【結月ゆかり】怪盗☆ゆかりん!#1【二次小説】

投稿日:2013/07/25 00:22:19 | 文字数:5,982文字 | 閲覧数:3,603 | カテゴリ:小説 | 全6バージョン

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原作:【結月ゆかり】怪盗☆ゆかりん!【ゲームOP風オリジナルMV】
http://www.nicovideo.jp/watch/sm21084893

作詞・作曲:nami13th(親方P)
http://piapro.jp/nami13th
キャラクターデザイン:宵月秦
http://piapro.jp/setugekka_sin

著:多賀モトヒロ
http://blogs.yahoo.co.jp/mysterious_summer_night

怪盗☆ゆかりん!の動画を観て筆を執りました。
歌詞のイメージを壊さず・・・に書いてみました。
週一のペースで投稿したいです(十分遅れる可能性有り)。

また作品投稿にあたり、快くご承諾下さったnami13thさん、宵月秦さんの寛大なご対応に感謝致します。


次回:2.弓道少女の秘めたる想い
http://piapro.jp/t/wWpu

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TEXT
 

1. 怪盗少女と春陽の日々

朝刊の一面を騒がせていたのは、葛流【かづる】市立博物館の展示物、「月の雫」と呼ばれるダイヤモンドの窃盗未遂と同博物館の建造物損壊事件だ。窃盗犯と損壊犯らの関係性は皆無で、月の雫が盗まれるのを阻止したのが損壊犯とされる女だが、その際壁の一部にレーザー光線のような光で直径一メートル程の大きな穴を開けており、これが今回の主容疑となっている。月の雫は葛流市と姉妹都市であるオーストラリア、エンブリッジ市の宝で、今回は都市親交深化の一環で貸与され、記念展示されていたものだった。世界に名だたるサンドロップに対を為す真円の美しいイエローダイヤモンドで、その輝きは妖艶な月の様だと称賛されている。これを狙った国際的な窃盗団の可能性も視野に入れ、ICPOの協力の下、県警が調査に乗り出している。また女には目撃証言があり、黒いパーカーのフードを目深にかぶり、眼帯と杖のような物を所持していた模様。そして自ら「怪盗☆ゆかりん!」と名乗りを上げたという。光学兵器の所持、使用の観点から武器等製造法などの余罪も視野に入れ、窃盗犯同様、損壊犯の逃げた足取りを目下捜索中である。

うららかな朝の電車はゆっくりとした時間が流れていた。昔ながらの単線鉄道私鉄葛流線。葛流市中心部と主要路線を結び、四十年ほど前は地場産業を支えてきたが、宅地化が進み現在では通勤を始め住民の足となっている。ゆかりはこのゆったりとした時間が好きだった。耳を澄ますと、自分が通う葛流中央高校の学ランを着た男子生徒二人の話し声が聞こえた。いや、彼ら以外にも女子学生やサラリーマンたちも専ら昨日の窃盗未遂事件の話でもちきりである。
「ゆかりんって何者だよ?可愛いのかなぁ」
「ダイヤモンド守るのは良いんだけど、名乗っちゃったんでしょ?」
「完全にアニメの見過ぎだよね。コスプレか何か?」
「一介の女が光学兵器を持ち歩いている時点で日本の終末を予見させるんだがそれは」
「プロモも兼ねた映画の撮影だろ」
昨日の出来事がテレビの中の出来事でしかない人たちは、張本人が同じ列車に乗っている事にすら気付かず好き勝手な事を言っている。だがそれはそれで仕方がなかった。なぜならゆかり自身も昨日の同じ時間まで、彼らと同じ所に立っていたのだから。そして日常という蚊帳の外に追い出されて間も無いため、彼女はその狭間を抜けきれずにいた。だから誰かに自分の正体がばれているのではないか、そればかりを気にしていた。
高校の最寄り駅でもある粕平【かすだいら】駅に到着し、誰とも目を合わせないよう下をうつむきながら改札口をくぐった。
春の輝くような日差しが眩しい。桜はだいぶ散ってしまったが、先月までコートを着ていた事を考えると今の暖かさが嘘のようだ。駅舎を出て学校に向かおうとするゆかりだったが、赤い自転車にまたがった金髪の女子生徒に呼びとめられた。
「おはよー!」
元気で明るい声が呆けていたゆかりを驚かせた。
「お、おはよう。マキちゃん」
彼女は弦巻マキ。ゆかりと同じ高校に通う彼女の友人で、活発ではつらつとした女の子だ。地毛の金髪という外見だけで判断されがちだが、彼女の明るさと素直な一面に触れればたちまち印象が好転する。元来人を引っぱる才があり、その一環として中学時代からバンドのリーダーとして活動。この辺りではちょっとした有名人でもあった。
「どうしたの、ゆかりん?なんかぼーっとしちゃって」
「うん。なんでもないの」
慌てて否定するゆかりだが、マキはある事をひらめいた。
「昨日の怪盗ゆかりんって、もしかしてゆかりんなんでしょ!」
心配事がこうも早く現実味を帯びてしまうのかと、今にも心臓が飛び出してきそうな勢いだ。警察に通報されて終わりだと観念した。
「なーんちゃって。いくらあだ名が同じだからって、ゆかりんが怪盗な訳ないけどさ」
なんだ、冗談か。二人は制服の学生と共に、通学路を流れるように歩き始めた。
「嫌だなぁ、マキちゃん。私がドロボウさんなわけないでしょ。アハハハハ」
とにこやかに笑ってみた。極力不自然さが出ないように。
「でも、怪盗のゆかりんはいい人だよね。ダイヤモンド守ってくれたんだもん」
「うん。そうだね」
と、話を合わせるようにゆかりはうなずいた。
「一歩間違えれば国際問題になってたからね」
マキはしみじみと言うのであった。
「なんかみんな怪盗ゆかりんに目が行っちゃってるけど、本当に悪いのはダイヤモンドを盗もうとした奴だよ」
ゆかりは内心、マキの言葉に感謝をしていた。でも感情を表に出して言う事は出来ないのが心苦しかった。

学校に到着して耳にした、生徒たちの怪盗ゆかりんへの反応は、やはり称賛する声が多かった。中には特別に興味の無さそうな事を言う者もいれば、やはりアニメみたいだと小馬鹿にする者、果てには本当は窃盗犯とグルだったと邪推する者さえいた。だが成り行きとはいえ自分の行いを支持してくれる人がこんなにも多くいると思うとやはり嬉しかった。
二年一組の教室へ入るとゆかりは窓際の一番後ろにある自分の席に着き、鞄から筆記具やテキストやらを机にしまい込んだ。このタイミングで先に来ている友人、東北ずん子に挨拶がてら雑談になる。
「ずん子ちゃん、おはよう」
先にマキがずん子と話していたのだが、そのマキは鞄を机の脇に掛けただけだった。話題は案の定怪盗ゆかりんだったが、ずん子の様子がいつもと違うのが見受けられた。始業式の後くらいから、春だと言うのに浮かない様子だったのだ。
「おはよう。ずん子ちゃん」
「ゆかりさん。おはようございます」
つやのある綺麗な緑がかった髪で、いつもカチューシャを着用。性格はおしとやかで顔のみならず声もかわいらしいと評判で、同級生のみならず上級生たちからも人気があり、ファンクラブまで存在する中央高校切ってのマドンナ。学業のみならず、幼少期より続けている弓道に秀でており、部活動の大会では優秀な成績を収めており、教師の間でも大変評判の良い才女だ。
「ずんちゃん。最近元気ないみたいだけど、悩みごとでもあるの?」
「私たちでよかったら、力になるよ」
マキとゆかりは彼女を諭すような優しい口調で話しかけた。
「あ・・・はい。でも本当に大丈夫ですから。ごめんなさい。心配掛けさせてしまって」
明らかに何かを隠している様子だった。
「部活の先輩にいじめられてるとか?」
おせっかいのマキが妙な勘繰りを入れ始めた。だがそうでもしないと彼女から本当の事を聞き出せないのも確かだった。
「そんなことありません。弓道部の方々は優しいです」
「じゃあ、お家が厳しいとか?」
ゆかりもマキに乗っかって聞いてみた。ずん子の家柄が良いのは知っていたが、それ故に両親の教育が苛烈を極めているのではないかと思ったのだ。
「いえ、お父様もお母様も優しいです。家業を継いでもらいたい想いはあるようですが、私にも兄にもやりたい事はやらせて貰ってますし」
「そう・・・。お家騒動の線は無しか」
ゆかりは残念そうにつぶやいたが、慌ててマキが言った。
「ゆかりん!お家騒動ってなに?」
「ほら、名家にありがちな覇権争いよ。後から生まれてきた人間に家を継ぐ資格はないからね。これ昔から言われている事だから。伝統芸能だから」
「それ昼ドラの見過ぎでしょ」
「あら残念。昼ドラやっている頃は五時限目でしょ。私たちは学生よ?マキちゃん」
「その発言にメタさしか感じないので、あえてその線には触れないようにしておくわ」
「お家騒動ですか・・・」
と今度はずん子が呟いた。
「時々家族全員対抗で射抜き合戦をやるんですけど、それはどうなんですかね?」
「的が身内でなければ単なるレクリエーションだと思うよ」
マキの呆れた目をしながらのツッコミに、ゆかりはくすりと笑った。二人は何事かとゆかりを見たが、彼女はこのやり取りを傍から見ているのが好きだった。
「マキちゃんのするどいツッコミも好きなんだけど、ずん子ちゃんの強力な天然ボケとベストマッチだよね」
「いや、もとはといえばアンタが悪いんでしょ!」
マキは思わず、手の甲でゆかりの肩をポンと叩いた。
「いやはや一本取られましたな」
「まとめようとしているけど、ぜんぜんまとまってないからね」
この二人のやり取りに、今度はずん子がくすりと笑った。
「おかしい」
ずん子の笑顔を見て、二人はちょっとだけ安心した。
「あ、笑った」
ゆかりはずん子に微笑みかけながら言った。マキは三人中一番の疲労を課せられたが、それに似合った報酬を得られたと満足している。
「言えるようになるまで待ってるから。私たちはずんちゃんの味方だからね」
マキの心強い言葉に、ずん子は嬉しくなり、感極まって涙を流してしまった。二人だけではなく、周りの生徒たちも急な出来ごとに思わず目が行ってしまう。
「あわわわわ!」
「マキちゃん、泣かせた」
「いや。これはその・・・」
「二人の優しさがとても嬉しくて」
顔を伏せ、取り出したハンカチで目を押さえ涙を拭っていた。この時二人は、ますますずん子の事が放っておけなくなるのだった。

その日の授業は何事も無く終わった。放課後、本来ならマキとゆかりは帰路を共にし、ずん子は部活動へ赴きそれぞれの時間を過ごすのだが、二人は時間が許す限り彼女の傍にいる事にした。ずん子も最初は二人に悪いと早々に帰るよう促したが、断固として離れる事は無かった。弓道場では見学と称して、部屋の端っこでずん子や部活動の様子を見ていたが、ゆかりが居るだけでどうにも目立っていた。部活動には参加していないが、運動神経が常人よりも優れている為、運動部の助っ人として呼ばれる事が多い。それで弓道部員たちからは「うちにも救世主が来た!」とぬか喜びをさせてしまう事態になってしまう。見学だと改めて言うとがっかりされてしまったのはもはやいうまでもない。マキは普段やりなれない長時間の正座のお陰で立てなくなってしまい、逆に迷惑を掛ける羽目となってしまった。マキの足のしびれが取れたところで、二人は短髪でふちなし眼鏡を掛けた男子部長を弓道場外に連れ出し、部活動中のずん子の様子を聞いてみたが、既に彼女の異変には気付いており、今後の部を担ってもらうからこそとても気に掛けている様子があった。
「東北さんが的に中らない事が増えてる」
普段のずん子は非常に高い命中率を誇るそうだが、やはり何かに気をとられているのか、集中力が落ちているという。彼らもずん子に気遣い声を掛けたそうなのだが、やはりエースとしての期待が逆に重荷となり、自覚も十分なので士気を落とすまいと気丈に振る舞うのだと言う。
「先輩としてなにもしてやれないのが口惜しいが、友達として東北さんを助けてやってはくれまいか」
ゆかりとマキはますますずん子の事を守ってやらねばと硬く誓うのであった。

弓道部が解散になったのは夕方六時を回った頃だった。通常なら部員全員での片づけが日課となっているのだが、部長の指示でずん子は早々に帰らされた。彼女の体調面でもそうだが、それを心配して待つ人が友人二人への気遣いでもあった。それからは他愛の無い会話をしながらずん子を駅まで送って行った。彼女が利用する路線は近年開業した常総新線で、都市と地方の架け橋として新しい人の流れが期待されている路線だ。ここ葛流もその影響を受け新線の駅周辺に複合施設の開発などが進み、都市部の人間や労働者等も流入してきている。
「ごめんなさい。遅い時間に遠回りまでさせちゃって」
新線南葛流駅は地下にある。階段の降り口の所までやってくると、ずん子は申し訳なさそうにはしていたが、心なしか嬉しい様子でもあった。
「三人で帰ったのって、いつぶりだったかな?」
とゆかりが尋ねた。
「確か先月の終業式の日ですね。その日は午前中で終わったから部活も無かったし、マキちゃんもバイトは夕方からはずですし」
「ああ、そうだった。でもその日の午後にスタジオ練習入れてたから、どことなく焦ってた記憶あったわ」
「マキちゃんの部活動みたいなものだからね」
「自主的にやっているからこそ顔を出さなきゃいけないのよね。好きでやってるからいいんだけど」
電光掲示板にはもう五分で列車が駅に到着する表示が出ていた。ずん子はふとそれを見やると見送りの二人に言った。
「そろそろ行きますね。今日は本当にありがとう」
ずん子は深々と頭を下げると、ゆかりとマキはそれをやめさせた。
「私たち友達でしょ?」
「そうだよ。今ずんちゃんが言えなくても、話せる時が来たらちゃんと聞くからね」
二人はずん子に手を振り、階段を下りて行く姿を見送った。それでも心配だったので姿が見えなくなるまでしっかりと見送った。
「じゃあ私も帰るね。マキちゃん、気を付けて」
「バイバイ」
ゆかりはマキに手を振り別れると、新線の隣にある日本鉄道の駅に入って行った。ここは元々あった日鉄の駅の隣に新線の駅が新設された。普段は使わない駅で、定期券が無い為運賃は小遣いからの支払いだが、ここから歩いて帰る事を考えると、小銭でも払ってしまった方が断然楽だ。そして帰りながら、明日もまたいつもと同じような毎日が送れるものかと思っていたが、やはりずん子が何か不安な事が胸につかえている様子なのがどうも気がかりだった。それでも明日になればどうにかなると信じていた。

翌日。ゆかりはいつものように駅を降りてマキと合流するが、早速マキの顔が不安でいっぱいだったのは見て分かった。
「ゆかりん・・・」
すがってくる様はまさに子犬といったところか。ゆかりはマキの頭を優しく撫でてあげると、冷静に彼女の話を聞いた。
「昨日の夜、寝る前にずんちゃんにメールをしたの」
ゆかりはうなずいて応えた。おやすみメールをしたらしい。
「返事が返って来なかったの!」
ずん子は律義な性格なので、送られたメールは必ず返信していたのだが。
「寝ちゃってたんじゃない?」
ゆかりはマキをなだめるのに精一杯だったが、兎にも角にも教室に行ってみようと諭し、どうにか学校までたどり着いた。ゆかりは昇降口のずん子の下駄箱を見たが、来ている様子はなかった。マキにもそれを伝え、ショートホームルームが始まるギリギリまで登校を待ってみたものの、やはり彼女が姿を現す事は無かった。クラス担任の男性教師出沢が、他愛無い業務連絡の一環として告げる。
「東北さん本日はお休みです」
これは絶対に何かがあった。ゆかりとマキはずん子の抱える想いが根深く重い物であると理解するのにそう時間は掛からなかった。

私は身体で表現する事が苦手である。
次いで口に出して表現する事が苦手であり、
絵に描いて表現する事など以ての外である。

だが普段思う事を身体に溜め込められるほど出来た人間でもない。

その結果文字を言葉を紡いで表現するのだ。

近年の活動 :ゲーム系のブログ運営
       二次創作小説の作製
主たる活動域:よさり-深遠なる夜、魅惑の月-
http://blogs.yahoo.co.jp/mysterious_summer_night

恥ずかしながらツイッター始めました。お気軽にどうぞ。
@tagamotohiro

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作品へのコメント3

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    怪盗☆ゆかりん!

    JOYSOUND配信決定!

    おめでとうございます!

    配信された際にはみんなで歌ってしまおう。

    そうしよう。

    2013/10/01 22:20:11 From  たがーる(多賀モトヒロ)

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    ご意見・感想

    おもしろかったです!つづき待ってます!!

    2013/07/24 16:21:13 From  mokyuu

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    メッセージのお返し

    コメントありがとうございます。
    作品は週一投稿(極力努力)ですので気長にお付き合いください。

    2013/07/24 22:42:34 たがーる(多賀モトヒロ)

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    その他

    たくさんのツイートありがとうございます。
    当方ツイッター未登録なので直接お返事出来ませんが、この場を借りて御礼申し上げます。
    今作は週一で八月いっぱいまでの投稿予定です。しばらくの間お付き合い願えれば幸いです。

    2013/07/22 00:34:49 From  たがーる(多賀モトヒロ)

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