●ライバル店から、ブームが生まれた!

「なんで、コレがそんなに売れるんだろうね」
メイさんが、机の上に置いた、カエルの形のリラックス枕を見て、つぶやいた。
「うーん」
「うん」
机の反対に座った、カイくんとミクちゃんも、のぞきこんで、一緒にうなってしまった。

キディディ・ランド原宿店のスタッフルーム。
メイ社長、カイくん、ミクちゃんの3人が見ているのは、いま大ヒットしているグッズだ。
...「アマガエルのフォギー」。
残念ながら、キディディ・ランドで売っている商品ではない。

若い女性から、シニアの女性まで、店に並んで買い求めるという、ヒット商品。
チェーンの雑貨店「らら」で、店舗限定で販売しているものだ。

この商品の情報を持ってきたのは、カイくんたちの兄妹ショップの「ナチュラル・ハウス」のアン店長だ。
このところ、彼女のお店のお客まで、近くの「らら」に取られがちだ、と嘆いているらしい。


●どうして売れたんだろう?

「あたしにゃ、可愛いとは思えないけどねぇ」
口の悪いメイ社長は、若いのにしかめ面をして嘆いた。
カエルの形で、明るい色使いの服を着たリラックス枕。
「うーん、どこか似てるな」
カイくんがつぶやいた。
「テトさんたちの作ってる“ミクドール”の服にそっくりだよ」

「うん、ワタシもそう思った」
ミクちゃんが言う。
「これを、デザインしたの、誰だろう」
ミクちゃんの問いに、メイさんがつぶやいた。
「うーん、よくは分からないけど、“らら”が使っているデザイナーの作品だと思うわ」

「らら?うん?ちょっと待って」
ミクちゃんは首をかしげた。
「これ、雨ガエルよね。フォギーって、英語のfoggy、霧のことね。雨、霧...」
彼女は何か考えているようだった。


●ブームの裏側を探れ!

2日後。
ミクちゃんは、テトさんと、デザイナーのマコさんと一緒に、新しくできた「ゆうひ」というカフェを訪れた。
ここは、テトさんのお店とも付き合いのある、サンセット・ギャラリーが経営するお店だ。
「どうぞ、ごゆっくりね」
店長のモモちゃんが出迎えてくれて、特製のお茶を出してもてなしてくれる。

「ええ。うちもその“アマガエルのフォギー”は、よく知ってますよ」
お茶をすすりながら、マコさんが言う。
「うちも、グッズを見たとき、テトさんの“ミクドール”に似とるなと思いましたん」
「やっぱり、似てますよね」
ミクちゃんが言う。
「そうなの?」
テトさんが心配げに言う。

「“らら”は、きわどい商売しはりますん。そういうアタシも、たまにファッションのデザインで、“らら”と付き合うことありますけどね」
マコさんは、苦笑いした。
「ふーん」
ミクちゃんは腕を組んだ。

「でもね、うちの居る“ニコビレ”。あすこのデザイナーは、“らら”と仕事すること多いです。うちとこの“てんわ”のルナちゃんもそうやし」
「そうなんだ」
テトさんはうなずいた。
「ま、似てるけど、取り立てて気にするほどでもないわ」
「でも、あんだけいま大ヒットして、ブームになってると、気になりますねえ」
マコさんの言葉に、二人はうなずいた。

「メイさんも、アンさんも、お客を取られないかと、心配してたな」
ミクちゃんは、つぶやいた。
「そうだ!このアマガエルのどこがいいのか、アニキに探らせよう」
「アニキ? カイさんに?」
テトさんが聞く。

「うん。今度、女装させて、“らら”に買いに行かせてみるよ」(* ̄  ̄)b

(Part2につづく)

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

玩具屋カイくんの販売日誌 (103) 「らら」の大ヒット商品! Part1

雑貨業界って、いつどんなものがヒットするのか。ほんとに“水もの”なんです。

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投稿日:2011/05/07 23:23:34

文字数:1,468文字

カテゴリ:小説

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