造花の薔薇.間章:sideメイコ

投稿日:2010/06/25 07:46:59 | 文字数:4,428文字 | 閲覧数:398 | カテゴリ:小説

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めーちゃんですね。めーちゃんですよ。
一介の剣士説も捨てがたいけど、こういう「王家を護る」側の人間だったらやっぱり簡単には刃を向けられないだろうな、と思います。

そして何だこの長さ。ちょっとびっくりしました。

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知らせることは永遠に無いでしょう。

<造花の薔薇.間章:sideメイコ>

カイトを包囲の最終確認に向かわせて、私は一人部屋の中で剣の手入れをしていた。
王宮の真ん前にある宿の一室。普段は入ることの無いような広くて豪華な部屋だけれど、宿の主人夫妻が私に協力してくれたおかげで一部屋まるまる借り受けることが出来た。
普段見ないような内装はついじっくりと鑑賞してしまったけれど、もう最後の時まで時間は無い。好奇心を満たす時間があるならコンディションを最高にしておきたかった。

一心に剣を研ぎ、磨く。これをすることで同時に心も研ぎ澄ませる事が出来るから、大切な作業の一つでもある。
でも、何故なのか…妙に心が重い。しこりのような何かが心が澄むのを阻んでいる。

―――どうしたのかしら、私は。

溜息をつき、磨き上げた剣を鞘に収める。
理由が分からない分、もやもやした感覚は強くなるばかりだ。
でもだからといって追及するだけの時間も余裕も無い。後でゆっくりと考えることにしよう。

「メイコさん!」

入口から掛けられた声に顔を上げる。
ルカの声ではない。

―――そういえばさっき戦術について色々相談をしてたわね。

参謀役もこなす彼女だ、忙しい時もある。そのため何人か彼女の補佐をしてもらう人を決めたのだが…どうもそれが効を奏したらしい。

「あの、どうしてもメイコさんに会いたいという人がいまして」
「そうなの?通してくれて良いのに」
「で、でも、是非二人だけで話したいと」
「あら愛の告白かしら。まあ問題はないわ」

まだ渋っている取り次ぎににこりと笑いかける。今が大切な時期だから敏感に反応するのも分かるけれど、正直大底の相手なら攻撃されたとしても遅れを取るつもりはない。
仕方なしという雰囲気のまま、取り次ぎは一人の男性を部屋に導き入れた。
紫の髪とすらりとした体付き。なかなかの美形だ。


彼は綺麗な動作で歩み寄ってくると、丁度良い位置で立ち止まった。

「メイコ殿でござるな」

脳裏をよぎった一瞬の既視感。覚えていないけれど、彼とは何処かで会ったことがあるのかもしれない。
途切れた記憶を辿る術もないから、とりあえず質問に頷く。

「そうよ」
「革命の先頭に立っているのは貴女、なのでござるか?」
「…まあ、そうなるわね」

私は少し躊躇ってから答えた。
影響力という点では、対外的にはカイトも随分な力を持つ。でも実質的な統率者として考えるなら私の方がトップだと言うべきだろう。
目の前の彼はそれを聞いて、とても真剣に私を見た。
まるで初めから駄目だと分かっているけれど言わずにはいられないかのような必死さで、ひたむきに私を見詰めた。

―――どうしたのかしら。

この追い詰められた雰囲気は良く分かる。私もかつて同じものを纏っていたし、この革命軍に参加している人々の纏うものでもあったから。


この目は、まだ護れるかもしれないものを護ろうと決意した―――そんな目だ。


「お願いがござる」
「お願い?私に出来ることならいいのだけど」
「メイコ殿なら、いや、メイコ殿にしか出来ぬことでござる」
「私にしか?」

頷いて、彼は言った。




「思い止まってはくださらぬか」

「…え」



私は自分の耳を疑った。
だってまさか、そんな台詞を聞くことになるとは思わなかったから。
何と言っても私達が立ち向かうのは悪の娘、酷政を敷いた傲慢な王女。だから民は皆賛同するものだと思ったし、実際皆が私に協力してくれた。

でも、まさか、今―――こんな時になって。

「…どうして?」
「拙者は王女に死んでほしくないのでござる」
「――――」



息が止まるかと思った。


貫かれるような衝撃。絶句した私に彼は続けた。


「メイコ殿達には許せない願いであろう。しかし拙者は王女が…リン殿が本当に暴虐を尽くしたのだとは信じられない。だからリン殿の命を奪わないで欲しいのでござる」


確かに王女は捕らえられれば間違いなく処刑される。処刑せずに追放などしたところで誰も納得せず、結局は誰かに殺されてしまうだろう

革命が成功するとは、そういう事だ。

「…でも、実際に彼女は許されない事をしてきたわ」
「そう、実際にはリン殿はわがままの極みを通してきた。…だから、それを恨む気持ちもないではないでござる」

でも、どうしても憎み切れない。

そう言う彼を改めて見遣る。



そうか。

私の中の変な所に、すぽんと納得が生まれた。

そうか。彼は。―――彼も。

そして、私は。



納得した途端に胸の奥から熱いものが込み上げてくる。
その噴き上げる衝動に身を任せたい。でもそれは、今の状況を考えればけしてしてはいけない事だ。

だから、私は剣を握った。

「無理よ」

今まで私に味方してくれた民の顔を思い出せるだけ思い出す。
例外なんてない。人である限りその命も訪れる終わりも、そして因果応報の法則も平等に与えられている。
例外なんてない。

あってはいけないのだ。

「彼女はもう十分贅沢を尽くしたでしょう。罪無き人々の命の上にあるその生は許されるものではないわ。もしそれ以上言い募る気なら、
剣を抜きなさい」
「メイコ殿」
「王女は、許されてはいけないのよ」
「…っ」

私が譲らないと察したのか、渋々と、しかししっかりとした手付きで彼は剣を抜く。剣、ではなく刀と言うべきかもしれない。私も余り見たことのない、片刃で細身の刃物だった。
この奇特な人物に似合いの、珍しくも鋭く美しい武器。武器は自分に合う人を選ぶのかもしれない。
ただ、今はそんなに悠長に分析をしている暇はない。

「そうよ、…お願い」

私は剣を構えた。
口の中で小さく呟く。けして誰にも知られてはいけないから。






「私の代わりに―――王女の為に戦って」






―――王女。

(父さん)

私は本当は、彼のように王家の『為に』戦いたかった。
貴女を倒すのではなく、護りたかった。
だから貴女を助けたいという言葉はとても嬉しかった。それこそ衝撃的な嬉しさだ。
同時に、彼が羨ましい。私こそ、本当はそこに立って王家の盾となりたかったのに。
なのに、―――どうして。

どうしてこうなってしまったの。



込み上げる感情を抑えるために気迫を込めて前を向く。

私は物心ついたときから、王家の人間を護れることが誇りだった。
そして、ああ、何故気付いてしまったんだろう。

今でも誇りのままなんだと。

大切だからこそ裏切られて憤り、彼女が堕ちていくのを見ていられなかった。
信じていたものに裏切られて苦しかった。
もうそんな姿を見たくなくて、彼女を恨む皆の声が痛くて、哀しくなって…

「がくぽ!?」

悲鳴のような叫び声が私の思考を断ち切った。入口に立つ姿を見ないでも分かる、ルカだ。でも、こんな声は初めて聞いた。

―――そういえば、ルカが居候している家の主人は青年だったっけ。
なら、ルカはなかなかいい住み込み先を見つけたわね。彼なら間違いないわ、色々。

場違いにも微笑ましい気分になって、私は微妙に笑顔のまま剣を構えて駆け出した。

「―――ふっ!」

気合いを込めて薙ぎ払うように剣を振る。反射的に防御の姿勢を取る彼―――ええと、がくぽ、だったかしら―――に畳み掛けるように斬撃を繰り出す。
体捌きは悪くない。時折仕掛けてくる攻撃も鋭く、明らかに訓練を受けたことが伺える。
ただ、恐らくは数年間戦いから縁遠かったのだろう。微かに動きが鈍い。
本当に微かなその差。

でも、勝敗を分けるのには十分だった。

きん、と固い音がして彼の手から武器が飛ぶ。すかさず当て身を喰わせれば、彼は狙い通り悶絶して地面に転がった。
我ながら狙いも強さも完璧な一撃。暫くはろくに歩けもしないだろう。
ちら、と入口から今のやり取りを見ていた人々に目を走らせる。
言葉は良く聞こえていなかったらしく戸惑い顔ではあるけれど、仮にも私と剣を合わせた者だ。放っておいて彼に万一の事があってはいけない。
自分自身を投影した彼だから、死んで欲しくはなかった。

「ルカ、あなたが身柄を拘束しておいて」
「メイコさ」
「命令よ。彼の身に何かあってはまずいの。監督及び保護を任せるわ」

戸惑いながらもルカが頷くのを確かめ、私はいつの間にか引き裂かれていたマントの裾を手に取った。
ぼろぼろで何の役にも立たないだろう。でもここで捨てていく気にはなれなかった。
このマントは父の遺品。私の為す事を父さんにも間近で見ておいて欲しかったから。

思いを振り切るように入口から外へ踏み出す。
顔を上げれば、そこにはとても大きく美しい、王宮があった。
王女はこの中の何処かにいる。逃げていたという報は無いし、仮に逃げ出したのだとすれば草の根分けても探し出す。
それが、私を信じ命を託してくれた皆に対する私の義務だ。

けして裏切ることは出来ない。

準備が終わった、とカイトが知らせに来たのがそのすぐ後だった。
カイトには、王女の助命を願いに来た彼の事は知らせなかった。これからも知らせるつもりはない。カイトが彼の思いを理解するのは…難しいだろうから。








支度を整えて王宮の門前に立ち、私の言葉を待ち侘びる突入部隊を見渡す。
寄せ集めの軍である以上集った人の多くには戦いの技能はないが、殆ど全ての人が逃げ去った王宮であればその点は問題になるまい。
私達の革命は、必ず成功するだろう。
カイトに視線を向ければ、微かな頷きが返ってくる。それを確認してから私は皆を振り返った。
今や革命軍の人数は王宮を囲んで余り有る程に膨れ上がっている。王女が逃げ出そうとしたところでそれは叶いはしない。

引き裂かれたマントの端が、視界の隅で炎のようにはためく。
私は、口を開いた。



「時は来た!悪逆非道の王女を許すな!」



全力での叫びが風に乗り、突入部隊を静まり返らせる。

苦しい。
でも、やるしかない。




リン王女。かつての私達の主。
貴女にはけして言う機会は無いでしょう、私に取ってどれだけ黄の王家が大切だったか。貴女を尊崇したかったか。

こんな終わり方をさせるのは、本当は辛くてならない。

でも、だからといって貴女に慈悲をかけることも出来ない。それは余りに酷な言葉の前に散っていった幾多の命を軽く見ることにもなりかねないのだから。





だから、覚悟をして。
これからは貴女は償わなければいけない。



命を以って。








「全員――――続けぇっ!」







叫んで、門へと足を踏み入れる。
微かに唇を噛み締めながらも、私は全力で駆けた。

鏡音が好きです。双子でも鏡でも他人でも。
というか声が好きなのが原因なのか…それとも設定が原因か…
ちなみに最近ピクシブも同HNでやってます。
タグがいじられているとテンション上がります。何ですか皆さんセンス良すぎです

そういえば、何だかブクマとかコメとか頂いてるようでどうしよう。まさかの100ユーザーブクマ突破かなり嬉しいです。精進します。

文:正直暗いかハイテンションな犯罪臭しか書けません!
  ぽっぷできゅーとな作風って何?私の辞書は欠陥辞書らしく、検索してもヒットしませんでした。

絵:素人も良いところですが練習も兼ねて妄想を垂れ流していく所存であります。


まあ見てのとおり、種族を細かく言えばリン廃です。日々レベルアップしています。
ボカロウイルスは周辺で増殖中。いいぞもっとやれ

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作品へのコメント1

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    ご意見・感想

    なんかもう……いろいろツボをついてくれて、気持ち良いです。メイコの迷いが、本当に心に浸みました。じわりときますね☆

    2010/07/06 01:05:44 From  wanita

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