オリジナルのマスターに力を入れすぎた結果、なんとコラボ(2人)でお互いのマスターのお話を書けることになりました!
コラボ相手は、カッコいい素敵なお姉さんの生みの親、つんばるさんです!
上記の通り、私とつんばるさんのオリジナルキャラ(マスター)が登場します……というか、マスター(♂)×マスター(♀)です。
そして、ところによりカイメイ風味ですので、苦手な方は注意してください。

おk! という方は……。

(つ´ω`)<ゆっくりしていってね!>(・ω・春)




*****



守りたい……そう告げて気が抜けてしまったのだろうか。
僅かに残っていた右腕の力が抜けていくのがわかった。かろうじてアキラの腕に引っかかっていた指が外れて、落ちる。
しっかりしろと、自分に言い聞かせるも、どんどん視界がぼやけて歪んで暗くなっていく。
傍らにいたアキラの気配が遠ざかっても、引き留める気力も体力もなかった。が、それからすぐ、口元に何かをあてがわれる。
がさり、という音がしたから……ビニール袋、だろうか。


「ゆっくり息して、だいじょうぶだから……!」


降ってくる声とともに、扉とは違う、温かい何かの感触。
アキラが俺の体を支えてくれているらしい。袋をあてがうくらい自分でやりたかったが、痺れは増してくる一方で、彼女の腕に触れるのがやっとだった。
……いや、痺れだけじゃない。これは安堵だ。
ちゃんと俺の真意が伝わったかはわからない、けれど、彼女に俺の言葉を切り捨てる気はないらしい。そう思えた途端に、安堵したとともに、どっと疲れが押し寄せてきた。
ぐにゃぐにゃした視界が気持ち悪くて、温かい腕が心地よくて、目を閉じる。
……そういえば、前にもあったな。
誰かの腕の中、安堵と疲労で、意識を手放してしまった事が……。




―Grasp―
悠編 第十三話




遠くから、話し声が聞こえる。
やっとの思いで重い瞼を持ち上げると、白い天井が見えた。見覚えがあったが……俺の自宅でないのは確かだ。
まだ体がだるいが、それを無視して上体を起こす。
頭がぐらぐらする……まだ覚醒しきっていないんだな、と、頭のどこか落ち着いた部分が判断した。


「起きた?」

「ああ、起きた……」


声をかけられて、反射的にそう返したが、がしがしと頭を掻いて、ふと気が付いた。
そうだ、確か俺は、過呼吸の発作を起こして、そして……!


「って、どうやって運んだ!?」


我に返って、先ほどの声の主に問う。
確か俺は、アキラの家の玄関先で倒れて……その先は覚えていない。
今、俺がいるこの空間は、俺の記憶が確かなら、アキラの部屋だ。彼女の部屋で、布団に寝かされていたなんて……。
アキラが1人で、俺をここまで連れてきてくれたなら、感謝すべきなのかもしれないが、信じられない。いや、あまり信じたくない。


「どうもなにも。担ぐしかないでしょうが」

「担ぐって……!」

「正確には、担げなかったから引きずって。意外と重いんだね、悠サン」


現実は甘くなかった。
なんてことだ。


「お、俺って……」

「なんだい、女の子に担がれたくらいで、そんなに落ち込まなくてもいいじゃないか」

「そうじゃなくてだな……」


呆れた様子のアキラに、否定の言葉を吐き出して、思わず溜め息が出た。
これだけは避けたかったのに……アキラの前で、こんな弱みをさらけ出す事になるなんて……。


「過呼吸のことを気にしているのかい」


俺の考えを見透かしたような、気遣うような穏やかな声が耳に届く。
気にしなくていい、そういう意味も含まれているのだろうが……すまん、アキラ。お前にあんなところを見られただけでも、俺にはショックが大きすぎる。


「ホント、俺、ダメだな……」

「それ、いつかも言っていたね。でも、悠サンは、悠サンが考えてるほどだめなやつじゃないと思うよ」


いつか? いつかって、いつだ。
頭の片隅に、飲みすぎて潰れた夏の日の光景が浮かびかけたが、振り払う。
あれは夢だ、そういう事にしといてくれ。今、これ以上の打撃を受けたら、俺は耐えられない。
……そうだよ、アキラ。お前はそう言うけどな、これしきの事にも参ってしまうほどには、俺はダメな奴、なんだよ。


「……お前が知らないだけだ。俺がどれだけしょうもない男か」

「しょうもないってねぇ……」


思わず出てしまった、というような呆れ声に応える余裕もなく、俺は言葉を続けていた。
まるで、どうでもいい世間話でもするみたいだと、他人事のように思っていた。


「女って上手いこと生きていくよな」

「……どういう意味だい」

「自分の言葉が相手にどう影響を与えるか、考え尽くした上で、自分のペースで話を進める」


例えるならば網目のような世の中の面倒事に、なるべく絡まらないような道を自分なりに選んで、すいすいと抜けていく。
それをできる女ってやつは、とても器用で、賢くて、やろうと思っても俺には真似できないだろうな、と思う。


「その場が上手くまとまるように、思ってもいない事を、平気な顔で吐いて……腹の中で考えている事は、ずっと溜め込んでる」


溜め込んでいるうちに、その思いはどんどん澱んでねじ曲がってきてしまうのだろう。だから、きっとあんな……
……こんな事をアキラに言ってどうする。余計に幻滅させるだけだろう。
そう思うのだが、次から次へと、勝手に呟きがこぼれていく。
一度できたほころびは、どんどん大きくなる一方だった。


「俺が知ってる女は、本当の思いを、俺には絶対に見せようとしてくれなかった。あいつは、俺も自分と同じなんだと思ってたんだろうな……俺が思い切って伝えた事も、本気だとわかってもらえなかった」


あの日に、空っぽの教室であいつが吐き出した言葉、あれは、本心ではなかったのだろう。
本当に"死ねばいい"と思っていたら、俺の発作にもあそこまで動揺しなかったはずだ。
それでも。


「……怖いんだ。本当は何を考えているか……腹の底が読めない、そんな女が怖い。アキラに会ってやっと、怖くない、大丈夫だって思えるようになったのに……」


乾いた、自嘲の笑みが、口元に浮かぶ。
本音を押し込めているのは、俺も同じなんだ。本気でぶつかっているつもりでいて、内心で怯えているのを、必死で隠していた。
かっこつけたいとか、それ以前に、そうやって好きな女にすら怯えているのを、悟られたくなかった。だから、アキラの前で倒れる事だけは、嫌だったのに……。


「結局、これだもんなぁ……情けなくて涙も出ねえよ」


捨てるくらいなら好きと言わないでくれ。お前はそう言ったな。
俺も同じだよ。
もう捨てられたくなんかない。どうせ捨てられるくらいなら……苦しむ事になるくらいならいっそ、俺に構わないでいてくれた方がマシだ。
自分のその考えに、俺は顔を上げられないまま、唇を噛みしめた。


「……悠サン」


俺の名を呼ぶ声は、落ち着いていたが、俺の体は余計に強ばってしまって、アキラの顔を見る事もできなかった。


「それが本心かい? じゃあ、さっきのあれは、そんなきもちで言ったことばだったのかい?」


静かな声に、俺は思わず顔を上げる。
突き放された気がして。
結局本気じゃなかったのか。そう言われた、気がして……。


「私のことを、心根からものをいわない人間だと、そう思っていたの?」


淡々と告げられるうちに、俺は、目の前が暗くなっていくような、そんな錯覚を覚えた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

【オリジナルマスター】 ―Grasp― 第十三話 【悠編】

実は前からこっそりそういう事を考えていたんですが、なんとコラボで書ける事になってしまった。
コラボ相手の方とそのオリキャラさんが素敵すぎて、緊張しております……!



わっふー! どうも、桜宮です。
悠さん、自分が情けなくなって落ち込む、の巻。
どうもこの人はいったん鬱期に入るとどんどん落ち込んでいくようです。
あいつ、というのが誰かよくわからない方は、Dropを読み返していただくと納得していただけるかと。
ほとんど無意識に、アキラさんと彼女とを重ねてしまっていて、悩んでるみたいですね。

書くのに結構時間をかけましたねー、お互いにいろいろと思考を巡らせた回でした。
やっぱり、アキラさんのことはつんさんが一番よくわかってらっしゃいますね、当たり前のことなんですけど。


アキラ編では、悠さんが寝てる間の出来事も書かれてます、そちらもぜひ!



東雲晶さんの生みの親で、アキラ編を担当しているつんばるさんのページはこちらです。
http://piapro.jp/thmbal

閲覧数:390

投稿日:2010/01/06 13:16:48

文字数:3,126文字

カテゴリ:小説

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