かつて魔法の都と呼ばれた地は、遺跡と化していました。
その地は大陸の中央に位置し、どの国からも干渉されることなく存在しています。

昔、その地を巡って今も語り継がれる大戦が繰り広げられていました。
戦が終結した後に、国々は中央の遺跡を不可侵と決め、条約をたてました。
そうして、その地はどの国からも干渉されることなく存在しているのです。













「ここが魔法の都のあったところ―…?」
西の国を出発した翌日、三人は遺跡にたどり着きました。
高度な文明が発達していたであろう都の跡地は、長い年月雨風に曝されていたことにより大分風化していました。

「そう、ここが魔法の都の跡地。今人は棲んでいないと言われているよ」
「寂しいところですね…」
時折動物が通りすぎるだけで、しんと静まり返った寂しい野原のようです。

『遺跡には願いを叶えて貰いに沢山の人が訪れるようですが、叶えて貰えたのはほんの一握りだそうです』
魔法使いは必ずしも全ての願いを叶えてくれるわけではない…遺跡に訪れる前に尋ねた村で、村人はそう言いました。
姫君は少し落ち込みましたが、気を取り直し遺跡にたどり着きました。


姉である女帝のこと、金糸雀のこと…姫君はそっと瞼を閉じて願いました。
『魔法使いさん、どうか私の願いがあなたに届きますように…』
一時間程続けた頃…姫君の足元から、薄紫の煙が少しずつ立ち上りはじめました。
姫君が驚いて立ち上がると、一瞬のうちに白い布に包まれました。

「私を呼ぶ声は君の声かな?煩いよ…」
長いローブを纏った紫色の髪の男性が煙の中から姿を表しました。
姫君はその男性のローブにすっぽりと包まれています。

「ご、ごめんなさい。あなたが…魔法使いさん?」
姫君は目を白黒させながら訊ねました。
「まあ、人からはそう呼ばれているようだね」
男性は気だるげな顔でそう応えました。

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  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

うたものがたり ~魔法の都と紫の魔法使い①~

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投稿日:2011/05/08 15:35:19

文字数:798文字

カテゴリ:小説

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