「いいか、遥?この世界はどんなことがあっても、日は暮れて、夜がきて、そしてまた日が昇って一日が始まる。その一日の中で、人々は世界の『歯車』として存在するんだ。人々が活動することでその『歯車』は回って、世界が回るようになっている。」
俺は、その話を目を丸くして聞いていた。
「その『歯車』が無くなっても、その空欄を残したまま『歯車』は回り続ける。たとえ、空欄に気づかなくても同じことだ。でも、小さい『歯車』を増やして空欄を埋める。その『歯車』の種類は一つ一つ違ってな、目立つものも目立たないものもあるんだ。だから遥、お前は………」

………気が付いたら腕をとっていた。
「…はぁ…はぁ…は……る…か。昨日の…話…覚え…て…るよ…な。」
「分かったから!今は…」
「遥…お前は…その…中で………」

鳴り響くアラームの音で目を覚ました。そして理解した。今のは夢だったと。…朝から暗い気持ちにさせる悪夢は、今日のは少したちが悪い。あれを悪夢にしなくても…と行き場のないストレスをため息と一緒に出そうとした。が、そんなことよりリビングに行くことを優先した。

俺の能力は万能なわけではない。世間では特別な力が欲しいだとかほざいてる奴がいるが、俺みたいなものもあるということを知っておいたほうがいいと思う。まずこの能力のことだが、俺は生まれながらにこれを持っていた。いや、性格には体内に入っており、レントゲンでパイプが見つかった。医者から異物として出産した女性に告げられると、女性は施設に俺を預けた。俺は捨てられたのだ。なぜそれが分かるのかというと、その当時から思考、感情が共に存在していたからだ。その時から能力のことを知っていた。変身のやり方、スモークエネミーズの存在、自分の使命、それら全てが頭の中にあった。しかし、この能力は便利ではなかった。世間が理想としているのとは程遠い。まず必殺技なんてないし、武器は剣一本で、多少は強化されているが戦っているのは自分自身の体だ。傷を受けたら、自分の治癒力に頼るしかない。とはいえ、そんな理由で戦いをしないわけにもいかない。そのあと、仲良くなった鮎と一緒に母さん達に引き取ってもらって幸せになった……つもりだった。この力を持って幸運か不運かでいえば、俺は不運であった。

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誰も知らない一人の夜明け 第4話 暗い悪夢

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投稿日:2018/04/10 19:26:45

文字数:951文字

カテゴリ:小説

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