ボーッとした頭のまま数人のスタッフに連れられ別室に通された。会議室だろうか?シンプルなテーブルに椅子がきちんと並んでいた。と、反対側のドアから銀髪の男が現れた。驚きから思わず立ち上がった。
「あんた…!俺を撃った奴!」
「ああ、体調はどうだ?」
「どうって…!」
思わず隣に居る芽結を見た。きょとんと見上げる目にまたカッと熱が上がる。
「丸一日位で効果切れるから青春の思い出だと思って楽しんどけ。」
「無茶言うな!大体あんたと言い何なんだよ?!此処は何処だ?!いきなり撃つとか
犯罪だろ?!」
「まぁ、落ち着いて聞けって、ちゃんと説明するから。そこ座って。」
言いたい事は色々とあったが拉致が開かなそうでもあったので渋々座った。さっきまでは気付かなかったがドアの入口に所謂SPらしきガタイの良い男が二人立っていた。立ち位置と視線からこの銀髪男が護衛対象だろう。つまりコイツはそれなりに立場がある人間って事か?いずれにしろあの二人を相手にしてまで今逃げるメリットは無さそうだな…。少し目を伏せて今までの事を思い出しながら頭の中で整理する。細かく、刻む様に、どんな些細な事も…。
「落ち着いたかな?さて、何から聞きたい?」
「此処は何処なんだ?それとアンタは?何か偉い人みたいだけど。」
「此処は研究施設【Wieland】俺はここの所長の闇月幾徒。幾徒で良いよ。」
「あの銃は一体何だ?何で撃たれても生きてるんだよ?」
「うん、それが本題だろうね。」
立ち上がると銀髪男…幾徒は胸ポケットからマジックを取り出し手に持って言った。
「これ何に見える?」
「マジック…ですよね?」
「そう。何故マジックが此処に在るか。勿論誰かが作って、誰かが買って、封を開けて
此処に置いた。なんて説明じゃなくて…『どうしてこれはマジックとしてここに
存在するのか』と考えてみてくれ。」
「…ん?」
「君や周りの人間が目で見て、時には手に取って、字を書いて、それで初めてこれは
マジックだと『認識』される。他の物も同じだ。視覚、触覚、聴覚、嗅覚、味覚、
あらゆる感覚で確かめた上で『存在』を『認識』『許可』されてるからここにある。
例えば…液状で、冷たくて、水音がして…喉が潤う物は『水』だろう?」
「ええ、まぁ…。」
「それらの情報は元を辿れば全て脳への電気信号で管理される。」
例の青白い銃を手に持ち、今度は銃口を天井へ向けた。
「もしこの信号を自在に扱う事が出来たとしたら…脳だけではなく、物体、空間、
時間、動き、感情…。」
「―っ!」
「―全て意のままだ。」
不敵な笑みに思わず立ち上がった。何故だか判らない不安が急に込み上げた。存在?認識?何なんだよ?!意味判んねぇよ!そんなもんで俺の事撃ったのか?!記憶の無い間俺は一体何をしたんだ?俺の感情を道具みたいに扱ったのか?
「帰る…。」
「ま、待って!話を…!」
「触るな!」
「ひっ…!」
「…最低だな…お前。」
許せなかった。
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