ブースの売り場には、リンちゃん目当てに行列ができている。

リンちゃんは、テキパキと商品をレジ打ちしたり、にっこりと手渡したり。
ときには、握手などもして、サービス満点だ。

「ねえ、れおんさん。ダメでしょ、大事な彼女にあんなことさせて」
ルカさんは、ブースの横からその光景を眺め、ちょっと口をとがらせる。
「うーん、まあ、でも、皆サン大喜びですし、ネー」
れおんさんは、許しを請うように言った。

「実は、コンナこともあろうかと、チョット、リンちゃんと打合せしてたんデスヨ」
彼の言葉に、ルカさんは目を見張った。
「え?打ち合わせ?何を?」

「エエ。この間、彼女がうちのハミングスのお店に、この新製品の打合せで、来ましてネ」
れおんさんは、いたずらっぽく言った。
「その時に、カンタンなレジ打ちとPOSのやり方と、いくつかの商品の値段とかを、教えておいたんです」

ルカさんは、あきれて言った。
「ほとんど、確信犯ね。れおんさん。でもね、リンちゃん自身は、売り物じゃないのよ」

「ワカッテマース。そんなに長くは、サセマセン」
れおんさんは、片目をつぶった。


●そこだけ時が止まっている?

そんなやりとりを尻目に…。
ブースの周りの人だかりの中で、じっとそのリンちゃんを見つめる女の人。
白衣を着た女性は、ちょっと変わった雰囲気をまとっている。

その横にいる駿河ちゃんは、さりげなくその人を観察した。
「この人、ホントの女医さんなのかな?」
そう思えるほど、その人のムードは、ユニークだった。

それにしても…
彼女が、ブースにいるリンちゃんに注ぐまなざしは、ただ見つめているだけではない。
なんだか“魅入っている”という感じだった。

ざわざわとした雰囲気の会場の中で、そこだけ時が止まっているような。
そんな感じに、駿河ちゃんはちょっと怖さを覚えた。
そこで。
“リンちゃん、可愛いですよね”
そんな差しさわりのない言葉を、彼女にかけようかと思った。
が、なぜか、できなかった。


●今日は、満月だし

そんな彼女の考えを、知ってか知らずか。
ふと、白衣のその彼女がつぶやいたのだ。独り言のように。
「…いいわねえ、あの娘」

おや、と思い、駿河ちゃんは耳をそばだてた。

「この前は、赤毛の女の子のドールも面白いと思ったけど、こちらの娘…」
彼女は、遠くを見るような目つきで、リンちゃんを見つめて言った。
「ツクヨミさまに、お伺いたててみましょうか。ちょうどいいわ。今日は、満月の日だし」

それを聞いて、駿河ちゃんは思った。
「はぁ?何言ってんのこの人。アタマ、オカシイノカナ?」o(´^`)o

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

玩具屋カイくんの販売日誌(232) リンちゃんに魅入る人

チャッカリ者の、れおんさんの作戦は、功を奏しているようですけれど。

閲覧数:67

投稿日:2014/03/30 19:43:00

文字数:1,108文字

カテゴリ:小説

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  • enarin

    enarin

    ご意見・ご感想

    続き、行きますね♪

    時間限定の売り子で安心です。それとれおんさん、したたか!

    さて、この不思議な白衣の女性、”オサカモト ミウ”さん、名前は、ボカロのMewさん=サカモトミウさんですね。最近TVに”猫吸い”と”動物関連の活動”で出てました。それと教授ですね。

    そして”ツクヨミ”ネタは、知っているなら”あの怪しい企業”の事である事がわかりますね、ツクヨミ=月関連の存在。

    しかし、まるで”神様へのお伺いを立てる”みたいな”業務連絡”の仕方、ますます、怪しい企業!? しかも、イベントに”たぶん制服の”白衣”~♪

    ではでは~♪

    2015/01/08 11:13:57

    • tamaonion

      tamaonion

      enarinさん、メッセージありがとうございます!

      >”猫吸い”と”動物関連の活動”で出てました。それと教授ですね。

      猫吸い、恥かしながら初めて聞きます。あとでググってみます。
      面白い言葉ですね。

      そういえば、教授は娘の名をなぜ、美雨にしたんでしょうね??
      猫好き? ミュージックかもしれないですね。

      アンルイスさんと、桑名正博さんの子が美勇士で、みゅーじくん=MUSIC というのは知ってますが。こちらは元祖・キラキラネーム、DQNネームでしょうか?

      また、感想を聞かせてください!
      それでは、また。

      2015/01/12 23:50:52

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