のことが嫌いだ。アリスを有罪にしてしまうからな」
アリス「白兎? 手紙には何て書いてあるの?」
ダム「ゲームの、誘いだ」
アリス「どんなゲーム?」
ディー「カードキャッチゲーム」
アリス「カード……何?」
ダム「カードキャッチゲームだ。トランプゲームの一種で、簡単に言えば多くのカードを持っている者が勝つ」
ディー「帽子屋とチェシャ猫、白兎と女王、ダムとアリス。均等にわかれているね。表面上だけ。受けるの?」
ダム「受けるしか、ないだろうな」
ディー「そ。じゃあ気をつけて」
アリス「どこに行くの?」
ディー「帰るんだよ? だって僕には関係ないし。アリス、僕は忠告したはずだけどね」
ダム「三月兎の面倒でも見ていてやるといい」
ディー「えー、三月兎のテンションにはさすがの僕もついていけないなぁ」
アリス「ディー、行っちゃった。ねえ、ダム。ゲームってどんなことをするの?」
ダム「奪い合いだ」
アリス「奪い合いって、何を奪うの?」
ダム「人だ。帽子屋や白兎は、お前を奪いに来るだろうな。アリス、これだけは聞いておきたい」
アリス「うん?」
ダム「お前の名前は、アリスで合っているのか?」
アリス「皆、そう呼んでるじゃない」
ダム「……では、もう一つ。帰るんだな? お前は、俺を。俺たちを置いて、帰りたいんだな?」
アリス「帰れって言うのは、ダムたちでしょ? けど、白兎は見つからないし。帰りたいかな」
ダム「……そうか。それなら、行こう」
アリス「うん、わかった」
ダム「もう、遅いだろうがな」
<小さな声>
アリス「何か言った?」
ダム「ああ、帰したくない」
<小さな声>
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