悲鳴が合唱のように街にわめく。

 それを私は10秒で駆け巡る。

 もう――泣いてしまいたかった。

 これを嘘だと思いたかった。

 だけど――この人類賛歌は誰が、どうしたって終わることはないだろう。

「駆け抜けろ、もう残り1分だ」

 ヘッドフォンから何かが聞こえた気がしたが、うまく聞き取れなかった。

 ただ――目指していた丘の向こうは、すぐ目の前に迫っていた。










≪A headphone actor [1st anniversary]≫










-the second part-












「……着いたよ?」

 丘の向こうは、もう地球が終わってしまうというのに、澄んだ青い空を映し出す壁だけしかなかった。

 ヘッドフォンから声もしない。さて、どうすればいいんだろう。

「……素晴らしい」

 壁の目の前には、白衣の男がいた。

 無精髭にメガネにダサイシャツ……あいつは。

「先生、あんたこんなところでなにを……!」

「いやぁ、貴音。まさかここまでやってくれるとは……。いや、この際“エネ”って呼んだ方がいいかな?」

 先生が何を言ってるか解らなかった。

 それを察したのか、先生は笑う。

「……そうだな。じゃあ後ろむいてみ」

「え?」

 私は後ろを振り返った。そこに広がっていたのは――










 ――ハリボテの街だった。






 紙でできたような、子供でも作れそうなハリボテが街を形成していたのだった。

「……え?」

「実験も成功だな。もう――ここはいらん」

 そう言って先生は――何かを投げた。








 ドォォン――!!







 その音と、熱風でわたしはそれが爆弾だと知った。

 怒るより、虚しかった。

 私は――箱の中の世界でずっといきてきたんだ、ということに。

 絶望?

 いや、失望が正しいだろう。

「ごめんね……」

 燃え尽きていく、街だったモノを私はずっと見つめていた。

 ヘッドフォンから――声が聞こえた気がした。




















「……おい、エネ!」

 私は深い眠りから、目を覚ました。辺りを見渡すと、いつものディスプレイだった。

「お前が寝るなんて珍しいな。なあ、ソフトウェアでも夢を見るのか?」

 ご主人が問いかける。

 私は少しだけ頭を整理して、

「――そうですね。見るんじゃないですか?」

 ――すこし微笑んでみせた。










おわり。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

A headphone actor[1st anniversary]-the second part-

閲覧数:95

投稿日:2012/12/14 23:37:31

文字数:1,076文字

カテゴリ:小説

オススメ作品

クリップボードにコピーしました