「彼らに勝てるはずがない」


そのカジノには、双子の天才ギャンブラーがいた。
彼らは、絶対に負けることがない。

だから、彼らは天才と言われていた。


そして、天才の彼らとの勝負で賭けるモノ。
それはお金ではない。


彼らとの勝負で賭けるのは、『自分の大事なモノ全て』。

だから、負けたらもうおしまい。



それでも、貴方は賭けますか――?









<<イカサマ⇔カジノ>>








人間の、醜い欲望。
鳴り止まない喧騒。
そして、駆け引き。

それら全てが渦巻くアンダーシティ。


生きる為にはしなければいけない、仕事。
上を目指す者ならば必ず願う、成功。
誰もが追っている、夢。
進むために人間が持っている、希望。

そして、それらを求める猛者達。


客にカクテルを出しているバーテン。
カードを配っているディーラー。
ルーレットを回しているギャンブラー。

彼らが集まるのは、とあるカジノ。





「…あ、また来た」


俺のその言葉を聞いて、片割れのギャンブラーは静かに微笑んだ。


「あら…今日はずいぶんと、お客様が多いわね」


リンがそう言うのも無理はない。
このカジノは小さい。
でも客はまぁまぁ来るのだが、俺たちのところに来る客は、一日で4,5人程度なのだから。

それがどうだ、今日はこの客で15人目だ。
いくらなんでも多い。
まぁ、俺たちは儲かるほうだからいいんだけどさ。


「まぁ…貴方達が、あの噂の天才ギャンブラー?」
「えぇ、そうです。私はリン」
「俺はその片割れ。レンと申します」


俺たちが軽く名乗ると、その女性は少し驚いたような顔で言った。


「へぇ、双子のギャンブラー…貴方達はまだ若いのに、どうしてこんなところにいるのかしら?」」
「それは貴方にも言えることです、ミクさん」
「あら…貴方達、私の名前を知っているの?」
「貴方のことは、そこらじゅうのカジノで噂を聞きますよ。なんでも、男性ギャンブラーを誘惑して自分を勝たせる…みたいなこと、してるじゃないですか」
「それはぁ、ただのウ・ワ・サ。本当は正々堂々と戦ってるわよぉ」


女性はとぼけたように答えた。


(レン。あいつ色目使ってるわ。信じるつもりじゃないでしょうね)

唐突に、リンが目でそう言ってきた。

(そんなわけないだろ?どんだけああいう客を見てきたと思ってんだよ)
(でも…)
(あのなぁ…俺はああいう女はキライなの。キモイし、ロクなヤツじゃないってこと、よくわかってるだろ?)
(はいはい、わかったから)


だったらリン、お前の服もどうなんだ。
あからさまに…やっぱいいや。


「まぁ、そんな話は置いといて。今日はどのようなご用件で?」
「そんなの、決まってるでしょ?ゲームをしにきたのよ」
「…あははっ。そうこなくちゃ。じゃあ」


俺たちは笑うと、いつもの言葉を口にする。


「貴女の大事なモノ」
「全部賭けましょう」


そして、俺たちは女性に言う。


「さぁ、今宵のGameは何だい?」
「ほどよい刺激を頂戴?さぁ、どうする?」
「そうねぇ…カジノの女王、ルーレットをお願いするわ」
「ルーレット…ホイール(円盤)を廻してボール(球)を落とし、落ちる場所を当てる簡単なゲーム」
「オーケー。やってあげる」


俺たち三人は、テーブルに向かう。


「聞いたところでは、ミクさんはルーレットが得意だそうですね」
「勝ったときに1増やし、負けたときに1減らすシステム…ダランベールなんて、退屈すぎるわ」
「ダランベールは無しだからね。どっちの色?」
「黒にしておくわ」
「じゃあ俺たちは赤ね」


俺は球を手にする。


「狙うは?」
「「36倍」」


さぁ、“俺たち二人”の舞台へ…


「いくよ?」


俺は、ルーレットを廻し球を投げ入れた。


目にも留まらぬ神業。
それは、俺たち二人だけができるShow Time。
運命的なシチェーションで、俺たちにとっての遊戯盤は廻り出す。

客は完敗?
今回の客が失うのは、多額の「金」か?
それとも、自らの「プライド」か?


円盤のスピードは遅くなっていく。
そして球が止まるその寸前で、女性は瞳を閉じた。

そして、目が開かれるまでのわずか一秒。
俺は、黒の36に入るであろう球を掴み、ポケットに隠す。
リンは隠し持っていた球を、俺が掴み取った球があった位置から転がす。
そしてカタンと音がしたとき、女性は目を開いた。


「え…嘘…!私が、負けるなんて……!」
「私たちの勝ちよ」


球は、赤の36に入っていた。

これが、俺たちが天才と言われる理由。
イカサマをしているなんて、俺とリン以外は知らない。
いや、俺たち以外にわかるはずもない。
それぐらいに、俺たちは完璧なのだから。


「さぁ、貴女の大事なモノ全て…プライドはたった今壊れたから、残りのお金だけ全部もらうわね」
「負け犬に用はない。今からアンタは、ただの女」
「そんな……!」


彼女は崩れ落ち、泣き出した。
今回も、俺たちは勝った。
それは、隙を見てイカサマをしているから。


瞳を閉じたその隙に、相手の心ごと奪ってあげましょう。
それが、俺たちの役目。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

イカサマ⇔カジノ【自己解釈】

今日はじめて聞いて、またしても衝動的に書きました(ぇ
カジノとかルーレットとか、いろいろ調べて書いたんですけど、おかしかったらスルーしてください。


本家様 http://www.nicovideo.jp/watch/sm17428538


次回投稿予定

「嘘の占い師」
「背徳の記憶~The Lost Memory~ 3」   …coming soon

閲覧数:52,739

投稿日:2012/04/02 23:23:39

文字数:2,178文字

カテゴリ:小説

  • コメント1

  • 関連動画0

  • 雪葉

    雪葉

    ご意見・ご感想

    こんばんはです、雪葉です。
    カジノ・・・・・私はルーレットのほかにミニカバラ、ブラックジャックなら知ってますよ。
    この小説で本家を見る気になりました。あとで見てきます。
    それでは、失礼します。

    2012/04/03 00:07:16

    • ゆるりー

      ゆるりー

      雪葉さんこんばんは。

      自分は、あとはポーカーぐらいしか知りません。やはり一番わかるのはルーレットです。

      ありがとうございます。本家は歌も歌詞もPVも素敵ですよ。

      2012/04/03 00:19:27

ブクマつながり

もっと見る

クリップボードにコピーしました