欠けた茶碗の中に雨
激しく降つてゐる
机の上のおかずは
キュウリの酢の物
昨日の夜の残りの
コロッケが一つ              
無理して買つてきたやうな
真新しいサッカーボール                      
しつかり締めてなかつた  
水道の蛇口から落ちる   
規則正しいしずくの音が   
この狭い世界を満たしていく    
郵便ポストは近くにあつて    
すぐに手紙を出せるけど
手紙を出す相手はここにゐるから 
もう書く必要はないんだ

冷たい畳に映る影
冬の星貼り付いてゐる
開いたままのノートに
積もる消しゴムのかす
もらつたお菓子の袋で
隠れてゐる向ふ側
破れて使ひ古された
団扇の中の朝顔
冷蔵庫が時々出す
腹を下したみたいな音が
虫の声と合はさつて
この広い世界を満たしてゆく
自宅の電話は目の前にあつて
すぐに電話をかけられるけど
電話する相手はここにゐるから
今かける必要はないんだ

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
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投稿日:2020/03/08 23:59:47

文字数:414文字

カテゴリ:歌詞

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