~~ クリスマス・イブに亡くなる者は幸いである ~~
      ~~ その日は 天国の門が広く開かれているからである ~~
                   (de.vries 1984, P 131)


それは 雪の降るクリスマス・イブの出来事である

 街はイブで賑わっている。
 私は仕事を終え夕食の買い物も終わり、帰ろうとしていた。
 誰が待つ訳でも無い独り暮らしの寂しい家だが、雪の中に居るよりはマシだ…
 母が10年前に病で亡くなってから、ずっと一人である。
 慣れたとは言え、祝い事の日や祭り事の日は、やっぱり人恋しくなる…
 足早に家路へ急ぐその先で 「火事だっ!!」と叫び声が聞こえる!
 声のする方を見ると、野次馬の人だかりと、煙の出てる建物が目に映る。

ー「時計屋のおじいさんとこ、らしいよ!!」
ー「ずっと病気でお店は閉まってたからねぇ…」
ー「蝋燭でも倒れたんだろうかねえ…?」
ー「一人暮らしで、身よりも無いし…可哀想にねえ…」
ー「イブだっていうのに…」
ー「あの火の勢いじゃ助からねえな…」 
などと、野次馬の中から話す声…


(そうか…時計店が火事なんだ!)
(そう言えば、母はよくあの時計店に修理を頼んでたっけ…)
(一人暮らしだったんだ…イブに火事だなんて…可哀想に…)
(一人で亡くなるなんて…いずれ私も…)
(なんだか寂しい…)
心の中で思い、母がお世話になってた時計店でもある、おじいさんの冥福を祈りながら
その場を離れ家路に急いだ。
降りしきる雪を避ける為、俯いて下を見ながら歩く私の視界に、不思議な轍(わだち)が目に入った。

(なんだろう?)

それは、小さな荷物を引きずったような跡である。

(小さなサンタが荷物を? ふふふ…)
(まさかね…) 
私は、その雪の道に出来た跡を目で追ってみた。
引きずった跡は、細い路地に続いていた。
その先に、人影らしき小さな影が見えた。
私は好奇心からそこへ行って確かめたくなった。

(急いで帰っても待つ人が居る訳じゃなし…)
(ちょっと寄り道…)
引きずったような跡を辿って行くと
降りしきる雪の中、建物の壁に寄りかかるように小さな影が座っているようだ…。

(いつから座っているのだろう?)
(頭には雪の山が出来ているし…)
不思議な事に吐く息の白さが無い…
着ているシャツは、その子には大きすぎる。
大人用の服だろうか?

(コートも着てないなんて…!?)
急いで駆け寄った。
その子は動かず、じっと下を見ているようだ…。
    

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  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

「マゴジャ」

小説は初めてです(>_<)
次回に続きます^^

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投稿日:2011/09/21 05:35:45

文字数:1,092文字

カテゴリ:小説

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