自分の頭の中に誰かが『脚本』打ち込んでた。そんな馬鹿みたいな話を聞かされた時は正直鈴々ですら熱あるのかな?って疑った。だけど言魂が解けてそれが本当だった事に驚いて、気持ち悪かった。例えるなら…。

「餃子の皮に刺身と生クリーム塗りたくった物食わされた気分。」
「…おえっ!」
「気持ち悪っ…!」
「例えがグロイよクロア…。」

だって本当にそれ位気分が悪かった。戦争を避ける為だか何だか知らないけど、糸引かれてる気分ってきっとこんな感じだろう。

「で?俺は何すれば良い訳?」
「次に起源が近いのは彼女、曖兎音イコだ。」
「イコちゃんは私病院で会ったきりですけど…。」
「俺と流船、それにヤクルはその子見てるよ、暴走してて精神ぶっ壊れてそうな感じだったけど。」
「えっ…?!」
「その暴走と、覚醒の原因がほぼ同時期に掛かってる。」

カタカタとキーを叩いて何やら履歴書みたいな映像をモニターに出した。

「何これ?盗撮サイト?」
「アホか!高校女子テニスの大会予選だ!」
「西の台高校女子テニス部エース、理戒芙花選手にインタビュー、県大会への意気込みを語る。」
「あ、もしかして、イコちゃんが言ってた『芙花先輩』ってこの人の事ですか?」
「そう。彼女が怪我をした事がイコの中でわだかまりになってたんだろう。」
「じゃあ、この子が助かれば良いのかしら?」

その質問に幾徒は押し黙ってしまった。机を何度かトントンと指で叩くと、ペンで紙に何かを書き始めた。何本かのラインと点と数値。正直俺が見たってサッパリ意味が判らないんだけど。

「ここがさっき言った覚醒と暴走の起源となる『先輩の怪我』なんだけど…まぁ、実の所
 この先輩が又怪我をすれば多分覚醒と同時にイコは暴走して此処に呼ぶ事が出来なくなる
 可能性がある。」

幾徒はそう言ってシャカシャカとペンを滑らせラインに大きなバツを打った。

「え?じゃあどうするんですか…?」
「イコが覚醒しつつ『先輩』が怪我をしない、と言う状況が理想的。だけどこれ結果が判らない。」
「はい?」
「…だから、今迄イコはずーっと『先輩が怪我をする』『覚醒する』『治したくて暴走』って言う
 3つの繰り返しで多分それ以外は『脚本』に組まれてない。つまり別の事させたら何が起こるか
 サッパリ不明の博打勝負。」

しれっとさらっととんでもない事を言われて俺を含めた皆が絶句した。最早博打勝負ってレベルじゃない様な気がするんだけど…。誰も試した事が無くて、何が起こるかも予想出来なくて、下手したら取り返しの付かない事になるんだよなぁ。幾徒までもが腕組みをして全員がうーんと考え込んでしまった。このままじゃ埒が明かなくなりそうな予感が…。

「ねぇ、次誰が行くの?何人?」
「出力調整もあるから行けるのは二人だな。」
「じゃあアミダか何かで決めてちゃちゃっと行って助けてみれば良いんじゃない?」

アミダ?!何その世界の命運を賭けたアミダ!この白いお姉さん大物なのかドアホウなのかどっちだろう?

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  • この作品を改変しないで下さい

コトダマシ-73.世界の命運を賭けたアミダ-

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投稿日:2010/12/19 11:57:55

文字数:1,260文字

カテゴリ:小説

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