12月。
忙しいこの時期に、外の空気はとても冷たい。
吐いた息も白く、真冬の風の冷たさが人々を襲う。

だからこそ、人は皆集まるのだろうか。
この寒さを乗り切るために、楽しい気持ちになりたがるのだろうか。
友達同士で遊び、家族全員で買い物に行き、恋人と幸せになる。
それぞれの温もりを求め、人は己の願いを胸に、他人と自分の時間を共有する。


冬、今年もこの季節になった。
積もった白い雪で遊ぶ。
新年の挨拶に行く。
夜のイルミネーションを見に行く。

いろいろあるけれど、12月といえばのイベントがある。
きっと皆、待ち焦がれているイベント。
それは、クリスマスだ。

クリスマスは、それぞれの願いに、一つの共通点があるイベントだと思う。
それは、「幸せになりたい」だと考える。
子供達は、サンタにプレゼントを願う。
家族は、家族全員の幸せを願う。
恋人は、パートナーとの未来を願う。
願いの形は違うが、目的としては一緒なのではないだろうか。


空からは、白く美しい雪が降る。
それは、冬の街を彩る、一種のアクセサリー。

もう太陽は沈んで、月明かりが街を照らす。
人々に、どうか神による祝福を。










<<Secret answer>>










「というわけで、あと少しで一つ年をとります!」


朝のミーティング。
会議の内容は本来のテーマとはかなり脱線して、双子の誕生祭になっていた。


「リン、一言いいか?」
「うん?どしたの、がっくん」
「お前らはまだ若いんだから、年をとるとかは言わなくてもいいと思うぞ?」


今日も今日とて、リンちゃんの意見に神威さんがツッコミを入れる。
そして相方のレン君は、どうでもよさそうにリンちゃんを眺める。


「あれー?それって、自分が一番年上だから、私たちに嫉妬してるのかな?」
「してねえよ。いや、俺が一番年上なのは否定しないけど」
「否定しないんだ」
「…えーっと。会議は、もう終わり…ということでいいんですかね?」


二人のやり取りを眺めていたミクちゃんが、まとめに入る。
こうでもしないと、全員がその場を離れられない。
ミクちゃんは、きっとそう判断したのだろう。
彼女が手をパンパンと叩く。それは会議終了の合図。解散だ。





仕事の予定が入っていないので、今日の昼食は私が作ることになっている。
であるからして、私は味噌汁に入れる玉ねぎを刻んでいた。


あのハロウィンの夜、神威さんが私にした『悪戯』。
それを知っているのは、当事者である私と神威さん、マスターの三人。
神威さんが部屋を去った後、私はなかなか眠れなかった。
彼はどうしてあんな事をしたのか。それを考えていたからだ。

あの夜から一夜明け、私を翻弄した彼は、いつも通りの彼だった。
少し期待してもいいのかな。そう思っていた私の気持ちは、あっけなく裏切られた。
結局、彼にとってあの夜は『夜の行事の悪戯』としか認識されなかったのだろうか。
彼の気持ちが、心が、全くわからなかった。

…あの夜、彼の心の中を私は勝手に想像していた。
翌日のいつも通りの彼が、少し冷たく感じた。
結局、一人でから回っていただけだった。



「…痛ッ」


考え事をしていて、今やっていることにまで、注意が回らなかったのか。
うっかり、包丁で指先を切ってしまった。
ついてない。水道の蛇口を捻り、指先の血を洗い流す。


「ルカ、どうした?…指切ったのか」


名前を呼ばれ顔を上げると、そこには神威さんが。


「か…神威さん」
「気をつけろよ?あと、念のため消毒しとけ」
「は…はい」


彼について考えていたから、指先を切ってしまった。
そんな自分が少し情けない。

彼はただ、私を心配してくれているだけだ。
私を見る目に、特別な意味など込められていない。
だけど、私は彼の目から視線を逸らした。
自意識過剰だ。そう言い聞かせても、私は…


何故だろう。
あの夜から、私はこれまでより強く、彼を意識し始めた。
彼とは、ただの仕事仲間。特別な関係になることなんてない。
そうやって自分に言い聞かせても、私は彼のことを考えてしまう。
こんな感情を持ったって、仕事の邪魔になるだけだ。
それに、彼は私の気持ちなど、きっとどうでもいい。
私のことなんか、「ただの仕事仲間」としか認識していないのだろう。


きっと、この思いは叶うことはないだろう。
そうやって、自分の気持ちに蓋をして、感情を押さえ込む。
この思いは、彼に気づかれないほうがいい。
それが最善だろう。




*




その日の夜。
リビングにいつもの八人が集まっていた。
今日はリンちゃん曰く「クリスマスあーんど、今年もお疲れ忘年会すぺさる☆」とのこと。
私にはよくわからなかったが、グミちゃんの訳では「クリスマスパーティーと忘年会をまとめた」ということになっている。
さすがグミちゃん。リンちゃんとすごい仲良し。


「…でさ、兄貴のチョークアタック、凄く痛いわけよ」
「確かにアレは凄いわよね。当たった時の音が凄いもん」
「まったく、アレをやらせるマスターはいろいろ駄目だよね!頭が」
「あぁ、ゆるちゃんね…。あれ、そういやゆるちゃんいないね?」


何故か、めーちゃんはマスターのことを「ゆるちゃん」と呼ぶ。
そしてそのマスターは、とある事情により遅れている。
とある事情ってなんだろう。カイトさんから聞いた話だから、よくわからない。


この「クリスマスあーんど(ry」は、一応パーティーと言っているが、別にいつも通りの夕食&雑段会だ。
違うところと言えば、新企画が持ち込まれるところだろうか。
ただ、その新企画はマスターが持ってくる。
そしてマスターはまだ来ない。
結論、いつも通りになった。

めーちゃんはワインを飲んでいた。
そして、隣のカイトさんと、愚痴を言い合っている。
ストレスでも溜まっているのだろうか。
カイトさんは、二日酔い防止のため途中からお茶を飲んでいた。
…二人とも、ちょっと笑顔だった。
その笑顔が怖いです。何かあったんだろうか?

鏡音双子は、テレビの電源を入れて、某運転ゲームをしていた。
たまに「うわ、キノコをこっちにやんなし」とか「バナナよ、なめるでないぞ」とか「痺れ薬いいい!」とか聞こえてくる。
いやいや、何が起きてるんですか。
普通にゲームしてください。
って、なんかあっち向いてホイやりだしたし。
あ、レン君が目潰しくらった。大丈夫かな。


グミちゃんとミクちゃんは、楽しく喋りながら食器を洗っていた。
私がやろうとすると二人に「休んでていいよ?」と止められた。
普段やってもらってるからたまにはやらせて、と。
二人はいい子である。


さて、私は何をやっていようか?
お酒は飲んでいない。飲めないことはないが、飲む気分ではない。
とくにやることもない。本でも読んでいようか。
あれ…そういえば、神威さんはどうしただろう。


「…ルカ。ちょっといいか」


噂をすれば、後ろから神威さんが話しかけてきた。
そのまま腕をつかまれ、彼は歩きだす。
連れてこられたのは、リビングから少し離れた場所。
まぁ、廊下である。


「な…何ですか?」


目を合わせずに下を向き、彼に問う。


「ルカ、最近……俺を避けてる?」
「…何故、それを聞くんですか」
「気になったから」


「気になった」?
それはどういう意味だろうか。


「どういう意味ですか」
「聞きたいか?」
「聞きたいです」
「じゃあ…目を合わせて」
「…なんでですか」


今の私じゃ、彼とはまともに目を合わせることはできない。
どうしても、意識してしまうのだ。


「…別に、意味なんてない」
「じゃあ」
「でも…気にはなる。何故、俺を見ない?」


意味はない、か。
やはり、彼は私をなんとも思っていないのであろう。


「別に、いいじゃないですか」
「どうしても、俺は見れないか…」


彼はぽつりと呟いた。
すると…突然、頬に手を伸ばされ、顔を上げさせられた。
同時に壁に背中をつけられ、彼は私の顔の横に右手をつく。


「こうしないと、見れないか」


彼がまたも呟く。
その声は静か。
そして表情は、どちらかといえば無表情に近かった。


「あなたは…」
「少し、静かにしてくれないか」


そう言って、彼は顔を近づけてきた。
そして…やはり、触れるか触れないかの距離で動きを止める。
唇に吐息がかかる。
あぁ、またこの距離か。
あの夜と…同じだ。
どうして…そこでやめるの?

時間にして数秒か。
私は右手で彼の胸を押す。
とん、という小さな音がした時には、彼の顔と手はもう離れていた。


「どうしてこんなことするんですか…あの日と、同じことを」


消え入るような私の声。
それは少し震えていた。


「…さあな。俺自身でも、よくわからない」
「なにそれ…」
「だから、今は理由は言えない」


彼の行動を考えれば、私を意識しているように思える。
だけど、彼の言葉や表情からは、彼の真意が読み取れない。
彼の心は、隠されたままだ。


きっと私は今、驚いた顔をしているんだろう。
彼の突然の行動に、驚いている表情を。

そんな私をずっと見ていた彼は、また私の腕をつかんだ。
そして引き寄せられ、彼は私を抱きしめる。
背中に回された腕の力は、少し強かった。
彼の表情は、見えなかった。


「…なぁ、ルカ。一つ、聞いてもらいたいことがある」
「…なんですか……?」


彼の真意は見えない。
演技をしている時とは違い、いつもより大切そうに、彼は私を抱いている。


「二人で…抜け出さないか」
「…え?」
「今夜だけでいいから…」


彼の心は見えない。
意味はないと彼は言ったけど、本当は何かを感じているはずなんだ。
じゃあ、その気持ちは…?

神様…あなたがいるのなら、教えてください。
少しだけ…期待しても、良いのでしょうか?

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【がくルカ】Secret answer【クリスマス】

少し早いですがクリスマスネタです。
クリスマスっぽさが微塵も感じられないただのgdgdですね←
舞台裏です。
甘いの目指したのに、「Jack-o'-lantern」のほうが甘いような気がしてなりません。

本日の結論。
私は、シリアスには向いていない←

閲覧数:1,145

投稿日:2012/12/20 22:17:44

文字数:4,135文字

カテゴリ:小説

  • コメント3

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  • Tea Cat

    Tea Cat

    ご意見・ご感想

    んみゃああああああぁぁぁああぁぁ!!!
    がくルカぁ!がくルカぁ!!(落ち着け


    はぁ…失礼しました、茶猫です☆にゃぁ

    「Jack-o'-lantern」もんみゃああぁぁだったけど、こっちもすっごくんみゃああぁぁだよ!!
    「Jack-o'-lantern」は読んでる途中からんmy(ryなんだけど、こっちは後からじっくりんmy(ry
    なんだよ!!(いいから落ち着け


    強気がっくんhshs!!戸惑うルカさんhshs!!

    抜け出した後も見たいよ!

    ブクマもらうよ☆にゃぁ

    2012/12/23 13:58:22

    • ゆるりー

      ゆるりー

      とりっきいいいいぃ!!!(((どんな奇声だ
      うん、とりあえず落ち着け。

      うん、なんかよくわからんが、わかったから落ち着け((どっちだ
      何言ってるのか全然わからんぞw
      だから、とりあえず落ち着けw

      おぉ…何気に強気ながっくん好評w
      ルカさんはいつも通りだw

      抜け出した後かー…
      どうしよう……全く考えてなかったよ←
      よしいちゃいちゃさせればいいんだな?((
      とりあえず、今は皆さんのご想像にお任せします(((かみんぐすーん!((((こら

      ブクマThanks!シャキ-ン(何の音!?

      2012/12/24 01:52:28

  • 聖 京

    聖 京

    ご意見・ご感想

    はじめまして。
    ちょっと強気に出てくるがくぽがいいですね。どきどきしてしまいました。
    そしてこの続きが気になります。
    この後、二人はどうなるんでしょうか?
    ぜひ、続きをお願いします(笑)。

    2012/12/22 14:03:14

    • ゆるりー

      ゆるりー

      はじめまして。
      今更ですが、ユーザーフォローありがとうございます。
      ブクマもありがとうございます。

      がくぽさんをどうするかでかなり悩んだのですが、少し強気な彼を気に入っていただけて良かったです。
      続き、ですか……
      続きは全く考えていなかったので、これから考えます……。

      2012/12/22 16:39:40

  • すぅ

    すぅ

    ご意見・ご感想

    ああああああああああああああああ!!!!!
    もう大好物です!がくルカ!最高です!!!

    ・・・申し遅れました。すぅといいます。
    ずっとニヤニヤして読んでましたw
    こんな純愛がくルカ大好きです!

    2012/12/21 20:07:58

    • ゆるりー

      ゆるりー

      ああああああああああああああああ!!!!!((いきなり真似するな
      私もがくルカ大好きなんですよ!ありがとうございます!!
      がくルカが好きすぎて、自分で書いてしまいますw←

      すぅ☆さん、はじめまして!
      「帰り道」の方ですよね?私大好きです!…間違っていたらすみません。

      存分にニヤニヤしていってくださいw←
      純愛がくルカが好きと言っていただけて嬉しいです。
      本当にありがとうございます!

      確か、コラボも一緒ですよね?
      今後もよろしくお願い致します。

      2012/12/21 23:44:40

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