気まぐれで、投稿が一日空きました。

注意
※クリプトン公式以外のボカロが出てきます。その上、漢字も当て字です。性格も、イメージと違うかもしれません。
それでも、全然大丈夫!+カイメイ風味でも平気、という方だけお読みください。

それがOKな方は、↓に続きがあります。








「隣の町までは、そこまでないと思うけど、気をつけてください」

海斗一家と、芽衣子以外で、ただ1人、火事で生き残っていた若い医者──清輝が、そう言いながら、一つの、何かが入った薄紅色の風呂敷を、芽衣子にそっと渡した。

「‥‥‥?これは‥?」

「芽衣子さんは、もうすぐ、数えで16だったよね?」

「はい‥そうですけど‥‥?」

「君の父さんがね、その‥節目として、正式に、神社で舞いをする巫女と、認めることにしてたんだ」

彼は、焼け焦げた鳥居に、チラリと目を移しながらそう言った。

「それの衣装が、掃除をするからって、僕の家に預けられていてね」

「‥母‥さん‥が‥‥?」

「そうだよ?寝る前に、明かりの前で、君の母さんが寝る間も惜しんで作っていたんだって」

清輝が、そう言って、芽衣子の頭に、ポスッと手を置くと、彼女の頭を優しくなでた。

彼の言葉に、風呂敷を、じっと見つめる芽衣子。

「でね、君の父さんが、心配して、あまり根を詰めてするなって言ったらさ、お母さんはなんて言ったと思う?」

「‥‥‥?」

「芽衣子の新たな門出なんだから、一日でも遅れたらだめでしょ?ってさ」

そう言われて、彼女は再び風呂敷に目を落とした。途端に、胸が熱くなってくる。

数えで16なった時の贈り物──たったそれだけなのに、彼女は悲痛な表情を浮かべていた。

「芽衣子ちゃん‥‥?」

心配して、芽衣子をじっと見つめる清輝。

なぜそこまで悲痛な表情を浮かべているか?──答えは簡単だった。芽衣子の母親は、このところ病気がちで、体が弱かったからだ。

細い体に鞭を打ってまで、自分のために舞の衣装を繕ってくれた母親。

「母さんっ‥‥父さんっ‥!ぇぐっ‥‥」

途端に、胸が一杯になり、澄んだ瞳から、ぼろぼろと涙が零れ落ちてきた。いきなり泣き出した芽衣子に、清輝は、びくっとして、

「め、芽衣子ちゃん‥‥??」

と、おろおろしている。

それを見た海斗が、ふぅっとため息をついて、

「‥めーちゃん‥‥」

驚かせないように、そっと彼女の肩に優しく手を置いた。しゃくり上げている芽衣子。

「めーちゃんの父さんと母さんは‥‥優しい人だね」

「だってっ‥自分の体力を犠牲に‥こんないいものを繕うなんて‥‥!私には‥勿体無さ過ぎるわ‥‥!」

今まで迷惑をかけてきた、舞の衣装ももらった。いいことを、たくさんしてもらった。感謝しても仕切れないぐらいの幸せももらった‥‥。

「今までの幸せ‥‥親孝行したかったのにっ‥‥できないんだから‥‥!」

「──めーちゃん!」

芽衣子の言葉を、そう遮ってから、ふっと微笑むと、

「じゃあ、その〝幸せ〟を、これから、いろんな人に分け与えていこう?ね?」

「‥でもっ‥‥」

「今、めーちゃんの、父さんと母さんは、姿としてここには存在していない。でもね──」

無造作に言葉を切る海斗。そして、涙目のまま、彼を見る芽衣子に、

「姿が見えなくても、めーちゃんが覚えている限り、2人とも、めーちゃんの傍で、いつでも見てるよ?」

「‥‥‥っ」

「だから、めーちゃんが泣いてたら、父さんも、母さんも悲しくなるよ?」

「‥海斗‥‥」

「それに‥‥」

口ごもった後、海斗は、芽衣子の額に、そっとふれて、

「めーちゃんが泣いてたり、辛そうな顔になったりすると、僕が悲しくなるから‥‥」

「‥バカ‥‥」

ぷくぅと頬を膨らませる芽衣子。

「僕がバカじゃなくて、めーちゃんが泣いてたらイヤだもん!」

「‥‥意地っ張り」

「意地っ張りでいいです!」

そう言ってスタスタと先に行こうとする海斗に、たまらず笑い出す、清輝と、彼の両親。

「‥ぷ‥っははは‥‥。こりゃあ傑作だなぁ」

「なにが傑作よ!!」

「いや、海斗が意地を張るのは、芽衣子ちゃん相手だけだからね」

‥それって‥特別ってこと‥‥?

そう考えて、なんだか嬉しくなる芽衣子であった。




ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

番凩・5

ちょっとマイナーな感じの、氷山キヨテル先生を出してみました!

しかも、なぜか医者で‥‥。というのも、この時代設定で、先生って言ったら、寺子屋の先生か、手習いの先生か、医者の先生か、しか浮かばなかったからです^^;

しかも、私の中で、この若い医者、のイメージに合うボカロキャラがこの人しかいなかったもんで‥すいません;;
たぶん、次にもでてきます^^;

閲覧数:373

投稿日:2010/05/30 12:20:30

文字数:1,797文字

カテゴリ:小説

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  • enarin

    enarin

    ご意見・ご感想

    再び今晩はです!、続き拝読させていただきました!。

    村の生き残りである先生役ということで、キヨテルさんが出てきましたね!。私も先生役で彼を使った事があります。おっしゃるとおり”先生”という役を付けられるボカロは、今のところ、キヨテルさんだけですかね。他のボカロではキャラがしっかりしているせいか、イメージが巧く合わさらない感じです。

    というかめーちゃん達以外の村の生き残り・・・。最初ちょっと”きな臭い”雰囲気があったのですが、今回のお話で、それは違うこと、がわかりました。

    海斗さん、純情路線一直線ですね!。

    それでは、続きを楽しみにしております。ではでは~♪

    2010/03/18 17:00:21

    • 愛夢☆ソライト

      愛夢☆ソライト

      >ご拝読ありがとうございます!

      そうですね?、ここに出すキャラクターのイメージが、他のボカロじゃしっくり来なかったんで;;イメージとしては、人が良く、気の優しい、医者修行中の青年、という感じだったので、
      キヨテルさんが一番それに近いかな?という感じです。

      目立ちはしませんが、ひそかに人気な感じだったりするんでしょうかね?

      話は変わりますが、海斗はひたすら純情路線です!優しい海斗が好きなので^^ということもあります;;
      できるだけ、今のペースを維持しながら続きを書いていきたいと思います。
      本当にご拝読ありがとうございました(≧ω≦)b

      2010/03/18 17:18:53

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