僕は噛む力をどんどん強めるけど、そいつは本当に何もしなかった。
前脚を上げたまま、ただずっと固まっている…死んだわけじゃないけど。


「…」


そいつは良くわからないことすら、何もしゃべろうとしない。
僕は何かおかしいと思い、噛む力を徐々に弱めてみた。
そして、口をそっと離すと、噛んだ所から赤色が広がる。
僕の体から流れているのと同じものだった。


…痛くないのかな?
ちらりとそいつを見ると、口が前よりも上にゆがんでいるように見えた。
でも、良く見ると今まで見てきた恐ろしい歪みではなかった。
どうして?こいつらは僕たちを殺して食べる生き物でしょ?
実際たくさんの仲間が殺されてるのを知ってるし、目の前で見たことだってあるんだ。
なのに…今頃僕はみんなと同じ目に合っていてもおかしくないはずなのに。


スッ
視界の左端で何かがゆっくり動くのが見えた。
それは、目の前にいる奴の右前脚だ。
ゆっくりと僕の体に近づいてくる。
僕は動けない。もう最後の力まで出し切ってしまたのだから。
やっぱり、口を離しちゃだめだったんだ。
もう…僕は本当に終わりだ。


ビリッ!「ギャウゥーっ!!!!」


右前脚は僕の傷口に触れた。
その瞬間、体中に激痛が走り、僕は叫んだ。
すると、そいつは僕の体から足を離す。
僕は目を閉じ、荒げた息を必死で整えようとした時


ビリッ


この音はさっきと違って表現音ではない。。
近く…そいつから、何かが破れるような音がした。
そして、また僕の傷口に何か柔らかいものが触れる。
…痛くない、むしろ痛みが少し和らいだ気がする。
そろりと目を開け見てみると、赤く染まっていたはずの所が白くなっていた。
少しずつ赤色がでてきたんだけど。これはなんなんだろう?
状況がよくわからず、元凶であるだろうそいつの方を見ると…


最初にはあった、そいつの体の一部が無くなっていた。

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キツネの恩返し~プロローグ2~

閲覧数:56

投稿日:2011/08/05 20:52:54

文字数:801文字

カテゴリ:小説

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