私ね、実は、知ってたんだ。
君がクラスメートの、あの子に、いじめられてたって事……。

肉体的にじゃなくて、じわじわと精神的にいたぶるいじめ。ホントにじわじわと、相手の心を締め付ける。だからタチが悪い。
相手を思いっきり水浸しにするとか、そういうのじゃなくて。
物を盗むとか、机に落書きをするとか、クラスの誰がやってるのかも分かんない、陰湿ないじめ。
相手は一人なのか複数なのか。それすらもあの子には分からなかったんだと思う。
実際、相手は複数で、三人だった。
たった三人なのに、あの子は日を追うごとにやつれていった。追い詰められていった。
なのに、いじめられてる事をひた隠しにして、友達の私には悟られまいと必死で笑顔を取り繕っていたけれど。

気付いてたんだよ……。なのに……、ゴメン。守れなくてゴメン。

例の三人組は、クラスメート全員を恐怖に陥れた。
いじめられてる事を誰かにチクったり、君を助けようとするやつがいれば、今度はそいつをいじめるんだ。いじめの典型的パターン。
だから誰も君を助けられないで、追い詰められていく様を見るしかなかった。……私もそうだった。
ゴメンね。私は君の一番の友達なのに。一番信頼してくれてる友達だって、言ってくれたのに。
隠しごとはしないって、小学校の頃、誓ったのに。

そんな誓いを、簡単に破ってしまった私を、君は絶対に許してくれないよね。
恨んだって構わない。呪い殺したって構わない。私があの日、君を救えていたなら。
ゴメン……この世界でたった一人の君を、僕は守ることもできなかったんだ。ゴメン、弱くてゴメン……。

私は君にとって親友だった。同じように、君は私にとって親友だった。でも、私はもう君の事を、親友だなんて呼べない……。呼ぶ資格がない。
メロスはさ、殺される覚悟で友達を救ったけど、それだけの覚悟が私にはなかった。
君がいなくなるって知っていたら、その覚悟はできたはずなのに、まさかそんな事になるなんて思わなかったから。だから……。

あぁ、また言い訳してる。自分は悪くないよって。そんな自分が嫌になる。
どうして私って、こうなんだろう。エゴイストなんだろう。

一番悪いのはいじめた奴らだけど、その次に悪いのは、君を助けられなかった私なんだ。
自分が許せない。

ゴメンね、弱くてゴメンね……。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

I am a broken umbrella 2

Nemさんの曲から、ちょこっと書き出してみました。
全俺が泣いたNemさんのお勧め曲。

私は壊れた傘のように、降り注ぐ雨から、君を守ることも出来ない。ゴメン、弱くてゴメン……。

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投稿日:2013/08/06 00:28:47

文字数:975文字

カテゴリ:小説

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