オリジナルのマスターに力を入れすぎた(ry)、なんとまたまたコラボ(2人)でお互いのマスターのお話を書けることになりました!
コラボ相手は、ハイレベルな心情描写をされるあのお方、+KKさんです!
上記の通り、私と+KKさんのオリジナルキャラ(マスター)が登場します。

おk! という方は、本編にどうぞ。



*****


鮮やかに空を染める夕焼け。
同じ橙色の光が、カーテン越しに差し込んでくる。
本来は白いはずの壁が、ほんのり夕焼け色に色付いて……そんな、心が癒されるような表現をしても、何ら違和感のない部屋で、


「う~……」


……俺は、五線譜を前にして唸っていた。




Kickass Fellows
悠編 第一話




大した事があったわけではない。
アキラとコラボしてから、仕事やら何やらが忙しくて、ちゃんとVOCALOIDたちに構ってやれる時が減っていたのだ。たまに時間が取れた時に、即興で簡単な歌を歌ってもらったりはしていたものの、どこか退屈そうな様子を見ると、申し訳なく思えてしまう。
俺としても、調声の腕が落ちるのは嫌だし、その事であいつら……特にリンとレンにからかわれる(と言うより馬鹿にされる)のは、正直、癪だ。
ちょうど新曲のネタもあったので、久しぶりにちゃんとした曲を歌ってもらおうかと思っていた。の、だが……。


「……気に入らん」


そう、気に入らないのだ。
頭の中に留まっているのと、実際に音にするのとでは、差は大きい。
それはわかっていたつもりだったが、それにしたって、これほどイメージと違うとは思っていなかった。
軽くショックを受けたが、それならそれで修正していこうと思ったものの、部分的な修正を繰り返すうちに、気がつくと五線譜上の音符は全て消えていて、今に至る。
今まで、行き詰まる事など何度もあったが、まさかここまで酷いとは思っていなかった。
このまま無理に曲を作ったとしても、良いものが出来上がるとは到底思えない。
かと言って、このまま諦めたくもない。歌ってもらうだけならカバーでもいけるが……それならそれで、何を歌ってもらえばいいかという話になる。


「歌わせてやるって言っちまったからな……がっかりさせたくないしな」


呟いてから、いつの間にか頭の中で、どう曲を作っていくかではなく、いかに歌わせてやればいいかということに、問題が勝手に移行していた事に気付き、げんなりとした。


「……ダメだな」


曲が、ではない。どんどん考えが後ろ向きになっている自分がだ。このまま放っておいたところで、さらにネガティブになるのが目に見えている。
どうすればいいのかはっきりしたわけでは当然ないが……一度、気分を変えた方がいいかもしれない。


「久しぶりに、行くか」


最後に行ったのはいつだったか、と考えながら、俺は思わず苦笑した。
つい先ほどまで難しく考えて悩んでいたというのに、これから向かう店を思って早くも少しだけ浮かれている自分に気が付いて。



店の扉を開くと、からからと耳に心地よい音がする。


「いらっしゃい」


笑顔で迎えてくれた男性に、おや、と思う。見たことのない顔だった。
マスターや、いつも見かけているバーテンダーの姿を探してみるが、見当たらない。
新しいバイトでも雇ったのだろうか。そんな事を考えながら、カウンター席についた。


「何にしましょうか」

「カルアミルクをお願いします」


即答してから、そういえば一杯目を注文するのは久しぶりだと思い出して、笑みが込み上げてくる。
普段は、俺が何か言う前にマスターが作ってくれていた。美憂についてきていただけだったのが、いつの間にか自分でも何度も……それほどのサービスをしてもらえるくらいの回数は来ていたんだな、と再確認する。

「……どうぞ」

「どうも」


しみじみとしていると目の前にグラスを置かれ、簡単にだが礼を言ってそれを手に取る。


「あの……バイトの方ですか?」

「ああ、いえ、マスターとクーさ……ここのバーテンダーの方が今留守にしているので、任されたんですよ」

「あー、なるほど。手際がいいのでてっきりそうかと。……いや、バイトならこうはいきませんかね」


正直な感想を口にすると、彼は少し誇らしげに、ありがとうございますと笑った。


「ところで、あなたはこのバーにはよくいらしているんですか?」

「よく、ってほどではありませんが、それなりには。前まではよく従姉に連れてこられてましたね。……初めてちゃんと飲みにきた店もここですし」


20歳を超えて初めて飲んだ酒が、ここのカルアミルクだった。
そういえば、アキラに最初に告白したのもこのバーだったっけ。あの時はあまり嬉しい結果にならなかったが……そう考えるとかなり思い出深い店だ。
今度来るときはあいつも誘おうか、と、今から少し楽しみになった。
が、同時に今日1人で来ている理由を思い出して、少し憂鬱になる。


「――どうかされました?」


顔に出ていたのか、気遣わしげに声がかけられる。


「いや……少し厄介な事を思い出しまして……」

「厄介、ですか……吐き出した方が多少なりとも楽になるかもしれませんし、お聞きしましょうか?」

「すみません、じゃあ……」


聴く姿勢をとってくれた彼の言葉に甘えて、少しだけ愚痴を言わせてもらうことにした。
……どうやら俺は、よほど疲れていたらしい。


「VOCALOIDって、ご存知ですか?」


何から話せばいいかと迷った挙げ句、そう切り出すと、彼は驚いたように目を瞠った。


「……VOCALOIDが何か?」

「なんと言いますか……久しぶりに歌ってもらおうと思って曲を作ろうとしたはいいんですが、行き詰まってまして……あの、俺、何か変な事言いました?」

「いや、そうじゃないんですが……」


言いよどんで、彼は眉間に皺を寄せて何やら考え込む。
違うとは言っているが、やはり、俺が何か余計な事でも言ってしまっていたのだろうか。
躊躇しながらもそう言おうとしたが、それより一瞬早く、彼が顔を上げる。


「実は、俺のところにもVOCALOIDがいるんです」

「そうだったんですか。偶然ですね」

「はい。それで、もし興味があれば……俺と、カバーコンテストに出場してみませんか?」


その申し出に、俺は少しの間、ぽかんとしていた。
俺はリンたちに歌ってもらう曲がなくて、気分転換にここへ来た。そしてそんな俺に、彼は共同でVOCALOIDを歌わせてみないかと言う。2人でなら、歌ってもらう曲の案も出てくるだろう。
しかし、そんな都合のいい話があるのだろうか。


「……それ、詳しく聞かせていただけますか」


それでも、ほとんど何も考えずに、俺はそう応えていた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

【オリジナルマスター】 Kickass Fellows 第一話 【悠編】

オリジナルマスターの設定と、とある事で盛り上がっていたら、いろんな人に背中を押されて、なんとまたまたコラボで書けることになってしまった。
これまたお相手の方とそのオリキャラさんが素敵すぎて、また緊張しております……!

というわけで、わっふー! どうも、お久しぶりです、桜宮です。
復帰が遅くなってしまってすみません! 無事に帰ってまいりました!
待っていてくださった皆様、本当にありがとうございます。これからまた頑張っていきます(`・ω・´)

さて……まずは+KKさん、長いこと迷ってた上に突然言い出してしまったのに、乗っかって下さってありがとうございます。これからよろしくお願いします。
そして、今回は名前だけですが、アキラさんの出演を許可して下さったつんばるさん、ありがとうございます。
このお二方にはお世話になりっぱなしで頭が上がりませぬ……!

今回は、私のところの悠さんと、+KKさんのところの司さんがコラボするお話です。
というわけで、悠さん、司さんと出会うの巻、でした。
これから二人でタッグを組むことになりますが、さてさてどうなることやら。
ちなみに上記の「とある事」は、そのうち本編でも出てくるかと思いますので、お楽しみに。

司さんの方でも、何やら悩んでいることがあるようです、そちらもぜひ!


司さんの生みの親、+KKさんのページはこちら!
http://piapro.jp/slow_story

今回名前だけですが出演して下さった、東雲晶さんの生みの親、つんばるさんのページはこちらです。
http://piapro.jp/thmbal

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投稿日:2010/08/10 11:56:46

文字数:2,830文字

カテゴリ:小説

ブクマつながり

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