俺の雇い主の名前はバニカ・コンチータ

今は,食べることが大好きで,毎晩毎晩,楽しい晩餐を開いている



だけど,大丈夫だ
彼女にとっては,それが幸せだから

『おーほっほっほっほっほっほぉ!!』とか毎日叫んでる














「バニカ様」



俺が話しかけるのは,俺の雇い主

俺は,えぇと……
確か,今年に入ってから15人目のコックらしい

茶髪で,赤い服のバニカ様は俺に休みなんてものはくれない
一日中,何か食べてるからな




「本日の,夕食のことなのですが……」


「何?」


「食材が,なくなりました」


「メイドと召使に買いにいかせれば良かろう」


「それが,今二人は部屋でゲームをしているとのことで……」


「……」


「……バニカ様?」



「いい」


「何がですか?
 ゲームですか?」


「今日は,私が買い物に行こう」


「マジですか!?
 ゲームいいんですか!?
 あいつらに行かせればいいのでは……?」


「……何か不服でも?」


「い,いえいえ!
 そんなことはございません!!」


「良かろう」


「でも,何買うか分かります?」


「……」


「どうやって買うか分かります?」


「…………」


「お金の計算できます?」


「………………」


「何処に行けばいいか分かります?」


「…………分かんねーよ!!!!!
 わりーかよ!?
 だって,私,普段この屋敷出ないもん!!
 あぁ,おじょーさま育ちですよ!?
 何か文句でも?」


「……一緒に行きますか」


「そうそう
 初めからそう言えばいいのよ」



バニカ様は,怒ると怖いです



「それじゃあ,10分後,またここで」


「了解いたしました」






10分か……
その間に着替えて,財布持って,召使たちとゲームして……

あぁ,一応『初めてのおつかい』的なものになるだろうから,地図も用意して……



出来るだけ,バニカ様に主導権を握らせてあげよう








「……どうしたの?」



10分後,俺とバニカ様は再び同じ場所に戻ってきた
バニカ様は,いつもと同じ赤い服

俺は……



「町とは,そんなみすぼらしい格好で行く場所なのか?」


「……い,いいえ」


「じゃあ,どうしたというのだ?」



俺は,ちょっとゲームをしに双子の召使とメイドの元を訪れた

で,何か,勝ってしまった
コインも取りまくった
双子は,戦死した
俺はレベルアップした


双子は怒り狂い,俺を殴りに殴った
服を破りに破った
ペンで顔に落書きもしてきた






「まぁ,良いであろう」


「……え?」


「このまま行くぞ」


「え,ちょ,ま……」


「何だ?」


「せめて,顔だけでも……」


「しょうがないやつだなぁ……
 あと5分だ
 5分で支度をしろ」


「りょ,了解いたしました」




5分後,俺はきちんとした格好でバニカ様と屋敷を出た















「バニカ様は,夕食に何を食べたいのですか?」


「そうねぇ……」



バニカ様は世界にその名を轟かせた,美食家だった人だ
何が飛び出してきても,驚いたりなんかしないぞ



「久しぶりに,アレが食べたいわ」


「何ですか?」





「ダンゴムシ」





「……へ?」



今,この人何て言った!?
ダンゴムシ!!??



「ダンゴムシ……ですか?」


「えぇ
 あれはね,結構美味しいのよ」


「そ,そうですか……」


「何?
 信用してないの?」


「い,いえ!
 そんなことは!!
 バニカ様の舌に間違いがあるわけないじゃないですか!!」


「そうよね」


「はい!
 もちろんですとも!!」




下手に反論して「やっぱり,今夜の夕食はお前」とか言われても困る

バニカ様は別名『人食い女』と呼ばれているぐらいだ
言われても不思議ではない



「ダンゴムは何処に売ってるのかしらー?」


「建物の影になってる岩の下とか探したら出てきますよ」


「えぇ……
 それじゃあ,せっかくお買い物に来た意味がないじゃない」


「まぁ,そうですけど……」


「よし
 メニュー変更」


「マジですか!?」



やったー!!
ダンゴムシを料理するのは御免だったからな



「そうねぇ……」



さぁ,今度はどんなものが飛び出してくるんだ!?



「……シチューが食べたい」

「シチュー……?」



あれ?
バニカ様にしては普通の答え?



「うん
 久しぶりに,シチューがいいわ」


「分かりました
 それでは,早速材料を買いに行きましょう」


「えぇ」


「何を買うか,メモしますね」


「分かってるわよ」


「……え?」


「シチューはね,私の大好きな食べ物だから……
 これだけは,ちゃんと覚えてるの」



そうなのか……



「じゃあ,俺はここで待っておきますから,バニカ様いってらっしゃいませ」


「うん!」






パタパタと駆けて行く,その姿は愛らしく,とても『人食い女』と呼ばれるような女性には見えない

きっと,本当は心の温かい優しい女性なんだろう
ただ,素直になれないだけで……




















「……ねぇ」


「はい?」



屋敷への帰り道
バニカ様が「自分で持つ!」と言うので,本来ならば俺の仕事だけれど,食材はバニカ様が持っている



「あ,ありがとね」


「……」

「私,普段はさ
 屋敷から出ないから……
 今日,こうやって外に出れたの,楽しかった」


「バニカ様に喜んでいただけて,俺も嬉しいですよ」



俺は,この人にそんなに思い入れがあるわけでもない

ただのコックだ
たまたま,料理が出来ただけだけ

それだけのことなんだ


彼女は,食に対しては,とてもとても厳しい
だけど,中身はとっても優しい人だ

皆が恐れる理由が俺にはイマイチ分からない



「屋敷に帰ったら,とびっきりのシチューを作りますね」


「き,期待しておこう」




























俺が悲鳴を上げたのは,それから10分も経っていなかったはずだ

厨房に着き,バニカ様が握っていた袋を開ける


中からは……







「バニカ様!?」


「何だ?
 騒々しい」


「貴方の中でのシチューって何なんですか!!??
 ジャガイモは?
 ニンジンは?
 タマネギは?
 肉は?」


「じゃがいも?
 にんじん?
 何を言っているんだ」



もしかして……



「シチューといったら,まず,カブトムシだろ?」




あぁ
母さん




「それから,屋敷にも発生するGの存在を忘れてはならないだろ?」




俺は,あの時貴方にこう言いました




「あと,季節の虫だろ?」




『ボク,おーきくなったら,いちりゅーのこっくさんになるんだー』




「今の時期だと,蚊なんか,いいんじゃないか?」




その夢は叶いました




「最後には,トッピングでダンゴムシだ!!」




でも,夢というのは,叶えてからが大変なんですね……




「さぁ,作れ作れ!!」




俺は,いつ母さんの元に逝けるのかなぁ……




「腹が減った!
 早く,上手い飯を作るのだ!!」












この主が満足するまで,もう少し
俺はこの世界を頑張って生きようと思います……

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

食せよ われらがコンチータさま!×うだつの上がらないコック

ここまで読んでくださった貴方
ありがとうございます!


まずは,ふざけなしの素晴らしき原曲様
http://www.nicovideo.jp/watch/sm6328922





今回も悪ノP様!
……なのですがww…………

「コンチータを楽しく書いてみよう!」ということでこんな文になりましたww

『うだつの上がらないコック』目線です!
なので,こんなキャラになりましたwwww



歌に参加してる双子が出てこないという……





ご意見・感想,いただけるととても嬉しいです
よろしくお願い致します!!

閲覧数:1,452

投稿日:2011/04/10 15:57:56

文字数:3,158文字

カテゴリ:小説

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