僕がどんなに必死に叫んでも。
君にはこの声が届かない。


音の無いセカイに、君は一人。
どうすれば君を、孤独の無いセカイに連れ戻せるだろうか…
















<<【がくルカ】この声が届くまで【音を失った少女に】>>















「おはよー神威くん。」
「あ、巡音さんおはよう。」




僕と君は幼馴染だ。
仲が良いし、家も近い。


君といると、なんだかもっと喋っていたくなる。
君との時間が、楽しいんだ。



学校のチャイム。テレビやラジオの音声。
いろいろな人と話し、いろいろな場所で歌って。
誰かが転び、痛いと泣く。
発表会などで聞こえる歓喜の声や拍手。

それら全てに共通するものは、‘音’
音が聞こえるということは、とても素晴らしいことだ。


だから、音を失うなんてことは予測しなかった。
君も僕も。


君は、病気で耳が聞こえなくなった。
君は、歌うのが好きだったよね。僕も、君の歌が好きだった。
君は、歌を奪われた。



君は一人になった。
聞こえないから、誰とも話せない。何も聞こえない。
小学校を卒業する前の出来事だった。


































君と同じ中学に入った。
君は最初、皆から冷たい視線で見られるようになった。
でも事情を理解すると、皆は君に優しい言葉をかけた。
でも君はそれがわからず、孤独と思っていた。


やがて君の両親も他界した。
君の病気も悪化し、学校に行けなくなった。
凍えるように寒い冬のことだった。






僕は君を助けたかった。
孤独なセカイに一人ぼっちの君に、接し続けた。


僕は無力な人間だ。
ただ君に、声を届けることすらできないのだから。






ある日、君が珍しく口を開いた。


「どうして私に優しくするの?」



君は、自分の声すらも聞こえない。
僕は君の手を握り、ただ頷いた。



「君を、助けたいんだ」



僕はそう言ったが、君には何も聞こえない。
きっと、僕のこの気持ちもわからない。


でも、僕のこの声が、君に届くまで。
この想いが、君に伝わるまで。
僕は、叫び続けるよ。



小さい頃から一緒に居て、君への気持ちは、ずっと気づいてた。
伝えれるときは、来るのだろうか。




孤独っていうのは、どんなことよりも辛いことだ。
君の手は、震えている。


君の命は、もうすぐ尽きる。
君は、とうとう居なくなってしまうのか?


僕は、君を抱きしめた。
君の鼓動は、遅くなっていく。
命の終わりが、近づいている。



「どうして、僕を置いて逝ってしまうんだ…
 どうせなら、僕も連れて行ってよ…」


僕は涙を流しながら、言う。
この声が君に届いていないことぐらいわかっているよ。
でも、想いは届いてほしい。

君の鼓動と温もりが伝わってくる。
もう、終わってしまう。


「…っ」


その時。



「…~しい歌を…歌っていてね…」



君は、ポツリと歌いだした。
この歌は…



「孤独なセカイに…包まれても…
 ずっと側に居るよ…忘れないでね…」



君の声が小さくなっていく。




「あなたはずっと…」




君の声は、そこで途切れた。
僕は泣いた。
涙が一滴、君の頬に落ちた。



『独りじゃないよ…』






























翌日、学校に行くと、巡音さんの机には、花が飾られていた。


「…巡音さん、本当に死んじゃうなんて」
「でも、やっとやっかいな人が居なくなったじゃん」
「それは言っちゃダメでしょ。」
「何よ、私が本当にあの子のこと心配してると思ったの?」
「いや、思ってないけど」
「ほぅら」


あちこちから聞こえる、非難の声。
巡音さん。君は独りだったんだね。


君を非難する声に耐えられず、教室を出た。



階段を駆け上りながら思う。



きっと僕も孤独だった。
君を失った僕は、もう生きる意味が無い。
そしてこの世界は、君を拒んだ。
こんなところにもう居られない。



そして、屋上にたどり着いた。



ここにもう、君は居ない。
僕が生きている意味を持たない。



僕は屋上から街を見下ろす。
高い。でも、なんてつまらない世界なんだろう。


僕は手首を切り、飛び降りた。
ここは十分高いから、落ちたら無事ではすまない。


降り積もる白い雪が、僕の血で赤く染まる。




もしも願いが叶うならば…
生まれ変わったらもう一度、君と話したい。

音のある世界で、もう一度…





凍えるように寒い冬の街。
また一つ、希望が失われる音がした。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【がくルカ】この声が届くまで【音を失った少女に】

「君に声を届けたい」
【CASE2 : 神威 学】

実はひとしずくP様の曲、
「soundless voice」と「proof of life」の自己解釈が少し入ってます。
オリジナル要素もありますけど。

閲覧数:1,673

投稿日:2016/06/02 18:42:59

文字数:1,958文字

カテゴリ:小説

  • コメント2

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  • りょう

    りょう

    ご意見・ご感想

    うまく感想いえないけど泣きました…
    ありがとうございます!!!!!!

    2012/01/31 10:07:52

    • ゆるりー

      ゆるりー

      はじめまして、メッセージありがとうございます。

      え?な、泣いた!?ありがとうございます。
      今見ると凄いgdgd…orz

      こちらこそありがとうございます!!!!!!
      そしてブクマ感謝です!!!!!!!

      2012/01/31 17:44:22

  • 姉音香凛

    姉音香凛

    ご意見・ご感想

    なにこれやべぇ...(´;ω;`)ブワッ

    ルカの『独りじゃないよ…』のとこで鳥肌がこう、ぶわあああああっと・・・。

    「soundless voice」いいですよねぇ・・・感動モノです・・・(ノ_・。)

    ブクマもらいますね (*。・ω・)ノシ

    2011/10/27 16:27:04

    • ゆるりー

      ゆるりー

      ほんとに書いててやばいと思いました。
      何がやばいって、更新速度が←

      と、鳥肌!?
      私の文章で鳥肌は無いよね、鳥肌は本家様だよね←

      そうですね、最初に聞いたとき泣きました。

      ブクマ&メッセありがとうございました!

      2011/10/27 17:16:07

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