──白雪姫の君と。










≪白雪のようなか弱い君へ≫










白い雪は溶け、桃の花が咲いている小春日和。
こんな温かい日差しの中、僕──始音カイト、「まぁ確かに温かいけど、こっちで本読んでたほうがもっと温かいしー」という成績はいいほうではない僕なりの理論で、家でごろごろと本を読みながらくつろいでいた。





ふと、時計を見た。……もうすぐ3時かぁ。そういえばなんか小腹が空いてきたなぁ。

僕はおもむろに立ち上がり、冷蔵庫のドアを開けた。
しかし両親ともに夫婦旅行中のせいか、冷蔵庫はほんとど間抜けのから状態だった。
はぁ、と溜息をついた時、ふと隅に赤く、丸いものが目に入った。


「…………」


──小腹程度にはいいかもしれない……。
そう思い、僕は赤い──リンゴを手に取ったのだった。

──しかし、そのリンゴの裏側──僕が見えてなかった部分──には何かを刻まれたあとがあった。
僕はそれを読んでみる。


「……『これは禁断の果実です。食するときはお気をつけて──』……なんだこれ。イタズラか?」


僕の母はこういう類ものが大好きなため、やりかねないことはない。
これを使って、





「ねえねえあなた、このリンゴなんか刻まれてるー」


「はっはっは。怖いのかい? その姿もかわいいよ」


「もーう、私は素直に怖がってんのにー。でもそーゆーところも好きー」


「僕もだよマイハニー」


「マイダーリンっ」


「(そっからあとは似たような会話をするので省略させていただきます)」





みたいなことをするつもりなのだろう……何で僕はこの二人の子なのだろうか……。

……まぁ、そんな馬鹿馬鹿しいことに使われるよりも、僕に普通に食べられるほうがこのリンゴにも本望だろう。
切ったり剥いたりするのが少々メンドくさかったので、リンゴを洗ってそのまま一口かじった。──そのとき、





「──!?」





突然リンゴが真っ白なほどに輝き、僕は驚いてついそのリンゴを落としてしまった。
重力に従って落ちていったリンゴはそのままころころと転がり……


「なに、これ……魔方陣…?!」


一口かじっただけのリンゴの下に、突如オカルトではお馴染みの魔方陣が出現した。
そして、魔方陣がさきほどリンゴが輝いたときと同じように輝きだす。
僕は思わず目を瞑り、数秒後に輝きが収まり、おそるおそる目を開けたら──今日一番ありえないことが起きていた。










──見知らぬ女の子が、魔方陣の上に立っているではないか。










「え……? あ……?」


これは夢なのか。よく出来た夢なのか? ほっぺたつねっても覚めない夢なのか!?
ほっぺたをつねっている僕の目の前には、確かに茶色い髪の女の子が立っていた。

開いた口が塞がらないでいると、女の子の目が開いた。
女の子はキョロキョロと辺りを見渡し僕に気づいた様子で、僕に向かって、


「……あんた、誰?」


と生意気な口調で訊いてきた。


「……え、えっと、か、カイトで「へぇ、エエット・カカイトデっていうんだ。変な名前ー」
「なっ……!? 僕はそんな名前じゃない!! 始音カイトだ!!
 っていうか、そういう君こそ誰なわけ!? 勝手に人の家にやってきて、その態度!!」


僕がそう叫ぶと女の子はキッと僕を睨んできた。


「失礼ね!! それがこの私に対する態度? あんたなんか火炙りの刑にしてもいいのよ?!」


なんなんだこの子は。
普通、自分の名前を述べてから人に訊くものだろう。
っていうか火炙りって……いつの時代だよ。


「この夜の闇のように美しい黒髪と、雪のように白い肌と、血のように赤い唇で──って、あれ?!」


「夜の闇のような黒」・「雪のような白」・「血のような赤」……どこかで聞いたことがある気が……
っていうかどうしたんだ? 急に自己紹介をやめたりなんかして。


「……どうしたんだ?」
「何、この格好……!?」
「は?」
「私は、こんな美しくない格好、しないわ!!」
「はぁ!?」
「何よこの茶色い髪は!! 全然美しくないわ!!」
「はぁ!!?」


ホントになんなんだこの子は。
さっきから意味が解らない発言ばっかり。

だいだいなんだ?
その髪はお前のだろう? なんでそれを拒むんだよ。


「お前さ……いい加減にしろよ」
「な、何よいきなり……え、何!? 犯す気!? この変態!!」
「アホか!! 違ェよ!!」


僕が突然近寄った為か、彼女は数々の失言・暴言を吐いた。
どうなったらそうなるんだよ! お前みたいな奴、気になるわけがないだろうが!!


「その胸ポケットにあるやつ、見せてみろ」
「は? ……これ?」
「うん、それ」


彼女は僕のことを睨みながらも、胸ポケットに入っている──生徒手帳を渡してくれた。
この生徒手帳といい、今彼女が着ている制服といい、僕が通って「いた」高校のものだ。

──しかし、今見るべきところはただ一つ。
僕は高校名が書かれている下のところ……名前の欄を見た。

……どこかで見たことあるなと思ったら、やっぱり。


「咲音メイコ」
「は?」
「咲音メイコっていうんだよ、君は」
「はぁ!?」


あんた馬鹿じゃないの、と言いたげな顔で僕を見る彼女。
いや、君こそ馬鹿じゃないの?


「あんた何言ってんの? 私の名は白雪姫。世界で一番美しい白雪姫」
「うわ、妄想女かよナルシかよマジありえない」
「はぁ!? ナルシって何よ!?」
「自信家、自分大好きな人」
「悪いの!? ナルシで悪いの!?」
「うわ、認めやがったこいつ」


確か僕が学校に通っていた時は、こんなイタイキャラじゃなかったと思うんだけど……。


「それよりあんた、どうやって私を呼んだの?」
「は、何言って……君こそどうやって現れたの?」
「私はただ、リンゴを食べただけよ。かじるように」
「え、僕もリンゴをかじるように食べてた……」
「そういえば私のリンゴ、『禁断の果実』とかなんとか刻まれてた」
「あ、そういえば僕も……」
「私は、確か3時ピッタリに食べたわ」
「…………」





ま  さ  か。





彼女と僕が『禁断の果実』云々て刻まれていたリンゴを、同時刻にかじるように食べてたせいで彼女がこっちに来た!?
じゃああの『禁断の果実』ってのはホント!? そんなオカルトじみたことって起きるもんなの!?


「──あんた」
「え!? な、何!?」
「あんた、この町詳しいの?」
「はぁ? 詳しいも何も、この町に住んでるし……」
「じゃあ、案内してよ」
「はぁ!?」
「この変な格好なのは嫌だけど……たまには、城を抜け出して出掛けるのもいいかもね♪」


そう言って笑った彼女に、僕はまるで無邪気で……残酷な子供のように見えてしまったのだった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【カイメイ】白雪のようなか弱い君へ -前編-

「白雪姫」





更新遅くなってすみません;
そしてモノリストで「人魚姫か赤ずきん」って言ってましたが……
何故か白雪姫になりました←

あと、(書く時間が)予想以上に長かったため前編後編に分けます。
サーセンッm(_ _)m

実はこの女の子、とっておきの裏設定がありましてですn(ry

閲覧数:432

投稿日:2012/10/21 15:19:55

文字数:2,866文字

カテゴリ:小説

  • コメント1

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  • 雪葉

    雪葉

    ご意見・ご感想

    めーちゃんがいろいろとどドストライクすぎてもう幸せ! いいじゃん白雪姫! 文章が短すぎるかも知りませんが失礼しました!次の作品楽しみにしてます!

    2012/10/21 16:52:49

    • 雪りんご*イン率低下

      雪りんご*イン率低下

      ホントですか!? あ、ありがとうゴザイマス……(

      文章については自分でもびっくりしたんですよねw
      5時間ぐらいかけて書いたつもりが、文章は前作のピーターパンより短いというww
      多分他のこともやってたのが原因でしょう(殴

      まぁ、もしかたらこれを再うpして一話完結にしてしまうかもしれません(ぇ

      2012/10/22 15:52:51

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