ＡＨＳは帰ってしまった。
　もちろん、何もおごってくれずに。あ、ユキちゃんは飴玉一個くれて、いろはちゃんはクッキー一枚、mikiちゃんはポテチ三枚くれたけど。
ル「リンちゃんレン君、先生は戻ったわよ」
　助かった！　先生に怒られずに済む。あれ、でも何を？
レ「ご飯何？」
ミ「ネギ！」
カ「アイス！」
レ「ご飯何？」
メ「お米」
リ「と？」
メ「お米」
　……まさかそんな。
　お米だけ……。
メ「あと味噌汁」
　……米と味噌汁、だけ。




　味噌汁は、『味噌汁』だった。
　味噌を解いた汁。味噌汁。
　具が、ない。
リ「本当に、味噌汁だね……」
メ「余計なものが入ってない、純粋な味噌汁よ。本物の味噌汁」
　いやまあ、そうなんだけど。
カ「アイス入れてほしかったよぉ（泣）」
ミ「ネギ（泣）」
ル「マグロ（泣）」
レ「バナナ（泣）」
　さすがにアイスとバナナは味噌汁には入れないでしょ。
　てか先生ケチすぎ。なんでおごってくれないんだよ！
リ「ふりかけとか納豆とかもないの？」
メ「もったいない」
　そんな……。
テ「いやっふー！」
ネ「……ピピピピピッ」
ハ「ごめんなさいごめんなさい失礼いたします……」
　突然無断に上がりこんでくる亜種三人。
　この中で一番まともな挨拶をしているのが弱音さんだって事にすごく驚いた。
レ「ノックくらいしろよー」
テ「……してなかった？」
ネ「べっ、別に早くレンと会いたかったからノック忘れてたとかじゃないんだからねっ///　勘違いしないでよバカ！///」
ハ「ごめんなさいごめんなさい……」
カ「めーちゃん、鍵かけてなかったの？」
メ「かけたわよ」
ハ「ごめんなさいごめんなさい、植木鉢に鍵が隠してあったからって勝手に使うなんていけないですよねごめんなさい……」
　なんでそんなバレやすいところに置くの！　あ、そこじゃないか。
　なんで勝手に使うの！
ミ「何か用？」
テ「冷たいなあ！　早く返すんだお！」
　重音さんがミク姉に向かって手を出した。
テ「僕のお金でネギを買ったんだおね？」
ミ「……あああああああ！　ごめんテトさんじゅういっさい、お金ないの！」
テ「三十一歳じゃないお！　僕は永遠の15.5歳だおー！」
　ふつう、年齢に小数はつけません。キメラではない限り。
テ「それよりなんだお、お金がないって！　僕はちゃんと今日取りに行くと言ったはずだお！」
ミ「えへへー」
ネ「それより何このみずぼらしい食事……」
リ「何か文句でも？」
ネ「レンにこんなの食べさせてるなんて……許せない！」
　大丈夫かこいつ。２ちゃんに工作書き込み過ぎて頭おかしくなったか。
ネ「おいリン！　表に出ろ！」
リ「なんで私なのよ！　ご飯用意したのはＭＥＩＫＯ姉ｄ(ry」
ネ「うっさい！　レンにこんな少ししか食べさせないなんて、いくら姉でも許せないわ！」
　思いっきりレンに聞こえてますよ～。気付いてますか～。
レ「んじゃおごって」
ネ「え？」
レ「そんなん言うなら、ネル、おごって。俺らの飯」




　近所のファミレス。私は一番高いステーキ肉を注文してやった。
　実際、肉食べたかったし。
リ「ごめんね～ネル、おごらせちゃって」
ネ「レンのためなら！　あっ、レン、えと、違うから！　今のなしっ///」
ミ「ネルちゃん、私ネギパフェ特注で作ってもらいたいんだ」
ネ「やめろよ」
テ「僕フランスパンだけでいいよ」
ネ「そんなのねえよ」
ハ「ドン・ペリ飲んでよろしいでしょうか？」
ネ「ファミレスにドン・ペリなんかねえわ」
ル「ネルちゃんごめんね(笑)」
ネ「最後の(笑)いらねえよ」
メ「私、酒！」
カ「あっ、特上アイス盛りよろしく～」
レ「リン、ステーキにしたの？　じゃ俺もそうしよ」
ネ「ええええっ!?　金がなくなるじゃない！　べっ、別にレンのためなら全財産はたいてやるとか思ってないけどさ///」
　このツンデレうっとうしいな。
　しかも顔の赤らめ具合がそれっぽいじゃないか！　なんでお前はそんな可愛くツンデレするんだよ！
　あっ、ごめんなさい。なんかキレちゃいました。
　上手にツンデレできるって、うらやましい。
　お金もあるなんて、うらやましい！
　ネルをにらむと向こうもにらんできやがった。
ハ「……あれ？　ネルちゃんって、お金持ってましたっけ……？　確かネルちゃんの胸並みになかったと思うのですが……」
ネ「うるさい！　まだお年玉が残ってるから平気！」
テ「アホの集団クリプトンに貴重なお年玉を使うの？」
　悪かったなアホの子の集団で。
ネ「べっ、別にレンのためにわざわざお年玉から払うとかじゃないんだからねっ///」
　今日約四回目のツンデレ。
　スルースキル四段のレンは見事にそれを無視。おおっ、すごい。
帯「お客様、ステーキをお持ちしました……ってあれ？　兄さん？」
　あ、帯人君だ。
　ていうかＫＡＩＴＯ兄の他にも大勢いるんだけど、帯人君の目に兄さん以外入っていない。
カ「帯人君っ！　めめめめーちゃん、助けてえええ！」
メ「何よぉ、帯人君に失礼じゃない」
帯「ねえ兄さん、どこにいたの？　ずっと探してたのに……」
メ「ほらあんた探されてたんだって！　帯人君に謝りなさいよ」
　ヤンデレというものがよく分からないＭＥＩＫＯ姉が、のんきに言う。
帯「それよりさ……この乳デカ女はなんなの？」
カ「めめめめーちゃん！　ＭＥＩＫＯ！　ほらっ、日本語女性ＶＯＣＡＬＯＩＤの！」
メ「こんちはー、ＭＥＩＫＯです」
帯「兄さんとどういう関係なわけ？　肉体関係ができあがっちゃってるの？」
　肉体関係って……一応食事中だからそういう話はやめてほしい。
帯「兄さん、なんでこんなつるぺた四人と乳デカ三人とショタ一人と仲良さそうにしてるの？　なんで？　なんで兄さんの隣に僕以外の誰かがいるの……」
　わーわーわー！　死亡フラグ！
　帯人君はポケットから棒状の何かを取り出した。
帯「兄さん、逝こう？　一緒に、どこまでも」
カ「うわあああああっ！　めーちゃんっ、助けてよおおおっ！」
帯「……今はみんな見てるから……後で、兄さんちに行くね」
　えー、来ないでほしいなあ……。