クリスタル・メロディ Prologue and Chapter1-1

投稿日:2019/05/23 19:43:10 | 文字数:2,690文字 | 閲覧数:4 | カテゴリ:小説

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個人サイトでも連載中のボカロさん達のファンタジー小説。

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Prologue                                              
季節が過ぎ去り散りゆく花のように。
地に落ちて溶ける雪のひとかけらのように。
ほんの一瞬で
何よりも愛する存在だった者のすべてが消え失せた。
はじめは何が起きているのか、全く理解できなかった。
しかし、瞬く間に愛する者の存在を形作っていた全てが血液のように自分の中を駆け巡る。
太陽の光のような色彩に輝く長い髪が。
決して穢れることのない、清らかで力強い光を湛えた瞳が。
どんなに強大な危機にも果敢に立ち向かっていった姿が。
誰をも等しく愛で包み込んだその笑顔が。
止まらない。止まることなんてない。
「あ、あ、あ…」
翠玉のような色彩の瞳に絶望が満ち、唇がぶるぶると震える。
その場に膝をつき、瞳と同じ色の長い髪が乱れるのも構わず首を激しく横に振る。
全身が砕け散りそうなほどの、強大な何かが溢れ出してくる。
「あぁあぁぁあぁああぁああぁあ!!!」
次元全体を、そしてそこに存在する全ての世界達を悲しみで満たさんばかりの慟哭が響き渡った。


Chapter1-1
ー終わりの日まであと3日
リーンゴーン、リーンゴーン。
ムジカシティの都市部の中心にそびえたつ時計塔から、午後5時を示す鐘の音が響き渡った。
それと同時に駅の近くの映画館から、ぞろぞろと多くの人々が出てくる。
その中に4人の若者達の姿があった。
「映画すっごく面白かったね~!!」
ミクは、ツインテールにしたミントグリーンの髪をぴょこっと揺らしながら、大切なひと達を振り返った。
今日は、最近話題になっているアニメ映画を観に行ったのだ。
世界観、キャラクター、演出、ストーリー展開、全てにおいて完成度が高く公開して2週間近くで興行収入20億は超えているという。
「うん!!戦いとかすっごい迫力だったし!!」
「最後、ハッピーエンドなところも本当によかったわ」
頭の上に白い大きなリボンをつけた短髪の少女、リンが強い調子で頷き、パステルピンクのロングヘアの可愛らしい女性、ルカも柔らかな微笑みを浮かべる。
「次の列車、もうすぐ到着ですけど、今日はこのまま帰りますか?」
リンと手を繋いで歩く少年、レンが聡明そうな青緑色の瞳で、映画館の近くの広場の時計を見やった。
「待って、レンくん。わたし、マスターと来れなかったみんなにおみやげを買っていきたいわ」
ルカが近くにあるスイーツショップを指差した。それと同時にミクとリンの瞳がきらきらっと輝く。
「あ~!!それいい!!」
「ルカちゃんナイス!!」
ミクがぶんぶんと音がするほど首を縦に振り、リンが明るい笑顔をルカへと向けた。
レンも頷いている。
「いい考えだと思います。あ、でも、マスター仕事でしばらく帰ってこないので…」
「ええ、チョコレートとか日持ちするものにしましょう。帰ってきた時渡せるように」
ルカがにっこりと優しく微笑んだ。
マスターはミク達の育ての親であり、大切な存在だ。
本人の希望ということで皆「マスター」と呼んでいる。
普段は、このムジカシティの郊外に住まいを構えつつ、世界各地を飛び回り歴史や神話の研究、調査で仕事をしていて、その中で幼く身寄りがなかったミク達一人一人を見つけ、引き取ってくれたのだ。
マスターのもとでミク達も含め10人の子供たちが育ち、年長者の3人は既に家を出てこの街の都市部で暮らしている。
皆に平等に愛を与え、大切なことを沢山教えてくれたマスターのことを全員が敬愛しており、彼女のもとで育まれた一同の絆は何よりも固いものだ。
「さあ、そうと決まったら行きましょう」
ルカが子猫のように軽やかな足取りで歩き出す。ミク、そしてリンとレンも後に続き、一同はスイーツショップの扉を開いた。

クッキーとチョコレートのお菓子の詰め合わせを買い、ミク達は駅へと歩きだす。
ミクは「あまい~、あまい~、おいしいおかし~」と鼻歌を歌うほどに上機嫌だ。
リンもレンと手を繋ぎながら仲睦まじく話をしていて、ルカは優しい眼差しでその様子を見守っている。穏やかな空気が一同を包み込んでいたそんな時、グオォオォオと突然地面が大きく揺れた。
「うあっ!!じ、じしん!?」
ミクはよろけて転びそうになるのを、足元に力を込めてかろうじて防いだ。
周囲の人たちも足を止め、ざわついている。
幸い大きく揺れたのは、最初の方だけで振動は次第に緩やかなものとなっていった。
ルカが「あと1分くらいかしら」といつものおっとりした調子で周りを見回し、リンとレンはお互いしっかりと手を握り、声を掛け合っていた。
「リン、すぐ収まると思うから、このままじっとしてて」
「うん!!」
揺れが完全に止まると、周囲の人々が何事もなかったかのように歩き出す。
その様子を見て、ミクはホッと息をついた。
「あー、びっくりしたー」
「ええ。でも転んだりするほど大きくなくてよかったわ。お菓子もこうして無事だし」
ルカが柔らかく微笑み、スイーツショップの紙袋を軽く振りながら皆の顔を見比べた。
彼女の言葉にレンが頷く。
「ですね。リン、大丈夫か?」
「へーき、へーき!!レンがしっかり手を握ってくれたもん!!」
リンが、レンと繋いでいる方の手を軽く持ち上げて、ニッと笑った。
「リン…」
「レンは?」
「大丈夫だ。心配してくれてありがとう」
レンもリンに微笑みかける。皆が互いの安全を確かめると、駅ビルのスクリーンにニュースが映し出されていた。
そこでは世界各地でここのところ、先ほどの地震のようなちょっとした揺れが毎日続いたり、大雨、突風といった異常気象などのおかしな出来事が急速に増えているということが取り上げられている。しかも、原因が分からず専門家の間でも、様々な考察が立てられてるらしい。
「…なんか、あの映画とちょっと似てるね」
「ちょ…ミクちゃん。変なこと言わないでよ~」
リンがミクの言葉にふるるっと首を振る。
「あら」
ルカがぽんと、軽く両の手のひらを合わせた。
「みんなそろそろ時間だわ」
彼女に促され、スクリーン下部のデジタル時計の表示を見ると17時20分。
ミクがあっと声をあげた。
「そうだった!!列車!!行かなきゃ!!」
「行こ!!レン、ミクちゃん、ルカちゃん!!」
一同はやや駆け足で駅に向かい、改札をくぐる。
丁度やってきた列車に乗ると、四人は窓から見える都市部の美しい街並みを眺めつつ、今日観た映画の感想などの会話を楽しむのだった。

つづく

VOCALOIDさんが大好きな絵描き兼物書きです。よろしくお願いします。
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個人サイト(ボカロ小説連載中)→https://flowerfantasy.amebaownd.com/

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