僕らだけの図書室で彼女は口を開いた。
「愛の定義って一体何かしら。」
「へ?」
唐突な質問に僕は間抜けな声を出した。彼女は何事もなかったように淡々とページを捲っていく。
僕の視線に気付いたのか、『あぁ。』と何かを分かったように言葉を紡ぐ。
「ここ何日間、恋愛小説ばかり読んでたのよ。」
「君が恋愛小説なんて珍しいね。」
「少し気が向いたのよ。」
先程まで読んでいた本を置き、僕をじっと見る。
唯でさえ綺麗な顔立ちをしているので、僕としては心臓が鳴りっ放しだ。
そんな事も知らずに『それでね、』と彼女は続ける。
「愛にも色々あるじゃない。恋愛、友愛、自己愛、家族愛。」
「そうだね。」
「その愛の境界線が実際に分かる訳ないのよ。」
「人の感覚で決まるものだからね。」
「それよ。」
彼女はビシッと僕に指摘した。
実際、何を考えているか掴めない子だ。だから彼女の会話なんて先も読めるはずもなく、少し肩を揺らした。
「全てのもの、全ての言葉に定義というものは存在するはずなの。しかし、愛は実際曖昧なものなのよ。貴方が答えたようにね。」
やはり、彼女の考える事は分からない。
「だけど私は思うの。『愛』という言葉があるのだから必ず定義があるはずなのよ。」
彼女は前のりになり、顔を近づける。
なんとも言えない威圧感に少しだけ退いていまう。
「ねぇ。愛の定義って、何?」
「そ、そんなこと・・・」
「それが、」
『そんな事言われても。』と言おうとしたら、彼女は少しだけ俯いき、僕の言葉を妨げた。
「それが分からないと、貴方と私の関係も疑ってしまうわ。」
あぁ、なるほど。
彼女は言いたいことを遠まわしにするのが得意らしい。
僕は呆れたように息を吐いき、前のりになった彼女にキスをした。
「僕が君を好き、君が僕を好き。それだけで愛の定義は成り立ちませんか?」
目を丸くした彼女がみるみる赤くなる。
口をパクパクさせて、まるで愛という餌を欲しがる金魚のようだった。
「愛してますよ。」
終
コメント1
関連動画0
ご意見・ご感想
好音トワ
ご意見・ご感想
察しましたw
でも愛については私もよく分からないです。
愛って一体どういうものなのか…、って
「僕が君を好き、君が僕を好き。」
それだけでいいのかも知れませんね!
ふふふw 恥ずかしい///
2013/04/20 17:36:30