弱音を吐きたきゃ吐けば良い。飽きたんだったら寝れば良い。《01》

投稿日:2009/04/11 13:23:13 | 文字数:4,730文字 | 閲覧数:136 | カテゴリ:小説

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いやー、春ですねぇ。
ども、私ことブッチです。

さてさて、遂に始まりました長編企画。メインパーソナリティはネルとハクのお二人です。

この話を閃いたのは、ちらっとワイドショーの企画で見た、富士樹海での自殺に関する企画を見たからなんですよね。

それで今回のお話となりました。ハク姐さんには少々ヘビーな役を……というわけです。
実際、弱音が吐ける内はまだ良い方なんですよ(経験則

ちなみに時間軸は二人がデビュー前ということになります。私的にこのデビューというのは『リアルにネル(ハク)がネットに公表されること』と掛けてあるんですよね。
そのため、まだネルがエクステ付けてなかったりとか、描写はしませんでしたがハクのデカリボンが無かったりとかするんです。
ま、完全裏設定ですがね(苦笑


えー、ちなみに今回のゲスト出演はカイト兄さんです。すいませんねぇ、骸骨で(笑

もし不快に思われたカイトファンの方がいらっしゃいましたら、そこは平謝りです。
……そのうち満面の笑みでアイスを食べるカイト兄さんでも書きますかね。


では、01とナンバリングしているようにまだ続きますので、続きはもうしばらくお待ちください。

今後の流れをちらっと言うと……。
アフターケアって大事。
ってことです。


それでは!

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TEXT
 

 季節は春。時刻は昼。天気は晴れ。
 とても陽気のいい快晴の空。きっと、多くの人が春を感じ、新たな出会いや経験に胸を躍らせていることだろう。

 ――じゃあ、なんで……。


 なんで私は、こんな日の光も届かない樹海の奥へと進んでいるの?

 周りからは何の音も聞こえない。ただ、自分が腐葉土を踏む微かな音だけが、生気を感じさせるものだった。

 だけど。

 だけど、それもじきに消えてなくなる。
 私は今一度、手に持った粗雑な安物ロープを握り絞めた。その感触を確かめ、何をしにここにやって来たのかを再確認するために。


 ふと、視界にボロボロになった布切れが映った。

 よく見ると、それは色褪せてはいるが青い色をしていて、編み物の様に見えた。その布切れは空中で輪を作っていて、そこから上は一本に纏められ、そして先には太い木の枝が……。
 そこまで見て気が付いた。その布切れのようなものは“マフラー”であると。
 すると、端の方にぼんやりと白い点がある事に気付いた。生憎弱視な私はこの五、六歩で埋められそうな距離でも鮮明にものを見ることが出来ない。

 近付いて見てみると、そこにはただ一文字“K”と刺繍が施されているようだった。
 そして、その下には――。


 私は久々に人の骸を見た。


 これで見るのは二回目になる。一回目は祖母が逝った時。もう、何十年も昔の事に感じられるが、実際にはまだ十年も経っていない。

 そういえばあの時、私は涙したのだろうか?

 泣く、という行為が風化して久しいこの身には、それを思い出すことは出来なかった。

「こんにちは」

 私はそう骸に語りかけながら、さも視線の高さを合わせるかのようにしゃがむ。長く伸ばした白髪が地面に降りるが気にはしない。
 ふと、中身を失った空虚な眼窩が私を見つめ返してきた気がした。

「どうですか? そっちは」

 当たり前のことだがその頭骨は何も答えない。ただ、じっとこちらを見つめるだけ。
 無意味なことだと分かっていながらも、私は更に語りかける。

「私も、貴方と同じ方法でそちらに行こうと思うんですが、何かアドバイスとかありますか?」

 不意に、上からトンビの鳴く声が聞こえた。長閑な、それでいて少々間の抜けた声。だが、それとは反対に樹海は静まり返っており、せいぜい聞こえるのは消えることが決まっている私の呼吸。

「簡単には教えてくれませんか……」

 端から見れば一人芝居も甚だしいことこの上ないが、私には興味の湧かないことだった。それにそもそも見る者などいない。

 そろそろ行こう思い、立ち上がろうとした時。あるものが目についた。

 腐葉土に埋もれ先だけが顔を出していた、この樹海には似合わない人工物。
 引っ張り出してみたそれは、アイスのパッケージだった。表面には漫画調にデフォルメされた坊主頭の少年が、ガリガリとアイスにかじりついている絵がプリントされている。

「……好きだったんですか? アイス」

 ――カチャリ

 まるで頷いたかのように頭骨の上顎が傾いた。


 なんだか懐かしい気がした。

 昔。まだ祖母が生きていた頃。夏の暑い日になると、祖母に駄賃をねだって友達と一緒に駄菓子屋に駆け込み、そしてそこで小さな唸りを上げている冷凍庫を指差して、同じアイスを買っていた……。

 あの子は今、どうしているだろうか?
 あの駄菓子屋は、まだ残ってるだろうか?


 もう、返ってくる事の無い、あの日々。

 あの頃は輝いていた。私は世界に存在していた。私は幸せだった。みんなが私を知っていて、私もみんなを知っていた。
 だけど今は――


 ……もうやめよう。


 私は頭骨に別れを告げて、また歩き出した。もっと……、もっと樹海の奥地へと。


 それからどれくらいの時間が経っただろうか? 基本薄暗いこの樹海では時間の経過がわかりにくい。
 さっさと吊ってしまいたいのだが、中々それに適した木が見つからないのが、こうして長々と樹海を歩いている原因でもあった。

 だが、ふと思い付いてしまったことがあった。


 もしかして、私はこの期に及んで死ぬことを怖がっている……?




 わからない。

 もう、わからない。

 私はもう、私自身の心すら読み取ることが出来なかった。
 今、何を感じ取ったのか。嬉しさ? 悲しみ? 憤り? 楽しさ?

 わからない。


 私はいつの間にか歩みを止めていた。


 私は、今、何を、どうしたい?

 ……わからない。

 死ぬことを決めたのはいつ?
 わからない。

 仕事が嫌になったのはいつ?
 わからない。

 仕事就いたとき、何もかもを新鮮に思っていたのは何故?
 わからない。

 何もかもがわからなくなり始めたのはいつ? どうして?
 わからない。


 わからない、わからない、わからない、わからない……。


 気が付けば、私はしゃがみ込んで縮こまっていた。暗いのは膝に顔を埋めているから。手が痛いのは爪がめり込んでいるから。
 じゃあ、苦しいのは、何故?

 何故、こんなにも苦しい? 肺が潰れそうな痛みが胸元から発生して、更に息も苦しい。一息に息を吸うことが出来ない。肩がしゃくり上がり、鼻が詰まって来た。
 不意に、顔を当てていた膝がじわりと湿って来た。

 私……泣いてるの?

 もう泣き尽くして、涙なんか残ってないと思ってたのに。

 顔を上げて目元を指で拭ってみれば、確かに透明な液体が付いた。


 その時だった。




「あんた、そこで何してんの?」

 後ろから声がした。我ながら驚いて、慌てて振り向いた先には人。

 アクリル系の頑丈そうな紺のスボンに、黄色に黄緑の蛍光ラインの入ったジャンパー。背中には小さいながらもリュックサックが背負われていた。
 相手は私よりも小さい。ショートヘアで切り揃えた金髪の女の子だった。その勝ち気そうな釣り目がこちらをじろじろと観察して、そして私の右手に握られたロープの束を見つけて止まる。
 明らかに相手の表情が強張ったのがわかった。

「……」
「……と、とりあえずさ」

 ロープを置け。とでも言うのだろうか。それとも寄越せと言うのか。
 どちらにしろ、私にその気はない。なかった……のだが。

「顔、拭く?」
「……え?」

 そう言った相手はいそいそとポケットティッシュを取り出していた。

 何を言われたのかよくわからなかった。
 顔、拭く? 顔を拭くか? ということ?
 私がキョトンとしているのに気付いたのか、相手は思い付いたように喋り出した。

「いやね。顔、あんまりぐちゃぐちゃだったからさ。ホラ」
「……あ、ありがとう」

 そんなに酷かったのだろうか? わからない。だが、相手がそういうからにはきっとそうなのだろう。
 まだ封が切られていないポケットティッシュを開けて、最初の一枚を取り出して顔を拭く。一枚、二枚、三枚……。

 途中、そのティッシュあげるよ。と言われた。

「ねえ、もしかしてそのナリだと結構長いことココ歩いてたでしょ?」

 確かにそうだ。入る時に時間を見ていなかったから正確な事はわからないが、かなりの時間をここで過ごしたことになる。
 でも、なんでそんなことが……?

「……なんでわかるの?」
「スボンの裾見ればわかるよ。泥が付いてる上に乾いてるでしょ」

 見てみれば確かにそうだった。黒いタイトパンツの裾に泥がこびりついている。

「だから……、ハイ」

 そう言って眼前に黄色いものが差し出された。少しだけ黒い斑点の入ったバナナだった。

「とりあえず食べなよ。その方が頭も回るからさ」

 相手はそう言いながら隣にしゃがみ込んだ。そして私の顔を覗き込むようにしてニコリと笑顔を作ってみせる。
 依然、バナナは私の眼前にあった。

「あ、もしかしてバナナ嫌い? アタシは好きなんだけど、嫌いな人は嫌いらしいからねぇ」

 私がいつまで経ってもバナナを受け取らないのをそう解釈したらしい。
 私はバナナが嫌いではない。ただ単に食欲が湧かないだけのことだった。

「……」

 それからしばらく、互いに黙っていた。
 私は焦点を合わせるわけでもなく徒然に遠くを眺めたり、なんともなしに相手の方を窺ったりした。事情は相手も同じらしい。

「……わかってるんでしょう?」

 先に沈黙を破ったのは私の方だった。まるで私の声に呼応するように、遠くから木の葉が風に揺れる音がする。

「何を?」

 相手は私の顔を覗き込むようにして聞き返してきた。その顔が少し強張っているのが、敢えて答えを避けている証拠のような気がして、少し腹立たしかった。

「こんなものを持ってこんな所に来ていれば、何しようとしてるかぐらいわかってんでしょう?」

 若干語気を荒上げた。でもそれに反して声は震えてしまった。
 私は疑問に思っていた。何故テンプレートに書かれたような決まり文句を相手は吐かないのか。何故止めようと、思い止まらせようとしないのか。

 あれ……?

 なんで、私は止めてもらいたがってるの?
 死ぬつもりで……首吊って自殺しようとして来たのに。なんで、止めてもらいたい、なんて思ってるの……?
 わからない。もう、わからない。

 あの時の覚悟は嘘だったのか?
 嘘じゃ無い。嘘じゃ、無い……。嘘じゃなかった……、そのはずなのに。

 もう、自分自身が信じられなかった。
 こんなはずじゃなかったのに。こんなはずじゃ……。

「……そりゃ、わかってるよ? そういうバイトだって知っててやってるんだし」

 最初、何の話かわからなかった。少し間を置いてから、私が投げ掛けた質問の答えだってことに気付いた。

「バイト?」
「そ、バイト。アタシ秋田から上京して来たんだけどさ、親からの仕送りとかもあるけど、やっぱり頼ってばっかりもいられないからさ。だからこうやって、あんまり人の寄り付かないバイトでもやってるの」

 時給結構良いんだよー、と笑いながら付け加える。そんなバイトがあったのかと、私は新たな発見をした。

「まあ、でもやっぱりさ。疲れるんだよねー。巡回って言ってもこの山ん中歩き回るんだよ? 足とかパンパンでさ。それに……、“新しい”の見つけちゃったりも……するし……」

 何がどう新しいのかは聞かなくてもわかった。


 それから色々と話をした。
 仕事のこと、生活のこと、最近あった出来事。色々、たくさん……。

 いつの間にかこの樹海にも夕日の光が差し込んで来ていた。茜色の空が木々の隙間から垣間見ることができる。

「そろそろ行こっか」

 そう相手に言われても、私は嫌な気分にはならなかった。あともう少しだけ頑張ってみよう、そんな気分になれた。

 相手が立ち上がったのに続いて、私も立ち上がる。長い間しゃがんでいたからか、ふらついてしまった。
 すると不意に相手が私に振り返った。その顔は何かを思い出したような表情。

「そうだった、そうだった! 忘れてたよ!」
「な、何を?」

 そんな返事をすると、相手はさもじれったいといった表情に変わる。コロコロ変わる表情は見ていて飽きない。

「名前! まだお互い名前しらないでしょ?」

「あんた、名前なんてぇの? あ、アタシはネル。亞北ネル」
「私は……弱音ハク」


 私とネルが初めて出会った瞬間だった。

比較的最近になってからボカロワールドに首を突っ込み始めた人です。
若干、絵が描けますが……上手いかどうかは……。

あとPC持ってない(涙 ついでに言うと持てない(金銭的に

どうぞヨロシク。

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