ビターチョコレート
「リン、チョコ食べる?」
ソファーに寝転んで雑誌を読んでいたリンに、ルカがそういえばと声をかけてきた。
「うん!食べる食べる!」
甘いものに目がないリンは、もちろん元気よく即答した。パッと起き上がってルカの側に駆け寄る。
「ふふっ、そう言うと思ったわ。はい、あーん」
にっこり微笑みながら、銀紙の包みを開き、チョコを指先につまんでこちらへと突き出した。
「あーん」
親鳥に餌をもらう雛のごとく、何の疑いもなく口を開く。
突き出されたチョコをそのままぱくんと口に入れ、一口サイズのそれをモグモグと咀嚼して味を堪能……あれ?
「うわっ、なにこれーっ!?にっがーい!」
それはどうやらビターチョコレートだったらしい。口いっぱいに広がるカカオの苦味。甘い甘いチョコを期待していただけに、余計苦く感じる。思わず少し涙目になる位に。
そんなリンを、ルカが満足そうにニヤニヤ笑いながら眺めていた。
「あら、リンにはちょっとビターだったかしら?」
自分も同じチョコを口に入れながら、わざとらしくそんなことを言う。絶対、リンのこの反応を予想していたに違いない。
「……っ、ルカさんのいじわる!」
涙をにじませ、上目遣いでルカを睨む。半ば本気で悲しくなってきた。
「じゃあ、甘くしてあげる」
不敵に微笑むと、ルカは企むような目をしながらスッと距離を縮め、リンの頬に手をかける。
「へ……?」
ルカの言葉の意図が分からず、固まったままルカを見つめるリン。
ルカはそのまま顔を近づけると、目尻にキスをして浮かんだ涙を音を立ててついばんだ。
「ちょ、」
リンの抗議も聞かないうちに、今度は腰を抱き寄せて唇を塞いだ。
「んっ……」
すぐに舌が入ってきて、リンのそれに絡められる。ピクンと身体が勝手に反応する。ルカの舌にのったビター味のチョコが、二人の熱で溶ける。
「は……んん……」
溶けたチョコのとろりとした感触のせいで、いつものキスと少し違うように感じた。なんか、エロい。
「ふ……ん……んんっ……」
苦かった筈のチョコに、少しずつ甘さが加わってきた気がした。
と同時に身体の奥に小さく火が灯るのをぼんやりと自覚する。
いつの間にか、リンはルカにしがみつくようにして、苦くて甘いキスに溺れていた。
「……どう?少しは甘くなったかしら?」
チョコの味がすっかり消える頃、ルカがようやく唇を外し、距離はそのままでリンの瞳を覗きこむ。
「……うん……」
軽く息を乱しながら、小さく頷く。
「そう、ならよかった」
リンの腰に回していた腕を外し、ルカがスッと離れた。
感じていた体温が離れたせいか、急にひんやりと寒くなった気がする。途端に寂しさと切なさが胸に広がる。
やっぱりルカは意地悪だ。あんなキスをしたくせに――。
咄嗟にルカの服を掴む。
「……なあに?」
いつもの落ち着いたトーンの声。その気になってるのは自分だけなんだろうか?
ルカの瞳を見つめて、本心を必死で探る。
そんなリンの様子に、ルカは余裕そうに微笑む。
「どうしたの?」
ホントはわかってるくせに――そう言いたいけれど。
「……もっと食べたい」
どうにかそれだけ絞り出す。リンらしくない、か細い声で。
恥ずかしくて顔が熱い。でも、身体はもっと熱くなっているから。
「何を?」
白々しく聞いてくるルカに、羞恥心と上ずる声を抑えて言った。
「……ルカの、チョコ」
真っ直ぐに見つめる。
「甘くした方の」
ルカが微かに目を細める。それは火の着いた合図。
ルカの目に欲望がちゃんと宿っているのを確信して、リンはするりとルカの首に腕を回した。
「……もっとちょうだい?」
上目遣いでおねだり。
ルカが無言でまた一つチョコを取り上げ、包みを解いてリンの口にくわえさせる。
「……もちろん。たくさん食べさせてあげる」
少し掠れた甘い声で耳元に囁くと、リンの腰をもう一度引き寄せた。ルカの顔が近づく。リンも自然と目を閉じた。
さっきと同じチョコの筈なのに、リンには不思議とさっきより甘く感じた――。
コメント1
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ご意見・ご感想
つーにゃん
ご意見・ご感想
初めまして、椿姫です
もしも、前のルカと今の話のルカが同一人物ならば、
浮気ですね。
ミクさんが壁からみてたりww
「私と、私とずっといると約束したのに。私の事がきらいなの?
リンのほうが、私よりいいの?
…ルカの、ばか。」
ってなりそうです。
かってに解釈してしまってすみません。
2012/04/30 18:07:24
tomo
椿姫様はじめまして^^
感想ありがとうございます!
あっちのミクさんちのルカさんとは別のルカさん、の筈www
一応、付き合うきっかけのお話も考えてはいますが、うpはいつになることやら(^^;
こっちのミクさんは、たぶんめーちゃんあたりと仲良しだと思われ♪
2012/05/02 00:48:49