いつも歩く通学路。
よく晴れて、暑くなってきた通学路。
隣に居る美少年。
私の〝友達〟・・・？


レンは、私の何？


グミに言われて生じた、この疑問。


今日こそ、絶対に確かめる―――




＊



・・・だけど。

「ごめんっ今日委員会あるから教室で待ってて！」

授業が終わり、みんな帰っていく。
しかし今日は月のはじめ。
月のはじめといえば、委員会の日でした・・・・

「えー…さき帰っていい？」

「きょっ今日は話があるからぁ・・・待ってて！ゴメン！」

もう・・・どうして私ってこうなの？



＊



「もぅ！話し長いんだよクソババァっ」

今月の目標だった「廊下を走らない」をガン無視して3階に上がる。


教室の窓には人影が二つ。
最初は、グミかグミヤとでもいるのかな？と思ったけど。


映ってる影は、レンの影と、長い髪をサイドテールにした・・・・


「ネル・・・・・ちゃん・・・・・」


声に出したつもりだったのに、かすれて出てこない。
何を動揺してるの、喋ってるだけじゃない・・・


でも、入ってはいけない気がして、ドアの後ろから二人を盗み見た。

蒸し暑い初夏の香りが、今は冬のように感じられた。
寂しそうに一本立つ木の葉が揺れる。
太陽を黒い雲が隠す。


「あたし、レン君が好きだから」


窓に映った二つの影が重なった・・・


教室の中を覗くと、






影でなく、唇を重ねていた。







周りの温度が急激に下がった。


黒い雲のせいで暗くなった廊下。


目から溢れ出すたくさんの雫。


震える膝。



後ろでレンが何か言ったけど、聞く気にならなかった。


嫌、嫌、いや、イヤ・・・・



私は逃げた。


レンから、ネルちゃんから、


自分の気持ちから。




「っリン！」




後ろから追ってくる声に、私は返した。




「うそつき！」





後悔と一緒に、悲しみや嫌悪が入り混じってごちゃごちゃになった。





私は、レンの何でもなかったんだ・・・






＊






日が長くなったとはいえ、もう暗くなった公園。
街灯に虫が飛び込んでジジジっと不気味な音がする。


「どうしたの？」


ひとり座るベンチの横に来た、20代前半の知らない男の人。


「あなたは・・・？」


「とにかく、話を聞くよ。歩きながらで大丈夫？」



慰めてくれるなら、誰でも良かった。



だから取った。


差し伸べられたその手を、迷いも無く。