【中世風小説】Papillon 9

投稿日:2010/02/06 14:34:25 | 文字数:2,714文字 | 閲覧数:212 | カテゴリ:小説

ライセンス:

あと五話で幼少期編終了です。
とはいえ、幼少期以降の話は、オリジナルでは主人公が19歳になるので、リンレンではかなりきつい……。ってことで、今のところはそれ以降の連載の予定はありません。
親世代の話もあるんだけど、UTAUのキャラだからピアプロでは連載出来ない……。

前のページへ
1
/1
次のページへ
TEXT
 

「一緒に、逃げよう」

 ……その言葉の意味が、俺には分からなかった。
 いや、本当は、分からないはずがなかった。
 それはずっと、俺が考え続けていた言葉。口にする勇気もないまま、いつか言おうと心に決めていた言葉。
 でも、それはもう、無理だ。

「あたしがレンの右手になる。二人でなら、どこでだって生きていけるよ。大丈夫だよ」

 この場所が失われても、愛するすべてが消えうせても、リンとだけは永遠に一緒だと思っていた。彼女さえいれば、大丈夫だと思っていた。
 でも、それはもう、昔のこと。

 頼むから、口にしないでくれ。もう、そんなことは出来ないんだ。

 そう思うのに、俺はリンの言葉を止めることも出来なかった。
 ……本当は、それは俺が、リンに言ってほしかったコト。
 俺となら大丈夫だって、その言葉が、どれだけ嬉しくて、残酷か。きっとリンには、分からない。

「あたしは、この場所が好きだよ。お姉ちゃんたちが好きだよ。お父様も、何故だかあたしたちには冷たいけど、でもやっぱり好きだよ。……でも、これ以上は見てられないよ。皆が傷ついていくの、黙って見てるのは嫌だよ」

 皆が、なんて、なんでリンはそんなことを言うんだろう。自分も傷ついているのに、そのことにすら気付かないなんて、どこまでお人好しなんだろう。

「ねぇ……二人で、逃げよう」

 ――この場所を、嫌いになってしまう前に。この場所に、殺されてしまう前に。

「リン……」

 俺は、姉の母親に命を狙われて、この場所に見殺しにされて、皆に哀れまれて死んでいくのだろうか。そう、何度も考えた。考えるたびに、どうしようもない闇に包まれていくのを感じた。
 いつからか、あがくことすら無意味に思えた。俺はもう、半分諦めていた。
 でも、どんなときも、リンがいた。
 リンとだけは、永遠に一緒にいたかった。ずっとそばにいたかった。そう、口にしてもいいのだろうか。リンも同じ気持ちでいてくれていると、うぬぼれてもいいのだろうか。

「……リン、それは、」

 俺は、リンの肩に頭をのせて、彼女を後ろに押し返した。左手で体重を支えている今、彼女の肩を掴むことすら出来ない。

「だめだ」

 自分の言葉で、世界が壊れた気がした。
 泣きそうな顔をしている彼女が、目に映る。自分がそうさせているのに、どうすることも出来ない。優しい言葉ならいくらでも思いつくのに、それを口に出すことも出来ない、意地っ張りな自分。

「大丈夫だなんて、簡単に言うなよ。俺たちは、所詮無力な子どもなんだよ。なんでもある恵まれた場所で、第一王子なんて肩書きももらって、それでもこんなザマの俺が、どうして他の場所で生きていけるんだよ」

 俺はもう、自分の命なんて諦めてる。リンは、まだ諦めていないのだろうか。どうして?

「レン」

「お前だってそうだろ。二対二で、こういうことになったんじゃないのか。たった二人で、世界も敵にまわせるっていうのか?」

 なぁ、リン。俺だって、二人なら何でも出来る気がしてたんだよ。そのために、この三年間、生きてきたんだ。せめて、君が笑える世界を残せるように。
 そのために俺が生きている必要があるのなら、君のためなら、ずっと君の隣で生きていける気がした。
 ……でも、今はもう、そんな風には思えない。

「もう少し、現実を見ろよ」

 俺の右手になる? ふざけるなよ、女の細腕で何の代わりになるんだよ。リンの重荷になるくらいなら、死んだ方がマシだよ。
 ……どうして、分からないんだよ。

「……レンの馬鹿」

 リンは、泣きながら、俺を睨みつけた。その瞳が、痛い。
 なんでだろう、昔はいくら喧嘩したって何も怖くなかったのに。殴り合って、泣きじゃくって、それでもそんなもの、どうでもいいと思えた。傷も痛みも涙も、愛おしくさえ思えた。
 今は違う。
 リンの涙も、俺の傷も、ただただ、痛くて苦しいだけ。

「勝手に諦めないでよ! あたしはレンがいなきゃ嫌だよ! ただそれだけなのに、なんで分かんないの、馬鹿っ!」

 リンは、癇癪をおこした子どものようにわめきながら、俺の胸を殴る。そのたびにわき腹に信じられないほどの激痛が走った。でも、きっとそんなの、リンの痛みに比べればマシだと思う。

 俺だって、リンが言いたいことが分からないわけじゃない。俺だって、逆の立場だったら、もっと足掻いていたと思う。リンを死なせるくらいなら、世界を敵に回しても恐くなかったと思う。
 でも現実に、俺は俺の立場でしかない。リンを危険にさらすくらいなら、俺の命なんてくれてやる。
 あの日、リンの部屋で、騎士に組み敷かれているリンを見た瞬間、血の気が引いた。もう二度と、あんな思いはしたくない。
 たとえ、リンが俺の血を見て、俺よりもずっとつらい思いをしたのだとしても。

「あたしたち、ずっと一緒だったじゃない! なんでこんな馬鹿げた争いなんかで、あんたを失わなきゃいけないのよ! 別にルカ姉もあんたも、争いたいなんて思ってないのに! こんなの馬鹿げてるよ、おかしいよ!」

「あぁ、おかしいよ。でも、これが現実だよ」

「なんでそんなこと言うの! もっと抗ってよ、あたしのために生き抜いてみせてよ、死にたくないって言ってよ!」

 あぁ、死にたくなんてないよ。もっとずっと、君を見ていたいよ。本当は、ずっとずっとこの場所で、昔みたいに温かく、四人姉弟で笑っていたかったよ。
 でももう、いくら想像しても、俺のいる未来には君がいないんだ。

「あたし一人で生き残ったって意味ないよ! あんたがいなきゃ、この場所もこの世界も、全部全部意味ないよ!」

 なぁ、なんでだろう。君が俺のために泣いてくれるのが、嬉しくて仕方ないんだ。きっと、俺が死んでも泣いてくれるんだろうって……そううぬぼれてもいいんだって、思える。
 それを口にしたら、君はもっと泣くのかな。

「ねぇ……お願い」

 リンは、俺に、どんな言葉を言ってほしいんだろう。分かるのに、分からない。
 震える右手で、泣きじゃくる彼女を抱きしめた。その温もりを、俺はまだ感じられる。死にかけたけれど、まだ生きている。そのことが、こんなにも嬉しいのに……どうして、死ななきゃいけないんだろう。
 分からない。この運命が悔しい。俺はまだ生きていたい。……生きていたい。

 きっと、そう思ってしまったことが、俺の最大の罪だったのだと思う。
 今回のことは、これまでの毒なんかとはレベルが違う。次はないと、分かっていたのに。

とりあえずいろんなことに手を出しまくってる鏡音廃です。巡音も買ったようです。

マイリス→http://www.nicovideo.jp/mylist/18736642

オリジナル曲の二次創作・派生作品等は、ボカロやPIAPROの規約の範囲内でご自由にどうぞー。

小説の更新が滞ってますが、プロットはちゃんと出来てますよ><

http://hozue.blog-fps.com/

http://sns.cv02.net/?m=pc&a=page_f_home&target_c_member_id=2229
http://v-nyappon.net/?m=pc&a=page_f_home&target_c_member_id=12234

-----

2010/2/17 追記
HNを秋穂(あきほ)から穂末(ほずえ)に変更しました!

2010/7/18 追記
ニコ公開三曲目となる「水鏡プリテンス」で、P名を頂いてしまいました(ありがとうございますっ)。

-----

一応、お仕事やコラボのことに関して書いておきますね。以下の文章は、状況によってコロコロ変わります。

現在、曲・絵の新規依頼は受け付けておりません。交流のある方(複数回のメッセージ交換が目安)からの依頼ならば検討しますのでご一報お願いします。
作詞ならば依頼を受け付けられますが、依頼理由はきちんとお書きください。

一つの作品を仕上げるまで根気強く手伝ってくださる(ここ重要)絵師さん、動画師さんは常に募集しています。
また、作品ごとにイラスト募集を(突発的・〆切あり)することがあります。

コラボはお互いに本気じゃないと自然消滅するだけですので、やるなら本気でやりましょう。一報したうえでの延期・降板は受け付けますので。

もっと見る

作品へのコメント0

ピアプロにログインして作品にコメントをしましょう!

新規登録|ログイン

オススメ作品10/21

もっと見る

▲TOP