タイムスリップって正直もっとカッコいいもんだと思ってた。流石に光ってどうこうとか迄は至らなくとも、もう少し緊張感が欲しいと言うか…。

「痛たたたた…鼻ぶつけたぁ~…。」
「取り敢えず…どけ…重い…。」
「女の子に重いとは何よ!失礼ね!」
「良いから俺の上からさっさとどけ!」

俺と鈴々はどうやらダンボールの山の上に落ちたらしい。潰れて散らかったダンボールを掻き分けながら辺りを確認する。曇り空に風も無く静かな路地は幸いにも見覚えがある場所だった。

「ここって、カラオケボックスの裏口じゃない?」
「だな。」
「…たり共…聞…えるか…?」
「あ、もしもーし、鈴々です。少し遠いけど聞こえますよ~?」

インカムからノイズ交じりの声が聞こえた。一応未来からの通信って事なのか?只の電波の悪い携帯みたいで実感が無いけど…。

「それで?ここで何を?」
「…とな…ゼロとクロアが…会える様に何かきっかけがあったと思うんだけど…。」

俺達は顔を見合わせた。

「えーっと、クロアがゼロさんをラリアットすれば良いんだよね?」
「あの時走ってたな。確か自転車で。」
「あ、そうそう!殺されるかと思ってすっごい逃げた!」
「………………………………………。」
「すいません…。」
「おい…そろそろ時間だぞ?判りそうなのか?」
「えぇ?もーう判んないよ、取り敢えず中入ってみよう!」

何をすれば良いのかも判らないまま鈴々に連れられ裏口から中に入った。柱や観葉植物なんかの陰にこそこそと隠れつつ辺りを窺っていると、入口から元気な声が聞こえた。

「毎度ー!ラーメンと天津飯、それに特製餃子お持ちしましたー!」

ぎょっとして思わずしゃがみ込んで身を隠した。

「うっわ、めちゃめちゃ私だ。凄い不思議な気分。」
「一卵性の双子みたいだな…。」

過去の鈴々は出前の入った岡持を持って二階に上がると、料理をテキパキとトレイに積み替えて部屋に入って行った。その時はっと記憶が甦る。

「岡持だ。確か変な所にあれがあって…。」
「そう言えば躓いてたね…じゃあ岡持を通路に…あ、丁度トイレ入った!持って来る!」

鈴々は過去の自分がトイレに入った隙に岡持を持って来ると、通路の真ん中へ置いて戻って来た。

「…目立ち過ぎだろ、あれじゃ幾ら何でも避け…。」

「わああぁ?!」
「痛ってぇ…?!」

背後で間抜けな自分の声と岡持や食器の引っくり返る音が聞こえた。

「避けなかったね。」
「……………………。」
「お、ポイント修正入ったみたいだな。次のポイントに転送するからそのまま待っててくれ。」

過去の俺…しっかりしてくれ、頼むから!

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  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

コトダマシ-70.ラーメンと天津飯-

岡持痛いよ

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投稿日:2010/12/08 23:16:56

文字数:1,109文字

カテゴリ:小説

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    タ・イ・ト・ルが…!!

    2010/12/09 01:06:56

    • 安酉鵺

      安酉鵺

      ヽ(;´3)ノ?♪

      2010/12/09 07:05:11

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