注意:続編です。
カイメイです。苦手な方はご注意の程を。
「…ありがとう、メイコさん…」
歌い終えたメイコさんに改めて言うと、僕の肩口からメイコさんが見上げてきた。僕の顔を見てにこりと笑う。
「少しは浮上したみたいね」
「ご心配おかけしました…」
「たまにはこういうこともないと困るわ」
「…え?」
僕にもたれたままの意外な言葉に、思わず聞き返してしまう。間髪いれずに返答が来た。
「だって、悔しいもの」
「悔しい、って…」
「いっつもあんたは余裕綽々で、私の方が弱み見せて頼ってばかりじゃない。そんなのじゃ一緒に居てもお荷物ってことでしょ?」
「…一緒に…」
それは流石に悔しいわ、と拗ねたように呟いた後、はたと気付いたようにメイコさんが動きを止める。
「メイコさん?」
呼びかけると、思いっきりうろたえたように身体を離してから、僕に向き直った。あ、顔真っ赤。
「べべべべべ別にずうっとあんたと一緒に居たいからお荷物になんかなりたくないとか思ったわけじゃないからね?!」
…思ってなかったらその言い訳は出て来ないと思うんだけど。
「単にえっとその…、そう、一方的に頼ってばっかりなのが嫌なだけで他意はないわよ! あんたに落ち込まれてるとこっちの調子が狂うしっ」
ぷいっと顔を背けられる。
あんなに諫めてくれて、もたれてくれて、歌ってくれて、今更何を、とか言おうかと思ったけれど、止めた。
代わりに自然に笑みが浮かんでくる。
さっきまでの強気でお姉さんなメイコさんも素敵だけど。
顔を真っ赤にしたままの拗ねてるメイコさんも可愛くて仕方ない。
本当、こういうところは素直じゃないんだから。どうしてストレートに言ってくれないんだろうなあ。
大人っぽいところも、子どもっぽいところも、愛おしいメイコさんを見ていて。
かちりと音を立てて、繋がっていなかった回路が繋げられたような感じがした。
完璧じゃないから一緒に居たい。
良いところも悪いところもあるのが当たり前だから。
お互いに、足りない部分を補い合って、支え合って、歩いていく為に。
「ねえ、メイコさん」
「な、何よ」
ちらっとだけ目線を寄越す仕草がまた可愛らしくて。
「…ぎゅってして良い?」
伝えた欲求に、ぴしっとメイコさんが固まるのを感じた。
「い、いつもは訊く前にしてきてるじゃないのっ」
「じゃ、しても良い?」
「だから何であえて訊くのよっ?!」
「メイコさんの口から聞きたい」
「っ、あ、あんたねえ…っ」
「…ダメ?」
じっと見つめる。メイコさんが何度か僕をちらちらと見てくるけど、やっぱり、じっと見るだけ。
しばらく経って。
ぼすっと音を立てんばかりにメイコさんが僕の腕の中に飛び込んできた。
…勢い良すぎて、ちょっと、痛いんだけど。でも。
「ありがと…」
小さく囁いてから、そっと腕を回して緩く抱き締める。良く見ると耳まで真っ赤。本当、可愛いなあ。
いつものようにとんとんと軽く背中を叩くと、メイコさんの身体から力が抜けるのが分かった。
支えてくれたメイコさんが、僕にもたれてくれているのが、…こんなにもしあわせだなんて。
メイコさんもひょっとしてそんな気持ちだったのかな。
本当に。メイコさん抱き締めてる時が、一番落ち着く。
僕の欠けている部分をぴったりと埋めてくれる。
…明日になったら。
がくくんに謝りにいこう。そして、改めておめでとうを言おう。今度は心から言えるかな。
それから、リンちゃんに話をしに行かなきゃ。ミクちゃんの誕生日、どうやって祝うつもりなんだろう。
自分が生まれてきたことをおめでとうとはまだまだ言えないけど。
…ありがとうと言ってくれた存在があることを忘れないから。
大切な存在の誕生日、きちんと祝ってあげたい。
…あ、そうだ。
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