ごとんごとんとやや荒い、しかし心地よいリズムが続く。
駅の間が長い為にこの金切り声をあげない一両のリズムが体を揺らす。
青く波打つ稲とそれを追い掛ける雲。遠くで手入れをしているのか、麦わらに首に手拭いらしきものをまいている夫婦が緩やかにスライドしていく。
傍らにはスポーツバックと紙袋。日差しにキラリと紙袋の中で金の枠が光る。沢山の綺麗やら汚いやらウケ狙いのスベった言葉が、所狭しと書き込まれている。足りずに封筒まで入れ込んで…
去年惜しまれながらも笑顔で、クラスどころか友人という友人が見送った友達。幼なじみとしては、そんなに喋っていただろうかというメンツもいたところからアイツの人柄がうかがえる。
本当は夏真っ盛り、クラブ真っ盛り、塾真っ盛りでみんな忙しい。もちろん自分も。
それでも両親の許しを得て逢いに行くと知ると、一気に情報が流出して色紙や遠足などのお土産を持っていけ!と紙袋に詰めて突きつけられた。
メールだってしているだろうに、笑ってしまう。でも自分も再来年の春まではとりあえず逢いには行けない。その後はもっと分からない。
こんな色紙や何やらが出来る事はもう無いだろう。いつしか年賀状だって乏しくなるだろう。その代わり、今の土地や次の行き先できっと慕われる…

「次の行き先…」

どうなるんだろう。まださっぱり分からない。この単線みたいにはいかない…だろう。という憶測だけ。
立派な入道雲がもこもこと鎮座しているのが見えてきた。
下の黒さからしてあっちは雨だろうか。傘、折り畳みしかないな…
向こうは自転車を諦めて、おじさんが車を出すんだろうか…
そんな事を思っているうちについにうとうと寝てしまった。
君と、冗談半分で夢をあーだこーだ喋って笑った夢を見た。

「何があってもまぁ死ぬまでバカ言ってたら上出来っしょ」

そこでふと目が覚めた。雨に湿った土の香りに空気が変わっている。

「次、降りる駅だよ」

車掌さんが笑いながら教えてくれた。寝てるのがバレバレだったのか。

「窓、前見てごらん」

「え?…あ…」

言われた通り進行方向をみると、うっすら虹がかかっていた。町も近づいてくる。
そんな時、声がした。車が並行するように追いついてくる。
窓を全開にして、おーいと呼ぶ君がいた。
思わず大きく手を振った。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

君の街へ(SS小説版)

歌詞の「君の街へ」をショートショートにしてみました。
相変わらず性別不明w
10分弱くらいの出来事です。
夜行列車に乗りたい気分。トワイライトで北海道!

閲覧数:114

投稿日:2009/08/08 06:07:29

文字数:966文字

カテゴリ:小説

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  • +KK

    +KK

    ご意見・ご感想

    はじめまして、+KKと申します。コラボから来ました。
    助言とかできないので普通に感想になるのですが・・・。
    この短い中によくまとめられたなと思いました。短編本当に苦手なので尊敬します。
    あと、言葉の選び方がすごく上手いなぁと言いますか・・・なるほどとずっと感心しっぱなしで。
    すごく優しい気持ちになれました。素敵なお話ありがとうございました。

    2009/08/10 21:15:33

  • 秋徒

    秋徒

    ご意見・ご感想

    コラボから今晩は、秋徒です。読ませていただきました。

     ただ、このコラボには反することかもしれませんが…、非の打ち所がないくらい素敵でした!自然の描写といい引き込むテンポといい、文句の付け所がありません。あえて言うなら、短い分呆気なさを感じてしまいます。ぶっちゃけこの二人の関係が気になります!友達か、はたまたそれ以上か…←
     あまりアドバイス書けなくてすみません; 面白かったです^^

    2009/08/09 02:19:22

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